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3章 思い出のタルト・タタン
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「本日はアッサムをご用意しました。どうぞ」
目覚めたら、まず紅茶を飲む主人のために加賀美は毎朝とっておきの一杯を用意する。今日は、白に金字で描かれた繊細で華やかなデザインのティーカップに淹れられたアッサム。茶葉や使用するカップも、すベて加賀美がその日に合わせて選んでいる。
カップからは美味しい紅茶になるように、ここに来るまでの時間もしっかりと計算して蒸らされた茶葉の香りがほんのりと漂っていた。
薫はゆったりとした動作でカップを手に取り、優雅にお茶を飲む。起き抜けといえども、その上品な所作はさすが礼儀作法を厳しくしつけられた御曹司といったところか。
一口すすり、ほぅ……と息をついた薫を見て満足そうな笑みを浮かべた加賀美は、ティーポットを載せたワゴンを移動させ、もといた場所に戻る。天気も良く静かな朝は、ゆったりと時が過ぎ、どこか心が落ち着く時間でもあった。
「今日の予定は?」
テーブルにカップを置いて加賀美にそう尋ねる薫。
「本日は、来月鈴木様が催されるパーティのスーツを仕立てに行く予定ですよ」
「ああ、真珠会社の……」
「ええ」
加賀美の返事に薫は「となると、あそこに行かなくてはならないのか」と大きなため息をついて、ソファのひじ掛けに寄りかかる。
「あまり気は進まないが、あの男のスーツを一度着たら、もう他のものは着れないからな」
「腕は超一流でいらっしゃいますからね、白鳥様は。もっとも、私もあの方は少々苦手ですが」
「同感だ」と続けたご主人様に、加賀美は苦笑いするのだった。
目覚めたら、まず紅茶を飲む主人のために加賀美は毎朝とっておきの一杯を用意する。今日は、白に金字で描かれた繊細で華やかなデザインのティーカップに淹れられたアッサム。茶葉や使用するカップも、すベて加賀美がその日に合わせて選んでいる。
カップからは美味しい紅茶になるように、ここに来るまでの時間もしっかりと計算して蒸らされた茶葉の香りがほんのりと漂っていた。
薫はゆったりとした動作でカップを手に取り、優雅にお茶を飲む。起き抜けといえども、その上品な所作はさすが礼儀作法を厳しくしつけられた御曹司といったところか。
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