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交友関係1
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悲しいのは勿論。
それだけではなく、悲しさが天元突破したせいで、脳が可笑しくなったのか、何故かイライラしてきた。
先程までは、反論できない、なんて思っていた癖に、今では、すらすらと、八束を責めるような文言が、浮かんでくる始末。
それでもしばらくは、口をつぐんでいた。反論したって、負け惜しみとか、逆切れとか、もしくはそれらに類似するような……俺に正当性のない物に、なってしまうと思ったからね。実際その通りなんだけど。
けれども、やっぱり我慢できなくなって、つい、口にしてしまう。
「お前だっていないだろ?!」
まさかここで反論が来ると思っていなかったのか、八束は眉を動かす。
「いや、居ない訳じゃないが、八束とは、どーも、相性が悪そうでなあ……」
「そんなの、居ないのと同じじゃないか!」
「んな、暴論な」
暴論である。
しかし、そんなことは、今の俺には関係ない。
……頭の片隅では、滅茶苦茶なことを言ってる自覚はある。でも、思考の大半は、自分が正しいと思っていて、それらに体が乗っ取られているような……まあ、それすらも思い込みって言うか、冷静な方の自分が、主導権を渡しちゃったから、こうなっている訳なんだけども。
「俺にだって少なくない数の……友達って言えるかは知らんが、友達になってやれ、ってお願いできるくらいの仲の奴はいるよ?ただ、全員が全員なあ……」
「因みに何人くらい?」
「男子の三分の一くらい?」
「……」
俺たちは黙り込む。
今まで、カっとなっていた俺だったが、流石に黙らざるを得なかった。
多分、八束も同じことを思っているだろう。
……いや、でも、なんというか、責任転嫁している気がしなくもないし、第一、友達のことを悪く言いたくはない。八束?奴は別だよ。あいつは別にけちょんけちょんに言っても問題ないから。
そんなふうに俺は躊躇していたが、八束は容赦なく口に出した。
「影井が悪いんじゃね?」
……。
肯定は出来ない。でも、強く否定することも出来なかった。
強く否定出来ないってことは、やっぱり、俺の中でも、影井が悪いと思ってる節があるんだろうな……。まあ、分かりきっていたことではあるんだけど、改めて気付かされると、何とも言えない気持ちになる。
「いや、だって俺、結構交友関係広い方だよな?」
俺の反応を見て怯んだのか、八束は困ったような顔をして、聞いてきた。
そこは別に否定するところでもないので、頷く。
「で、その俺が友達紹介できないってことは、影井の方に原因があるんじゃね?メイドの子とも上手くいってないみたいだし」
ぐう正論。
いや、てか、そんなことは知ってるよ。分かってるよ。ただ、感情がその結論を受け入れてくれないだけで気付いてないわけじゃないから。
「い、いや、八束が派手なヤツばっかりとつるんでるから、悪いんじゃない?」
無理矢理出した反論だったが、悪くない気がした。全部が全部、反論の通りとは思わないけど、一部は正しいんじゃないか?
だってどう頑張っても、八束の知り合いって、友達になれないような陽気な奴らばっかりだもんなあ。友達になる所か、話すのもちょっと嫌だわ……。俺ですら、そうなんだから、影井が彼らと話してみろ、彼らに馬鹿にされる未来しか見えない。
それが友達……?いやいや、無理無理。
せめて、八束にもう少し大人しい……それか、優しい友達がいたらなあ……。いや、友達のとの字すら居ない、俺の言えることでは、ないんだけども。
「む……」
八束が黙り込んでしまった。
効いたのか……?
悪さで言ったら、俺や影井の方が遥かに上で、八束にはほとんど落ち度がないというのに……?
