115 / 115
買い物5
しおりを挟む
「……まあ、確かに。ただ、こう……程々にね」
まあ、自分が偽善者だって気付きつつも、ついついこういう事を言ってしまうんだけど。何も行動を起こさないよりは、マシだと思いたいのかもしれない。
「そりゃ、嫌われたら、意味ないからな。そりゃ気を付けるよ」
いや、そういう意味で言ったんじゃないんだけどな……。これ以上説明する気力もなかったから、放置するけども。
「そういう事ですので、この資金は遠慮なく受け取っていいと思いますよ」
俺の葛藤が見透かされたのか、アンジェラさんは、こちらを安心させるように、ほほ笑む。
あんまり納得は行ってないけど、ここ迄、気を遣わせてしまったら、拒否する訳にもいかない。
「ありがとうございます」
お金を受け取ろうとして、地面にぶちまけられた硬貨が視界に入った。思わず、溜息が出たが、仕方ないので、袋の中に集める。何故、八束が散らかした物を、俺が片付けなければ、ならないのか……。執事だと言うなら、逆に俺の物を片付ける立場だろうに……。
と言うか、片付けはしなくていいから、無駄に散らかすのは辞めて欲しい。しかも、人の物を……。
「ところで、これってどれぐらいの金額なんだ?」
八束が、俺の手の中を覗き込んで、ぼやく。態々覗き込むくらいなら、そこに落ちてるのを、拾えばいいだろうに……。ついでに、拾うのを手伝うとかさ……。
まあ、お金を拾うくらいなら、別にいいんだけども。
確かに、八束の言う事は一理ある。
何となく貰ったけど、どのくらいが価値があるかは、深く考えてなかった。お小遣いと言うくらいだから、何となく千円くらいかな?と思ってたけど。
硬貨の価値や、物価を知るのは、大事だ。今は城に閉じ籠っているが、いつかは、追い出されるかもしれないし……。その時に、何も知らない状態で放り出されるよりは、この世界の知識が少しでもあった方が、楽になるだろう。特に、お金関連の知識は、何をするにも、いるだろうしな……。
それに何より、今から買い物をするのに、物の価値が分からなかったら、話にならないだろう。買おうとして、お金が足りませんでしたー。なんてことになったら、恥ずかしすぎる。
「どのくらい……5000ヴァロですね」
……聞いてみたものの、どれくらいの価値なのか全くわからない。ヴァロと言うのが、お金の単位なのは分かるが……。
アンジェラさんも、この説明では足りないと感じたのだろう。それでも、上手い説明が浮かばないのか、難しい顔をしている。
お互い、相手の世界について詳しくないから、すり合わせも難しいのか……。
然も同じ世界ならまだしも、世界すら違うから、基準となる物も分からない。車なんかはこの世界になさそうだし、白米なんかも、見てないなあ……。
パンは、この世界にもあるが、製造の手間が違うだろう。前の世界なら、工場で大量生産も出来たが、この世界に工場があるとは思えない。そんな物を比較しても、正確な価値は分からない気がする。そもそも、この世界では、食パンも見かけないし……。
「うーん。じゃあ、100ヴァロで、大体何が買えそう?」
「そうですね……。トマト一個分くらいでしょうか……」
「他に買えそうなのは?」
「うーん……あ、掌くらいの鳥が、それくらいで売ってましたね」
え?鳥……?掌くらいの大きさの物なら、ペット用だろうか?まさか、そんな小さい物を食べるとは思えない。
それにしたって、トマトと鳥が同じってどういう事なんだ?鳥が安すぎないか……?生き物の値段は良く分からないが、カブトムシですら、かなりの金額だった記憶があるが……。この世界では、ペットが安い、のか……?
