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魔力量2
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意外そうな顔で、見られた。え?知ってます、と答えるのが正解だったの?ぶわっと、背中の辺りに汗が噴き出てくる。然し今更どうしようもない。今から撤回したらただの不審者だ。間違っていようが、ここは計画通り知らぬ存ぜぬを通させてもらおう。
「大まかに説明するとの、さっきお主が使った魔法、あれ一発が、わしの総魔力よりも多いと思うんじゃな」
「えーと、と言うことは……少なくとも……ラルゴさんの二十倍……」
自分で言ってて、だんだん気まずくなってきた僕は、ラルゴさんから、慌てて目を逸らす。
「まあ、そういう事になるのう」
言っているラルゴさんは、あまり気にしているように見えないが、内心は、どう思っているか、分からない。
しかも正確な話をすると、ラルゴさんの魔力の三十倍も持っている、のだ。気不味くて、しゃーないわ。
「え?それって凄いんすか?」
何もわかってないやつがほざいた。十分の一のくせに……。知らないとはいえ、失礼にもほどがある。
まあ、流石に、ラルゴさんが自分(八束)より魔力が少ない、とは思ってないだろうけど。
「ふむ……」
ラルゴさんは困った顔をしている。そりゃ、そうである。実際、ラルゴさんの魔力は結構多いと思うけれど、それを自分から……は言いにくいでしょ。
俺が言えるものなら、言ってやりたい。お前の十倍だぞ、と。……でも言うと、『なんでそんなこと知ってんの?』と思われてしまうだろう。そうなると面倒くさい。
だから残念ながら、スルーさせていただくことにしよう。心の中で、ラルゴさんに、合掌。
少しすると、俺があてにならないと分かったのか、説明するのを諦めたらしく、苦笑いを浮かべた。
「ま、まあ、わしの魔力が多いかどうかはさておき、カシオカの魔力が多いことは確実じゃよ。わしは今まで、色々な人を教えてきたがのう……。ここまで魔力が多いのは初めてじゃ」
「ふーん」
何とか伝えようとする、ラルゴさんに返ってきたのは、生返事だった。
まあ、そうなるわな。恐らくだが、『言っても、ラルゴさんの見てきた人らは、一般人だし。俺らは腐っても勇者だもんなあ』とか思ってるのだろう。
まあ確かに、勇者と一般人では比較にならないかもしれないが、一万は頭おかしすぎるだろう。
……多分これは実際に、具体的な数値を、聞いてもらわないことには、伝わらないだろうなあ。あとで絶対に言おう。
「他に、空間魔法でできることってないんですか?」
何だか、微妙な空気になってしまったので、それを壊すためにも、話題を変える。
「他には……そうじゃな、転移の魔法なんかもあるのう。かなり魔力を使うそうじゃが、まあ、お主なら大丈夫じゃろうて」
少し呆れたような声で言われる。
……おっしゃる通りです。寧ろ俺が魔力不足で発動できない魔法なんて、それこそ、ミケぐらいしか発動できないんじゃないだろうか……。知らんけど。
「その転移、ってどんな原理で発動してるんですか?」
「空間を縮めとるんじゃな」
うわ。それって、距離が長くなればなるほど、魔力使うって事じゃん。しかも、転移って長距離飛ぶイメージ強いし。ルーラ的なね。そうなると膨大な魔力使うってことになりそう。俺の魔力、全部使ったら、どこまで転移できるかも気になるところ。
「それって、今やったりは……」
「おお、勿論いいぞい」
ラルゴさんは、キラキラした目でこちらを見てくる。
「呪文は必要かの?」
そう聞くのは、さっきラルゴさんに教えてもらった呪文を使わなかったからだろう。すでに俺の中に、正解の呪文があるなら、ラルゴさんの教えは確かに要らないだろう。
でも残念ながら、俺の中で、呪文の形が不明瞭だ。あることはあるけど、ぼんやりしている。といった感じ。
「お願いします」
ラルゴさんは、すぅと息を吸って、目を閉じた。
「大いなる大地の力よ
その力を持ってして
我を転移させたまえ」
呪文を聞くと何となく、イメージが補完された気がした。
ああ、なるほど。転移したい場所を思い浮かべなきゃいけないんだな。それじゃあ、あんまり遠くても面倒だから、八束の後ろ、にしておこう。
「空間よ
我が魔力で
縮まれ」
ひゅん。
一瞬だった。瞬きをしている間に、景色が変わり、俺は八束の後ろにいた。そして、前から、拳が飛んできたのである。本当に一瞬だった。八束を驚かせようと、手を上げると、まず、感じたのは風だった。物凄い風圧で、俺は何も見えていなかったけど、かなりの早さを兼ね備えていたことを物語っていた。
