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1章 出会いのクッキー

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「人、全然通らないのな……」

夕方の明るい時間帯とは打って変わって、辺りは薄暗く、ひっそりとしていた。三宮とはいえ、人通りの多い中心部から少し離れると、そこは地元民が住む住宅街。夜になると静かなものだ。

急な坂道を息を切らしながら歩く。体力がありあまっている若者といえども、その道のりは決して楽なものではなかった。夕方は真司と話しながらだったため、あまりしんどさは感じなかったが、一人で歩くと余計に辛さが増した気がした。

「やっと着いた……」

坂道をしばらく歩くと、ようやくたどり着いた件の洋館。屋敷には灯りがついており、家主は帰宅しているようだった。

「やっぱり人住んでんだ……」

夜の洋館は明るい時間とはまた違った雰囲気を醸し出していた。昼間はお嬢様が住んでいるような印象を抱いた屋敷だったが、夜になると光の加減のためかどこか不気味な雰囲気がある佇まいだ。

久志は屋敷の前で、しばらく建物を眺めていたが、はっとすると目的のお守りを探し始めた。ここになかったら、また明日明るい時間帯にもう一度来てみよう。久志はそう決心すると、暗くて見えにくい足元を照らすためスマホを取り出そうとポケットに手を入れた。と、そのとき──。

「当屋敷になにか御用でしょうか」

後ろから聞こえてきた、はちみつのような甘やかな声に久志の体がびくりと震えた。

振り返ってみると、そこには柔らかい漆黒の髪に、同じ色をした切れ長の瞳。黒のジャケットにグレーのカマーベスト、黒ネクタイの燕尾服姿の男が立っていた。
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