せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

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会議と雑談2

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 八束はくるくるとシャーペンを回し始めたが、急に、ピタリ、と動きを止める。

「あ、」
「どうした?」

 俺が聞くと、八束はメモに書いてあるミケの文字をぐりぐりと囲みはじめた。

「お前が影井に話せないのってこいつの妨害って線もあるんじゃね?」
「あー」
「なるほど、影井様をより孤立させる為に……」
「って言うか、こいつの可能性の方が高いんじゃね?」

 八束はつんつんとミケの2文字をつついた。

「イレギュラーってことは、多分、柏岡みたいに、この世界から逸脱した存在なんだろうし、影井に関わったところで、世界に関わることにはならねーんじゃねぇの?」
「いや、イレギュラーという職業は、世界から逸脱はしてないみたいだよ」
「はぁ?!どういうことだよ!」
「どういうことだって聞かれても……そう書いてあるんだから、それ以上説明のしようがないよ……」
「じゃあ、イレギュラーって何がイレギュラーなんだ?」

 イレギュラーの所を星の形で囲いながら、八束は尋ねる。

「俺の推測だけど、この世界の未来は既に決まっている。その中に影井は含まれているんだけど、彼だけが決まった未来とは違った風に動くことが出来る。こういうことなんじゃないかな?」
「なる、ほど?分かったような分からないような。つまり、影井に話せないのはミケの所為じゃない可能性もあるってことか」
「そうだね」

 八束は黙ってだらり、と椅子にもたれかかった。
 それから、ふぅーと長く息を吐く。

「めんどくせー!考えれば考えるほど謎が増えるじゃねえか!!」
「別にいいんじゃない?今どうしても解決しなきゃいけない訳じゃないんだし」
「まあ?それもそうか」

 アンジェラさんが俺たちの飲み終えた瓶やティーカップを持つ。

「必要であれば、私が皆様にカゲイ様の職業について話してまいりますが」
「いえ、それはいいです。何が起こるか分からないので……。無理をすると最悪口封じのために、殺される……なんてことになりかねませんしね」
「お前もな、柏岡」

 そんな心配そうな顔しなくても、無茶はしないって。そもそも俺、困難とか試練とか大好きな主人公キャラとはかけ離れてるし。寧ろ、そんなのは出来るだけ避けて通りたいし。ってそれが普通か。

「っていうか、アンジェラさん俺のベッド用意してくれたんだ。ありがとう」

 言われて見ると確かに増えていたベッドに八束は思い切り寝転がる。これ、アンジェラさんが運んだのか?
 ……運んだらしい。凄いな……。

「いえ、メイドとして当然のことをしたまでです」

 軽く頭を下げるアンジェラさんの腕は細い。あの腕のどこからベッドを運ぶ力が出ているのか。
 まあ俺が倒れそうになった時、支えてくれたぐらいだからな。相当な力持ちなんだろう。

「そう言えば、契約で増えた能力ってなんだった?」

 俺も八束の隣のベッドに寝転がる。

「そんなのお前の能力で見りゃわかるだろ」
「覗き見されてるみたいで気分良くないんじゃない?」
「いや、別に」

 八束は、全く気にしてないどころか、説明する方が面倒くさい。とでも言いたげな顔をした。

「じゃあ見るけど……」

 俺は意識を集中させ、八束の方を見る。すると、大量の文字が現れた。
 ……どうも戦闘能力が上がるようなスキルが多いようだ。つまり、俺には戦う才能がない、ということなんだろう。まあ、戦闘能力があった所で世界に干渉出来ないなら、あまり意味がないと思うけど。

「契約してから八束の感じる変化とかってないの?」

 これだけスキルが変わっているなら、何かが変わっていても可笑しくない。

「あー、言わてみたら少し体が軽くなったかも」
「ちょっとその辺殴ってみてよ」
「こうか?」

 ドスッ!!!

 ものすごい速さで壁に殴りかかった。壁にはヒビが入っている。

「「……」」

 俺の頬に汗が流れるのがわかる。きっと八束も同じように冷や汗をかいていることだろう。

「す、すいませんでした。アンジェラさん」

 八束は誠意からなのか、ベッドの上で土下座している。俺も同じように頭を下げておく。
 アンジェラさんははぁ、とため息をついて、こちらを向いた。

「気にしないでください。そのうち直しておきますから」

 ベッドを運んだ時と同じように俺達がいない間に直しておくつもりなのだろう。
 幸いにも、穴が空いている訳では無いから、一晩過ごす分には問題なさそうだしな。

「謝るついでに頼みたいことがあるんだが」

 八束は顔を上げる。

「なんですか?」

 アンジェラさんも壁のヒビから目を外す。

「なんかこう、頭の中の映像を他の人にも見えるようにする機械的なものってないか?」
「ありますよ」
「あるのかよ。ご都合主義だな、おい」
「本来は夢を共有するための機械なんですよ」
「あー、なるほど。夢も確かに脳内の映像だな」

 八束は納得したように頷く。
 しかし、その機械、もしかして俺に使わせようとしているのか?
 その場合、普通、俺に許可とか取るもんじゃないの?それを勝手に……まあいいけど。

「いつぐらいまでに用意できそう?」
「いつかは正確には言えませんが……。できるだけ早く手配しましょう」
「ありがとう。出来るだけ早くな」

 アンジェラさんは恭しく頭を下げた。
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