帝都あやかし物語

来海空々瑠

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無実の令嬢は疑いを晴らす

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「これ以上、罪を重ねる愚行はよせ」

淀んだ空気が浄化されるような、清らかな空気をすぐ側で感じた。そこに現れたのは、薄藍と白の着物に身を包んだ白哉様。いつもより豪奢に着飾った着物姿に、一瞬息を呑む。美しい、神の姿がそこにあった。

振り下ろされると思っていた椿の刃は扇子の縁でいともたやすく止められ、刃物は地面へと叩き落されていた。白哉様は私の体をその身で守るように片手で強く抱きしめている。

「白哉、さま……」

突然の白哉様の登場に言葉をなくす私。一方、会場内にいる人間たちは突然現れた男の存在に別の意味で言葉をなくしていた。

「誰、あの御方は……」
「あんな美しい男の人は初めて見ますわ……」
「身にまとっている空気もなんだか俺たちと違うというか……」

絹のようになめらかな白銀の長い髪に金色の瞳。涼やかな目元から感じられる男の色気。神々しいオーラを見に纏った、その佇まいに男女問わず釘付けになり、皆言葉を失くしているようだった。

「誰なの……あなた」

それは椿も同じだったようで、どこかぽーっと浮ついた様子。けれど、白哉様はそんな彼女に厳しい目を向けた。

「己の欲望を満たすため無実の人間を大罪人に仕立てあげ、立場が悪くなったからと暴挙に走るその様……。見苦しいぞ、お前たち」

白哉様がそう言って冷徹な目を向けると、3人ともびくりと体を震わせ、がくりと膝をつく。普段穏やかな白哉様を見慣れている分、余計にその冷たい瞳がひどく冷酷に見えた。

「……神は常に人の子らの行いを見ていることを、ゆめゆめ忘れることのなきように」

その言葉に、周りの参加者たちもごくりと息を呑んでおののいているようだった。改めて、この人はこの帝都を守る神なのだと思わされる威厳に、私もギュッと手のひらを握りしめる。

「こいつらを連行しろ!」

特務部隊のリーダー格と思しき男がそう指示をすると、部下たちが3人を立ち上がらせて会場の外へと連れ出していく。3人はもう抵抗を見せなくなっており、会場中の注目を浴びる中、悲壮な表情を浮かべ俯いたまま歩いていったのだった。
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