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第6章 楽しい行軍
森の中
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草原を走っていくと、遠くに逃げていく牛の姿を発見した。
「あ、美味しいヤツだ」
僕がそう言うと、首の後ろからセーレが声を上げる。
「え!? アーマードカウですよ!?」
セーレの言葉を聞いて改めて牛を確認すると、確かにゴツゴツとした体は鎧のようでもある。
セーレの反応を見るに、あれは食用では無いのかもしれないが、僕からするとご馳走だ。
「今から捕まえるから、後で焼いてくれる?」
「へ? は、はい。それは大丈夫ですけど……」
「よし。じゃあ、しっかり掴まっててね」
「え? わ、わひゃあっ!?」
地面に爪の先をめり込ませ、大地を蹴る。グングンと地を蹴るたびに加速していき、アーマードカウとやらに迫る。
「草原は良いね! 楽しい!」
「そ、そそそそう! ですかっ!」
舌を噛みそうなセーレの返事に苦笑し、アーマードカウへの体当たりを中止した。
衝撃でセーレが吹っ飛びかねないので、アーマードカウに合わせて速度を落とす。
「よいしょ」
僕はアーマードカウの斜め横につけて、無造作に前脚の爪で切りつける。
耳に響く悲鳴をあげ、アーマードカウは地面を転がった。かなりの速度で走っていたので、地面を転がる様子も交通事故のようである。
ゆっくりとアーマードカウの事故現場から歩き、獲物を確認する。
アーマードカウは腹を裂かれた状態でエグい感じに死んでいた。
どうやら、適当に爪で攻撃したら腹に当たったらしい。後、後ろ足も一部が抉れている。
そんな惨状を見てセーレが怖がるかと思ったが、意外にも自分から地面に降りてアーマードカウの前に移動する。
そして、傷や飛び出た臓物を確認し、感嘆の声をあげた。
「うわぁ……この魔獣はかなり恐ろしい相手の筈なんですが」
「恐ろしい?」
「騎士様でも一対一では戦わない相手だと聞いていますよ」
セーレの解説を聞き、首を傾げる。
「……まぁいいや。じゃあ一回戻ってお肉の回収をお願いしようか」
そう言うと、セーレは笑顔で返事をした。
パチパチと音を立てて香ばしい匂いを発するアーマードカウに、僕は尻尾をブンブンと振った。
切り分けられた肉には既に味付けがされている。
「まだかなー」
「もう少しですよ、マナヴ様」
焼きたての美味しいお肉を想像し、思わずヨダレが垂れてしまった。
セーレとシオンはそんな僕の横でニコニコと微笑んでいる。
「いや、本当に凄いですな! 僅かな間にアーマードカウを仕留めて来るとは!」
火に炙られる巨大な肉の向こう側で、ジャルバが上機嫌にそんなことを言った。
因みに街道の傍では兵達が点々と固まって休憩している。
「もっと沢山いたら皆にも別けられるから良かったんだけどね。もう二頭見つけたけど、遠くて逃げられちゃった」
「いや、普通ならアーマードカウが逃げることなどありえません。この大規模な行軍で殆ど魔獣と遭遇していないのも、古竜様の御威光のお陰でしょうな!」
普通なら襲い掛かってくるのか、あの牛。てっきり臆病な草食獣的なポジションかと思った。
と、ジャルバの言葉を聞いていると、セーレが口を開いた。
「お肉が焼けました!」
「上手に焼けた?」
「へ? あ、はい。上手に焼けました!」
セーレの返答に満足して頷くと、シオンが笑いながら近くの兵に声をかけた。
「お肉を取り分けてください」
「はっ!」
シオンの指示を受け、綺麗な白い鎧を着た兵士が二人掛かりで肉を運んでくる。
「ありがとう」
「はっ!」
堅苦しい兵の声に笑いながら、僕は肉を食べた。
分厚い肉に牙が食い込み、旨味たっぷりの肉汁が溢れる。濃厚な肉の味に、スパイシーな調味料の味が口の中で混ざり合う。
モリモリと肉を食べていき、気が付けばあっという間に完食してしまった。
「ご馳走様。美味しかったー」
そう言って長い息を吐いていると、セーレとシオンが丸くなった目をこちらに向けてくる。
「アーマードカウを一体……」
「あの、マナヴ様? ご自分と同じくらい大きな肉を食べられて、大丈夫なのですか?」
二人に心配そうに見られ、頭を捻る。
そういえば、倒した牛は普通の黒毛和牛的なサイズである。鎧状の皮などは剥ぎ取ったとはいえ、物理的におかしい。
でも、お腹が痛いなどの症状は無い。
「んん?」
僕の胃は宇宙だ、なんて言うつもりはないが、四次元ポケットみたいではある。
食べた肉が何処にいったのかと悩んでいると、皆が眉根を寄せてこちらを見た。
「あの、マナヴ様?」
「ん、大丈夫。ちょうど満腹くらい」
セーレにそう答えると、ホッと胸を撫で下ろして笑顔になった。
「それなら良かったです!」
いや、良かったのか?
