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第7章 暗躍したい

兵の再集結

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 オティウスの力もあり、続々と兵達が集結し、僅か一週間で一万にも迫る数となった。まともに帝国軍と交戦もしていない為、装備もしっかりしている。

 草原に整列した大量の兵達に、僕は感嘆の声を上げる。

「すっごいなぁ……映画みたい」

 そう口にすると、セーレが首を傾げる。

「えーが?」

「なんか方言みたいだね。えぇがー、みたいな」

「むぅ……いつか、マナヴ様の叡智に近付けるよう努力します!」

 そんな不毛な会話をしていると、シオンが不思議な格好で現れた。

 白いスカートやフリルの付いた銀色の鎧姿である。鎧も何故か面積が小さく、胸やお尻、手足などが辛うじて隠れているといった謎の仕様だった。

 どう見ても剣で切り放題なスカスカの鎧だが、シオンはさも普段着のように着こなしている。白いフリルや銀の鎧の隙間から覗く白い肌が眩しい。

 シオンはそんなちょっとエッチな格好で僕の前に立ち、突然跪いた。

「マナヴ様、セーレ様。これから我々はお兄様の先導で砦へと向かいます。ジャルバ卿からも砦に程近い地に拠点を作り終えたと報告が来ておりますので、そこで合流してから砦奪還に向かうとのことです」

「ふむふむ」

 これからの流れだろうと返事をすると、シオンは複雑な表情で顔を上げた。

「マナヴ様のお陰で士気は遥かに高まり、人数でも帝国軍を上回る事が出来ました。ですが……」

「ですが?」

 その言い回しに首を傾げると、シオンは眉根を寄せて頭を下げ、口を開く

「申し訳ありませんが、マナヴ様を砦へお連れすることが出来なくなってしまいました」

「えっ!?」

 セーレが驚きの声を上げた。シオンは何とも言えない顔でセーレを見ると、言い訳のように弱々しく答える。

「当初でしたら、防衛の要である砦の中にて戦場を見守っていただくつもりでした。しかし、砦を占領された今では、少々人数が多くても我が王国軍が明らかに不利でしょう」

 そのシオンの説明に、僕は鼻から息を吐いて頷く。

「つまり、危ないから来るなってことだね?」

 確認するように尋ねると、シオンの肩がビクリと揺れた。

「も、申し訳ありません……せっかく遠いこの地まで来ていただいたのに、マナヴ様の厚意を無下にしてしまいました。この戦いが終わり、我が方が勝てば何なりとお言い付けください。全力を持ってマナヴ様のどんな願いでも叶えます」

 僕が怒っていると思ったのか、シオンは珍しく狼狽し、早口に喋っている。

 そんなシオンに溜め息を吐き、僕は首を左右に振った。

「別に怒ったりしないから気にしないでよ。こういう状況なんだから無理は言わないさ」

「あ、ありがとうございます」

 見るからにホッとした様子のシオンに苦笑し、僕は周りを見た。兵士達はこちらを盗み見るようにチラチラと視線を送っている。あまり長い間シオンを跪かせているのも悪い気がする。

「ほら、立って立って」

「あ、はい。失礼致しました」

 普段の調子に戻ってきたシオンが微笑むと、隣で成り行きを見守っていたセーレの緊張も緩む。

「セーレ様にもご迷惑をお掛け致しました」

「い、いえ! 私はただマナヴ様のお供として付いてきただけですから!」

 わたわたするセーレに笑い、僕はシオンを見る。

「……僕は危ないから一緒に行けないけど、シオンは行くんだね」

 そう聞くと、シオンは顎を引いた。

「私はもとより戦場の士気を上げる為に来ましたから、今こそ戦う皆さんの前に姿を見せ、私も共に戦っていると伝えなくてはなりません」

「僕もその為に来た筈だけど」

「マナヴ様に怪我をさせるわけには参りません」

「オティウスの決定かい?」

「……王国の総意です」

 シオンの苦しい応えに笑い、鼻を鳴らした。

「仕方ないね。せめて作戦会議くらいには参加してみたいから、オティウスを呼んで来てくれる? 後、砦周辺の地図とか」

 僕のそんな台詞にシオンだけでなくセーレも目を瞬かせた。

「さ、作戦会議……ですか?」

「作戦会議って何ですか?」

 二人は同時にそんな疑問を口に出した。似たような言葉の筈なのに、言葉の意味合いは全く違う。

 まぁ、セーレらしくて和むと言えば和む。

 苦笑しながら、僕は顔を傾けてシオンに対して口を開く。

「ダメ?」

「そ、そんなダメだなんて! 今すぐ連れて来ます! ほんの少しお待ちください!」

 シオンはそう言うと、ミニスカート状態の鎧姿で走って行った。兵達の目は皆、一点に向けられている。

 セーレはそんな兵達に不思議そうな顔をしつつ、こちらに顔を向けた。

「作戦会議っていうのをするんですか?」

「そうだよ」

「また美味しいお菓子とか出ると良いですね」

「……出ると良いね」

 セーレは作戦会議を何かと勘違いしているようだった。
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