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お見舞いという名の討伐勧誘2
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「部屋にいないと思ったら、八束くんもここに居たんだね」
「あー、もしかして俺の部屋行ったのか。それは、悪かったな」
かってないほどニコニコとしている八束。これは完全に作り笑いだ。
それに気付かない神谷は気にしないで、と笑った。こちらは心からの笑みだ。爽やかな笑い。流石イケメン。
白井さんは恐る恐るお茶を飲み、隣に座る中禅寺さんにねぇねぇ、これ美味しいよ。と話しかけている。
三芳はキョロキョロと辺りを見回しており、姫様はアンジェラさんの方をじっと見つめていた。
何この状況……。
とりあえず落ち着く為にも、飲み残っていたお茶を飲む。うん、美味しい。
「ところで、なんでここに来たんだ?」
八束が切り込んでくれた。助かった八束。ナイス八束。
「何故って……、柏岡くんのお見舞いに」
白井さんが、それ以外に何かあるの?というような表情をした。
「それ以外になにか目的があるんだろ?」
八束の言葉にえ?と首を傾げるルイーザ姫と白井さん。
え?お見舞い以外に目的があったのか……分からなかった。そしてこの二人は把握していなかった、と。
「分かってんなら話が早ぇ」
三芳がニヤリと笑う。八束や神谷程ではないが、イケメンなので、その顔がまた似合う。なんて言うんだろう?こう、ワイルド系イケメン?多分。
「君達に聞きたいことがあるんだ」
口を真一文字に結んでいた神谷は覚悟を決めたように口を開いた。
「世界を救う気はあるかい?」
「ない」
即答した。八束が。
いや、まあ俺達は魔物討伐しないって決めたばかりだから、断るのはいいんだけど。話ぐらいは聞いた方が良かったのでは……?
然し、話したかったこと、というのはこの事か……。じゃあこれから始まるのは熱心な勧誘かな?どれだけ誘われても魔物討伐はしないけど。
「この世界の人々が、苦しんでるんだよ?それを放置しておいて、本当にいいと思うのかい?」
即答され、しばらく唖然としていた神谷だが、いつの間にか立ち直ったのか語りかけるように話す。
「そ、そうね。困っている人がいたら助けるのが大切だと思う」
白井さんも重ねるように言う。
「心配しなくても大丈夫だ。危険がないように俺達が助けてやるし」
三芳がぐっと拳を握り締めた。
中禅寺さんの表情は読めないが、いつもよりは柔らかいように見える。
そんな四人を見て、ルイーザ姫は肩を震わせた。
「あー、盛り上がってるところ悪いが、俺達戦闘スキル持ってないんだ」
この一言であたりは静まりかえった。
「それは確かに討伐には参加しない方がいいわね……」
中禅寺さんがぽつりと呟く。
「いや、皆で協力し、助け合えばきっと……!」
「それに、こいつ、妙なスキル持ってるんだよな……」
力説しようとする神谷を遮るように八束は俺を指さす。
まさか、あのスキルのこと言うのか?あのスキルのことを言うってことは、つまりは俺の職業に関しても説明することになる訳で、神谷たちは本当に信頼できるのか……?と思ったが八束は安心しろと言うようにニカッと笑う。
八束がこう笑うってことは任せておけば大丈夫なんだろう。知らず知らず入っていた肩の力を抜く。
「妙なスキル……とは?」
誰かが、ゴクリと息を飲んだ音が聞こえた気がした。
「柏岡が何かをしようとすると必ず不幸なことが起こる」
「「「「え?」」」」
「え?」
思わず、驚いた声が漏れてしまった。皆から不審そうな顔で見られた為、慌てて曖昧な笑みを浮かべておく。
なんだその呪いみたいなのは。いや、でも本当にスキル〝不幸〟というのがあるらしい。
でもなんかもうちょっといいのあっただろう……と思わなくはない。
場が混乱している中、またも八束が言葉を重ねる。
「ほら、鑑定石使って能力調べてるときも、柏岡、倒れただろ?あれはスキルの所為だったんだ」
なんだってー!?衝撃の事実だった。
しかし、周囲はそれで納得しているようで、なるほど……などという声が聞こえてくる。……本当にそれで納得していいのか?