次に見たのは、静止した手だった。それは固く握られており、当たったらとんでもなく痛いんだろうな、と思わせるようなものだった。それが、眼前に。目の前も目の前の、ピントが合うか、合わないか、の境界くらいにあったのだ。思わず、顔を背けた。少しでも、拳から、距離が取れるように、と。
「大まかに説明するとの、さっきお主が使った魔法、あれ一発が、わしの総魔力よりも多いと思うんじゃな」
「えーと、と言うことは……少なくとも……ラルゴさんの二十倍……」
自分で言ってて、だんだん気まずくなってきた僕は、ラルゴさんから、慌てて目を逸らす。
「まあ、そういう事になるのう」
言っているラルゴさんは、あまり気にしているように見えないが、内心は、どう思っているか、分からない。
しかも正確な話をすると、ラルゴさんの魔力の三十倍も持っている、のだ。気不味くて、しゃーないわ。
「え?それって凄いんすか?」
何もわかってないやつがほざいた。十分の一のくせに……。知らないとはいえ、失礼にもほどがある。
まあ、流石に、ラルゴさんが自分(八束)より魔力が少ない、とは思ってないだろうけど。
「ふむ……」
ラルゴさんは困った顔をしている。そりゃ、そうである。実際、ラルゴさんの魔力は結構多いと思うけれど、それを自分から……は言いにくいでしょ。
俺が言えるものなら、言ってやりたい。お前の十倍だぞ、と。……でも言うと、『なんでそんなこと知ってんの?』と思われてしまうだろう。そうなると面倒くさい。
だから残念ながら、スルーさせていただくことにしよう。心の中で、ラルゴさんに、合掌。
少しすると、俺があてにならないと分かったのか、説明するのを諦めたらしく、苦笑いを浮かべた。
「ま、まあ、わしの魔力が多いかどうかはさておき、カシオカの魔力が多いことは確実じゃよ。わしは今まで、色々な人を教えてきたがのう……。ここまで魔力が多いのは初めてじゃ」
「ふーん」
何とか伝えようとする、ラルゴさんに返ってきたのは、生返事だった。
まあ、そうなるわな。恐らくだが、『言っても、ラルゴさんの見てきた人らは、一般人だし。俺らは腐っても勇者だもんなあ』とか思ってるのだろう。
まあ確かに、勇者と一般人では比較にならないかもしれないが、一万は頭おかしすぎるだろう。
……多分これは実際に、具体的な数値を、聞いてもらわないことには、伝わらないだろうなあ。あとで絶対に言おう。
「他に、空間魔法でできることってないんですか?」
何だか、微妙な空気になってしまったので、それを壊すためにも、話題を変える。
「他には……そうじゃな、転移の魔法なんかもあるのう。かなり魔力を使うそうじゃが、まあ、お主なら大丈夫じゃろうて」
少し呆れたような声で言われる。
……おっしゃる通りです。寧ろ俺が魔力不足で発動できない魔法なんて、それこそ、ミケぐらいしか発動できないんじゃないだろうか……。知らんけど。
「その転移、ってどんな原理で発動してるんですか?」
「空間を縮めとるんじゃな」
うわ。それって、距離が長くなればなるほど、魔力使うって事じゃん。しかも、転移って長距離飛ぶイメージ強いし。ルーラ的なね。そうなると膨大な魔力使うってことになりそう。俺の魔力、全部使ったら、どこまで転移できるかも気になるところ。
「それって、今やったりは……」
「おお、勿論いいぞい」
ラルゴさんは、キラキラした目でこちらを見てくる。
「呪文は必要かの?」
そう聞くのは、さっきラルゴさんに教えてもらった呪文を使わなかったからだろう。すでに俺の中に、正解の呪文があるなら、ラルゴさんの教えは確かに要らないだろう。
でも残念ながら、俺の中で、呪文の形が不明瞭だ。あることはあるけど、ぼんやりしている。といった感じ。
「お願いします」
ラルゴさんは、すぅと息を吸って、目を閉じた。
「大いなる大地の力よ
その力を持ってして
我を転移させたまえ」
呪文を聞くと何となく、イメージが補完された気がした。
ああ、なるほど。転移したい場所を思い浮かべなきゃいけないんだな。それじゃあ、あんまり遠くても面倒だから、八束の後ろ、にしておこう。
「空間よ
我が魔力で
縮まれ」
ひゅん。
一瞬だった。瞬きをしている間に、景色が変わり、俺は八束の後ろにいた。そして、前から、拳が飛んできたのである。本当に一瞬だった。八束を驚かせようと、手を上げると、まず、感じたのは風だった。物凄い風圧で、俺は何も見えていなかったけど、かなりの早さを兼ね備えていたことを物語っていた。
次に見たのは、静止した手だった。それは固く握られており、当たったらとんでもなく痛いんだろうな、と思わせるようなものだった。それが、眼前に。目の前も目の前の、ピントが合うか、合わないか、の境界くらいにあったのだ。思わず、顔を背けた。少しでも、拳から、距離が取れるように、と。
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