自分のことながら、アバウトなセーレの回答に疑問を抱いた。
この時は不思議に思う程度だったのだが、明日になると、僕の体には明確な異常が訪れているのだった。
「あ、美味しいヤツだ」
僕がそう言うと、首の後ろからセーレが声を上げる。
「え!? アーマードカウですよ!?」
セーレの言葉を聞いて改めて牛を確認すると、確かにゴツゴツとした体は鎧のようでもある。
セーレの反応を見るに、あれは食用では無いのかもしれないが、僕からするとご馳走だ。
「今から捕まえるから、後で焼いてくれる?」
「へ? は、はい。それは大丈夫ですけど……」
「よし。じゃあ、しっかり掴まっててね」
「え? わ、わひゃあっ!?」
地面に爪の先をめり込ませ、大地を蹴る。グングンと地を蹴るたびに加速していき、アーマードカウとやらに迫る。
「草原は良いね! 楽しい!」
「そ、そそそそう! ですかっ!」
舌を噛みそうなセーレの返事に苦笑し、アーマードカウへの体当たりを中止した。
衝撃でセーレが吹っ飛びかねないので、アーマードカウに合わせて速度を落とす。
「よいしょ」
僕はアーマードカウの斜め横につけて、無造作に前脚の爪で切りつける。
耳に響く悲鳴をあげ、アーマードカウは地面を転がった。かなりの速度で走っていたので、地面を転がる様子も交通事故のようである。
ゆっくりとアーマードカウの事故現場から歩き、獲物を確認する。
アーマードカウは腹を裂かれた状態でエグい感じに死んでいた。
どうやら、適当に爪で攻撃したら腹に当たったらしい。後、後ろ足も一部が抉れている。
そんな惨状を見てセーレが怖がるかと思ったが、意外にも自分から地面に降りてアーマードカウの前に移動する。
そして、傷や飛び出た臓物を確認し、感嘆の声をあげた。
「うわぁ……この魔獣はかなり恐ろしい相手の筈なんですが」
「恐ろしい?」
「騎士様でも一対一では戦わない相手だと聞いていますよ」
セーレの解説を聞き、首を傾げる。
「……まぁいいや。じゃあ一回戻ってお肉の回収をお願いしようか」
そう言うと、セーレは笑顔で返事をした。
パチパチと音を立てて香ばしい匂いを発するアーマードカウに、僕は尻尾をブンブンと振った。
切り分けられた肉には既に味付けがされている。
「まだかなー」
「もう少しですよ、マナヴ様」
焼きたての美味しいお肉を想像し、思わずヨダレが垂れてしまった。
セーレとシオンはそんな僕の横でニコニコと微笑んでいる。
「いや、本当に凄いですな! 僅かな間にアーマードカウを仕留めて来るとは!」
火に炙られる巨大な肉の向こう側で、ジャルバが上機嫌にそんなことを言った。
因みに街道の傍では兵達が点々と固まって休憩している。
「もっと沢山いたら皆にも別けられるから良かったんだけどね。もう二頭見つけたけど、遠くて逃げられちゃった」
「いや、普通ならアーマードカウが逃げることなどありえません。この大規模な行軍で殆ど魔獣と遭遇していないのも、古竜様の御威光のお陰でしょうな!」
普通なら襲い掛かってくるのか、あの牛。てっきり臆病な草食獣的なポジションかと思った。
と、ジャルバの言葉を聞いていると、セーレが口を開いた。
「お肉が焼けました!」
「上手に焼けた?」
「へ? あ、はい。上手に焼けました!」
セーレの返答に満足して頷くと、シオンが笑いながら近くの兵に声をかけた。
「お肉を取り分けてください」
「はっ!」
シオンの指示を受け、綺麗な白い鎧を着た兵士が二人掛かりで肉を運んでくる。
「ありがとう」
「はっ!」
堅苦しい兵の声に笑いながら、僕は肉を食べた。
分厚い肉に牙が食い込み、旨味たっぷりの肉汁が溢れる。濃厚な肉の味に、スパイシーな調味料の味が口の中で混ざり合う。
モリモリと肉を食べていき、気が付けばあっという間に完食してしまった。
「ご馳走様。美味しかったー」
そう言って長い息を吐いていると、セーレとシオンが丸くなった目をこちらに向けてくる。
「アーマードカウを一体……」
「あの、マナヴ様? ご自分と同じくらい大きな肉を食べられて、大丈夫なのですか?」
二人に心配そうに見られ、頭を捻る。
そういえば、倒した牛は普通の黒毛和牛的なサイズである。鎧状の皮などは剥ぎ取ったとはいえ、物理的におかしい。
でも、お腹が痛いなどの症状は無い。
「んん?」
僕の胃は宇宙だ、なんて言うつもりはないが、四次元ポケットみたいではある。
食べた肉が何処にいったのかと悩んでいると、皆が眉根を寄せてこちらを見た。
「あの、マナヴ様?」
「ん、大丈夫。ちょうど満腹くらい」
セーレにそう答えると、ホッと胸を撫で下ろして笑顔になった。
「それなら良かったです!」
いや、良かったのか?
自分のことながら、アバウトなセーレの回答に疑問を抱いた。
この時は不思議に思う程度だったのだが、明日になると、僕の体には明確な異常が訪れているのだった。
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