これはチャンスだ。なんだかよく分からないが、八束が血迷っている。今の内に全て責任を押し付けてしまおう。
「それに、友達が殆ど居ないやつに、友達を作らせるより、元より友達の多い奴に、新しい友達を作らせる方が簡単だろ!だって後者は元から、人と話すのが得意なんだから。人には向き不向きがある。不向きな奴に責任を押し付けるなんて、情けないことだとは思わない?」
それだけではなく、悲しさが天元突破したせいで、脳が可笑しくなったのか、何故かイライラしてきた。
先程までは、反論できない、なんて思っていた癖に、今では、すらすらと、八束を責めるような文言が、浮かんでくる始末。
それでもしばらくは、口をつぐんでいた。反論したって、負け惜しみとか、逆切れとか、もしくはそれらに類似するような……俺に正当性のない物に、なってしまうと思ったからね。実際その通りなんだけど。
けれども、やっぱり我慢できなくなって、つい、口にしてしまう。
「お前だっていないだろ?!」
まさかここで反論が来ると思っていなかったのか、八束は眉を動かす。
「いや、居ない訳じゃないが、八束とは、どーも、相性が悪そうでなあ……」
「そんなの、居ないのと同じじゃないか!」
「んな、暴論な」
暴論である。
しかし、そんなことは、今の俺には関係ない。
……頭の片隅では、滅茶苦茶なことを言ってる自覚はある。でも、思考の大半は、自分が正しいと思っていて、それらに体が乗っ取られているような……まあ、それすらも思い込みって言うか、冷静な方の自分が、主導権を渡しちゃったから、こうなっている訳なんだけども。
「俺にだって少なくない数の……友達って言えるかは知らんが、友達になってやれ、ってお願いできるくらいの仲の奴はいるよ?ただ、全員が全員なあ……」
「因みに何人くらい?」
「男子の三分の一くらい?」
「……」
俺たちは黙り込む。
今まで、カっとなっていた俺だったが、流石に黙らざるを得なかった。
多分、八束も同じことを思っているだろう。
……いや、でも、なんというか、責任転嫁している気がしなくもないし、第一、友達のことを悪く言いたくはない。八束?奴は別だよ。あいつは別にけちょんけちょんに言っても問題ないから。
そんなふうに俺は躊躇していたが、八束は容赦なく口に出した。
「影井が悪いんじゃね?」
……。
肯定は出来ない。でも、強く否定することも出来なかった。
強く否定出来ないってことは、やっぱり、俺の中でも、影井が悪いと思ってる節があるんだろうな……。まあ、分かりきっていたことではあるんだけど、改めて気付かされると、何とも言えない気持ちになる。
「いや、だって俺、結構交友関係広い方だよな?」
俺の反応を見て怯んだのか、八束は困ったような顔をして、聞いてきた。
そこは別に否定するところでもないので、頷く。
「で、その俺が友達紹介できないってことは、影井の方に原因があるんじゃね?メイドの子とも上手くいってないみたいだし」
ぐう正論。
いや、てか、そんなことは知ってるよ。分かってるよ。ただ、感情がその結論を受け入れてくれないだけで気付いてないわけじゃないから。
「い、いや、八束が派手なヤツばっかりとつるんでるから、悪いんじゃない?」
無理矢理出した反論だったが、悪くない気がした。全部が全部、反論の通りとは思わないけど、一部は正しいんじゃないか?
だってどう頑張っても、八束の知り合いって、友達になれないような陽気な奴らばっかりだもんなあ。友達になる所か、話すのもちょっと嫌だわ……。俺ですら、そうなんだから、影井が彼らと話してみろ、彼らに馬鹿にされる未来しか見えない。
それが友達……?いやいや、無理無理。
せめて、八束にもう少し大人しい……それか、優しい友達がいたらなあ……。いや、友達のとの字すら居ない、俺の言えることでは、ないんだけども。
「む……」
八束が黙り込んでしまった。
効いたのか……?
悪さで言ったら、俺や影井の方が遥かに上で、八束にはほとんど落ち度がないというのに……?
これはチャンスだ。なんだかよく分からないが、八束が血迷っている。今の内に全て責任を押し付けてしまおう。
「それに、友達が殆ど居ないやつに、友達を作らせるより、元より友達の多い奴に、新しい友達を作らせる方が簡単だろ!だって後者は元から、人と話すのが得意なんだから。人には向き不向きがある。不向きな奴に責任を押し付けるなんて、情けないことだとは思わない?」
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