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召喚魔法1
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ラルゴさんは柔らかに微笑んだ。
まあ、どれだけ説得したところで、ラルゴさんの罪悪感が、なくなることは、ないのだろう。もしも、俺がラルゴさんの立場だったら、罪の意識でどうにかなっていただろうし、誰かに何かを言われたところで、その罪悪感は、無くならなかったに違いない。
これが当事者と第三者の感じ方の違い、と言うものなのかも。絶対に、ラルゴさんは悪くないと思うんだけどなあ。……ああ、でも、他の奴らも同じように思うか?と聞かれると何とも言えない。八束とか、影井とか、先生なんかは、大丈夫だと思うけど。
それ以外の奴が、ラルゴさんを責めないとも、言いきれない。だから他の奴には、なるべく、このことは話さない方がいいかも。一番初めの授業の時に、眠りの呪文を唱えていた件も併せると、かなり印象は悪くなるだろうからね。まだバレてないから、今のところ何もないけど。
まあ、そんな話を大して親しくもない同級生ともしないだろうし、そもそも、話すきっかけがない。いきなり、名前知ってるくらいの仲の奴が、「俺たちを召喚した原因は、あのじじいが作ったんだってよ」なーんていったって、怪しさしかないでしょ。
まあそりゃ、同級生の好で、多少は信じてもらえる……かもしれないけれど。俺はそんな不審者には、なるつもりがないし。そう考えると、人に話す……と言うか、聞かれるような状況が思い浮かばない。だから大丈夫だろう。
「あ、そういえば」
「ん?何かの?」
俺の声色から、慰めの色が消えたことを、感じ取ったのだろう。ラルゴさんも、さっきまでの、落ち込んでいたことなんて、初めから無かったかのような、態度を見せる。
本当は罪悪感で胸がいっぱいだろうに、それを俺に見せると、心配するだろうから、と、わざわざ、平静を装ってくれているのだろう。
流石おじいちゃんである。
俺はその気持ちを、ありがたく受け取った上で、知らない風を装う。
「異世界から、の召喚って、他には何が召喚できるんですか?」
「む?」
何故そんなことを質問したのか?と不思議そうな顔をするも、すぐに納得するように頷く。好奇心によるものだ、と判断したのかもしれない。
「そうじゃのう……悪魔や、天使が代表的じゃの。ただ、天使は呼び出しても滅多に出てこぬらしい。悪魔は……出ては来るものの、願いを叶える代償に、何かを奪われるとか……。まあ、余程のことがない限り、悪魔とは契約せんのう。教会からも悪魔召喚は、異端とされているしの」
天使の方はさておき、悪魔の方は予想通り、と言うか、イメージ通りだったな。
まあ、悪魔を召喚したい人なんていないだろうし、まあ、教会からしたら、論外な手段だろう。天使も……天使はそもそも来ないならなあ。……いや、待てよ。
「教会が天使を呼び出した事例ってあるんですか?」
「もちろん存在するのう」
「……結果は?」
「……」
ラルゴさんは俺から、あからさまに、目を逸らした。
あ、これは駄目だった奴だ……。
「かなりの回数、呼び出したらしいのじゃが、それに天使が応答した回数は、数えるほどしか、なかったらしいのう」
うん。まあ、一回失敗しただけじゃ引き下がらないよね。教会の中で、天使がどれくらいの立ち位置にいるか、知らないけど、神の次くらいに神聖なものだとしたら、成功するまで呼び出してもおかしくはない。
その所為で、成功率が低いことが、分かってしまったのは、災難だけど。教会の信用度にも、悪影響を及ぼす案件なんじゃないだろうか?
というか天使も天使である。折角、自分たちを信仰してくれているのに、出てこないって……。教会が見放さないのが、不思議なくらいだ。
天使って言うと、凄い優しくて、可愛らしい。みたいなイメージだけど、この世界では、そうじゃないのかも。あー。そうか、あの女神の部下、みたいなもんだからなあ。性格が腐ってそうな感じがするわ。
つまり天使もダメ、と。
「他に呼び出せるような人?物?はいないんですか?」
「精霊……やら、妖精やらの世界もあるらしいが、呪文自体、見つかっとらんからのう……伝説の域を出ぬのじゃ」
……そっか。
じゃあ、俺たちを呼び出すしか、手がなかった、ってことなんだろう。がっかりしたような、安心したような、複雑な気持ちだ。
うん。でもまあ、これですっきりした。
今回のことは、仕方なく起きた事故だったってことで。だからって、教会を許したわけじゃないけど、少しは情状酌量の余地があるかなって。
人を憎むのは何も考えなくていいから、楽かもしれない。けれど、それはやっぱり、つらい。俺の心の奥の方で、ずっと尋ねてくるんだ。『本当にそれでいいのか?』って。
多分、俺は人を憎んだり、嫌ったりするのに向いてないんだろうなあ。まあ、それでも、嫌なものは嫌なんだけど。
「ありがとうございました」
「ふ、ふむ?まあ、何かの助けになったなら、良かったのじゃ」