「鳥……?食べる用か……?」
「いや、流石に食べる用では無いんじゃない?」
俺の思考と真逆の発言に、思わず突っ込んでしまう。アンジェラさんも、若干、八束に引きながらも頷いた。
「そうですね。ペット用の子です。お祭りとかで、よく見かけますよ」
あー。なるほど?金魚すくいみたいなノリだろうか?それならまだ、理解できなくはない。
八束的には、あんまり納得できなかったのか、顔を顰めた。
「まあ、実際に出かけて商品見た方が、分かるかもしれないね。百聞は一見に如かず、って言うし」
こうやって問答だけで、情報を詰めるのは無理があるだろう。話せば話すほど、謎が増えて話が脱線しそうだし……。それよりは実際に色んな物の値段を見た方が、お互い楽だと思う。
「確かにな……」
「では、出かける準備をしましょうか」
そう言うと、アンジェラさんは立ち上がる。慌てて俺達は彼女の後に続いた。
まあ、自分が偽善者だって気付きつつも、ついついこういう事を言ってしまうんだけど。何も行動を起こさないよりは、マシだと思いたいのかもしれない。
「そりゃ、嫌われたら、意味ないからな。そりゃ気を付けるよ」
いや、そういう意味で言ったんじゃないんだけどな……。これ以上説明する気力もなかったから、放置するけども。
「そういう事ですので、この資金は遠慮なく受け取っていいと思いますよ」
俺の葛藤が見透かされたのか、アンジェラさんは、こちらを安心させるように、ほほ笑む。
あんまり納得は行ってないけど、ここ迄、気を遣わせてしまったら、拒否する訳にもいかない。
「ありがとうございます」
お金を受け取ろうとして、地面にぶちまけられた硬貨が視界に入った。思わず、溜息が出たが、仕方ないので、袋の中に集める。何故、八束が散らかした物を、俺が片付けなければ、ならないのか……。執事だと言うなら、逆に俺の物を片付ける立場だろうに……。
と言うか、片付けはしなくていいから、無駄に散らかすのは辞めて欲しい。しかも、人の物を……。
「ところで、これってどれぐらいの金額なんだ?」
八束が、俺の手の中を覗き込んで、ぼやく。態々覗き込むくらいなら、そこに落ちてるのを、拾えばいいだろうに……。ついでに、拾うのを手伝うとかさ……。
まあ、お金を拾うくらいなら、別にいいんだけども。
確かに、八束の言う事は一理ある。
何となく貰ったけど、どのくらいが価値があるかは、深く考えてなかった。お小遣いと言うくらいだから、何となく千円くらいかな?と思ってたけど。
硬貨の価値や、物価を知るのは、大事だ。今は城に閉じ籠っているが、いつかは、追い出されるかもしれないし……。その時に、何も知らない状態で放り出されるよりは、この世界の知識が少しでもあった方が、楽になるだろう。特に、お金関連の知識は、何をするにも、いるだろうしな……。
それに何より、今から買い物をするのに、物の価値が分からなかったら、話にならないだろう。買おうとして、お金が足りませんでしたー。なんてことになったら、恥ずかしすぎる。
「どのくらい……5000ヴァロですね」
……聞いてみたものの、どれくらいの価値なのか全くわからない。ヴァロと言うのが、お金の単位なのは分かるが……。
アンジェラさんも、この説明では足りないと感じたのだろう。それでも、上手い説明が浮かばないのか、難しい顔をしている。
お互い、相手の世界について詳しくないから、すり合わせも難しいのか……。
然も同じ世界ならまだしも、世界すら違うから、基準となる物も分からない。車なんかはこの世界になさそうだし、白米なんかも、見てないなあ……。
パンは、この世界にもあるが、製造の手間が違うだろう。前の世界なら、工場で大量生産も出来たが、この世界に工場があるとは思えない。そんな物を比較しても、正確な価値は分からない気がする。そもそも、この世界では、食パンも見かけないし……。
「うーん。じゃあ、100ヴァロで、大体何が買えそう?」
「そうですね……。トマト一個分くらいでしょうか……」
「他に買えそうなのは?」
「うーん……あ、掌くらいの鳥が、それくらいで売ってましたね」
え?鳥……?掌くらいの大きさの物なら、ペット用だろうか?まさか、そんな小さい物を食べるとは思えない。
それにしたって、トマトと鳥が同じってどういう事なんだ?鳥が安すぎないか……?生き物の値段は良く分からないが、カブトムシですら、かなりの金額だった記憶があるが……。この世界では、ペットが安い、のか……?
「鳥……?食べる用か……?」
「いや、流石に食べる用では無いんじゃない?」
俺の思考と真逆の発言に、思わず突っ込んでしまう。アンジェラさんも、若干、八束に引きながらも頷いた。
「そうですね。ペット用の子です。お祭りとかで、よく見かけますよ」
あー。なるほど?金魚すくいみたいなノリだろうか?それならまだ、理解できなくはない。
八束的には、あんまり納得できなかったのか、顔を顰めた。
「まあ、実際に出かけて商品見た方が、分かるかもしれないね。百聞は一見に如かず、って言うし」
こうやって問答だけで、情報を詰めるのは無理があるだろう。話せば話すほど、謎が増えて話が脱線しそうだし……。それよりは実際に色んな物の値段を見た方が、お互い楽だと思う。
「確かにな……」
「では、出かける準備をしましょうか」
そう言うと、アンジェラさんは立ち上がる。慌てて俺達は彼女の後に続いた。
0
お気に入りに追加
737
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい
兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
誤字報告ありがとうございます。
仰る通りですので訂正させて頂きました。
掲載の順番にミスがあったので、
加筆部分を読んでいただけると助かります。
重ね重ね申し訳ありません。
確認致しました。確かに話が飛んでいます。申し訳ありません。
今、訂正致しましたので、よろしくお願いします、
細かいところまで読んでくださってありがとうございます。
八束vsネーロ2と次の内容のサボり魔が繋がってない気がする
確認した所、話が飛んでいました。すみません。
ご報告ありがとうございます。
訂正致しましたので今後もよろしくお願い致します。