ラルゴさんは、いまいち、しっくり来ないような、表情をしていたが、何も聞かなかった。もし、聞かれていても、はぐらかしていただろうけど。
まあ、どれだけ説得したところで、ラルゴさんの罪悪感が、なくなることは、ないのだろう。もしも、俺がラルゴさんの立場だったら、罪の意識でどうにかなっていただろうし、誰かに何かを言われたところで、その罪悪感は、無くならなかったに違いない。
これが当事者と第三者の感じ方の違い、と言うものなのかも。絶対に、ラルゴさんは悪くないと思うんだけどなあ。……ああ、でも、他の奴らも同じように思うか?と聞かれると何とも言えない。八束とか、影井とか、先生なんかは、大丈夫だと思うけど。
それ以外の奴が、ラルゴさんを責めないとも、言いきれない。だから他の奴には、なるべく、このことは話さない方がいいかも。一番初めの授業の時に、眠りの呪文を唱えていた件も併せると、かなり印象は悪くなるだろうからね。まだバレてないから、今のところ何もないけど。
まあ、そんな話を大して親しくもない同級生ともしないだろうし、そもそも、話すきっかけがない。いきなり、名前知ってるくらいの仲の奴が、「俺たちを召喚した原因は、あのじじいが作ったんだってよ」なーんていったって、怪しさしかないでしょ。
まあそりゃ、同級生の好で、多少は信じてもらえる……かもしれないけれど。俺はそんな不審者には、なるつもりがないし。そう考えると、人に話す……と言うか、聞かれるような状況が思い浮かばない。だから大丈夫だろう。
「あ、そういえば」
「ん?何かの?」
俺の声色から、慰めの色が消えたことを、感じ取ったのだろう。ラルゴさんも、さっきまでの、落ち込んでいたことなんて、初めから無かったかのような、態度を見せる。
本当は罪悪感で胸がいっぱいだろうに、それを俺に見せると、心配するだろうから、と、わざわざ、平静を装ってくれているのだろう。
流石おじいちゃんである。
俺はその気持ちを、ありがたく受け取った上で、知らない風を装う。
「異世界から、の召喚って、他には何が召喚できるんですか?」
「む?」
何故そんなことを質問したのか?と不思議そうな顔をするも、すぐに納得するように頷く。好奇心によるものだ、と判断したのかもしれない。
「そうじゃのう……悪魔や、天使が代表的じゃの。ただ、天使は呼び出しても滅多に出てこぬらしい。悪魔は……出ては来るものの、願いを叶える代償に、何かを奪われるとか……。まあ、余程のことがない限り、悪魔とは契約せんのう。教会からも悪魔召喚は、異端とされているしの」
天使の方はさておき、悪魔の方は予想通り、と言うか、イメージ通りだったな。
まあ、悪魔を召喚したい人なんていないだろうし、まあ、教会からしたら、論外な手段だろう。天使も……天使はそもそも来ないならなあ。……いや、待てよ。
「教会が天使を呼び出した事例ってあるんですか?」
「もちろん存在するのう」
「……結果は?」
「……」
ラルゴさんは俺から、あからさまに、目を逸らした。
あ、これは駄目だった奴だ……。
「かなりの回数、呼び出したらしいのじゃが、それに天使が応答した回数は、数えるほどしか、なかったらしいのう」
うん。まあ、一回失敗しただけじゃ引き下がらないよね。教会の中で、天使がどれくらいの立ち位置にいるか、知らないけど、神の次くらいに神聖なものだとしたら、成功するまで呼び出してもおかしくはない。
その所為で、成功率が低いことが、分かってしまったのは、災難だけど。教会の信用度にも、悪影響を及ぼす案件なんじゃないだろうか?
というか天使も天使である。折角、自分たちを信仰してくれているのに、出てこないって……。教会が見放さないのが、不思議なくらいだ。
天使って言うと、凄い優しくて、可愛らしい。みたいなイメージだけど、この世界では、そうじゃないのかも。あー。そうか、あの女神の部下、みたいなもんだからなあ。性格が腐ってそうな感じがするわ。
つまり天使もダメ、と。
「他に呼び出せるような人?物?はいないんですか?」
「精霊……やら、妖精やらの世界もあるらしいが、呪文自体、見つかっとらんからのう……伝説の域を出ぬのじゃ」
……そっか。
じゃあ、俺たちを呼び出すしか、手がなかった、ってことなんだろう。がっかりしたような、安心したような、複雑な気持ちだ。
うん。でもまあ、これですっきりした。
今回のことは、仕方なく起きた事故だったってことで。だからって、教会を許したわけじゃないけど、少しは情状酌量の余地があるかなって。
人を憎むのは何も考えなくていいから、楽かもしれない。けれど、それはやっぱり、つらい。俺の心の奥の方で、ずっと尋ねてくるんだ。『本当にそれでいいのか?』って。
多分、俺は人を憎んだり、嫌ったりするのに向いてないんだろうなあ。まあ、それでも、嫌なものは嫌なんだけど。
「ありがとうございました」
「ふ、ふむ?まあ、何かの助けになったなら、良かったのじゃ」
ラルゴさんは、いまいち、しっくり来ないような、表情をしていたが、何も聞かなかった。もし、聞かれていても、はぐらかしていただろうけど。
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