「そういうことなら、仕方がないね。なんというか、辛いこと掘り出したみたいでごめんね……」
なんか謝られた。
別に本当の事ではないし、仮に本当にそんなスキルを待っていたとしても、聞かれたぐらいでは何とも思わないんじゃないかなあ。親族の亡くなった話でもあるまいし。つまり謝られても、ピンとこない。
そんな事は言えないので、適当に、曖昧に、微笑んでおく。
ずっと神谷といるとこの笑いが顔に張り付いてしまうのではないか、という不安が過った。
まあ、神谷とずっといることはないだろう。俺よりも八束が持たないと思う。終始作り笑いだったし。
「じゃあ、俺達はこれで……」
神谷ほそういって部屋を出た。じゃあなと三芳が片手を上げ、白井さんがにこりと微笑み手を振る。中禅寺さんはぺこりと一礼した。
最後に姫が……。
「いろいろと申し訳ありませんでした」
と深くお辞儀をして、退出する。その様子をアンジェラさんは驚いたように見ていた。
「あー、もしかして俺の部屋行ったのか。それは、悪かったな」
かってないほどニコニコとしている八束。これは完全に作り笑いだ。
それに気付かない神谷は気にしないで、と笑った。こちらは心からの笑みだ。爽やかな笑い。流石イケメン。
白井さんは恐る恐るお茶を飲み、隣に座る中禅寺さんにねぇねぇ、これ美味しいよ。と話しかけている。
三芳はキョロキョロと辺りを見回しており、姫様はアンジェラさんの方をじっと見つめていた。
何この状況……。
とりあえず落ち着く為にも、飲み残っていたお茶を飲む。うん、美味しい。
「ところで、なんでここに来たんだ?」
八束が切り込んでくれた。助かった八束。ナイス八束。
「何故って……、柏岡くんのお見舞いに」
白井さんが、それ以外に何かあるの?というような表情をした。
「それ以外になにか目的があるんだろ?」
八束の言葉にえ?と首を傾げるルイーザ姫と白井さん。
え?お見舞い以外に目的があったのか……分からなかった。そしてこの二人は把握していなかった、と。
「分かってんなら話が早ぇ」
三芳がニヤリと笑う。八束や神谷程ではないが、イケメンなので、その顔がまた似合う。なんて言うんだろう?こう、ワイルド系イケメン?多分。
「君達に聞きたいことがあるんだ」
口を真一文字に結んでいた神谷は覚悟を決めたように口を開いた。
「世界を救う気はあるかい?」
「ない」
即答した。八束が。
いや、まあ俺達は魔物討伐しないって決めたばかりだから、断るのはいいんだけど。話ぐらいは聞いた方が良かったのでは……?
然し、話したかったこと、というのはこの事か……。じゃあこれから始まるのは熱心な勧誘かな?どれだけ誘われても魔物討伐はしないけど。
「この世界の人々が、苦しんでるんだよ?それを放置しておいて、本当にいいと思うのかい?」
即答され、しばらく唖然としていた神谷だが、いつの間にか立ち直ったのか語りかけるように話す。
「そ、そうね。困っている人がいたら助けるのが大切だと思う」
白井さんも重ねるように言う。
「心配しなくても大丈夫だ。危険がないように俺達が助けてやるし」
三芳がぐっと拳を握り締めた。
中禅寺さんの表情は読めないが、いつもよりは柔らかいように見える。
そんな四人を見て、ルイーザ姫は肩を震わせた。
「あー、盛り上がってるところ悪いが、俺達戦闘スキル持ってないんだ」
この一言であたりは静まりかえった。
「それは確かに討伐には参加しない方がいいわね……」
中禅寺さんがぽつりと呟く。
「いや、皆で協力し、助け合えばきっと……!」
「それに、こいつ、妙なスキル持ってるんだよな……」
力説しようとする神谷を遮るように八束は俺を指さす。
まさか、あのスキルのこと言うのか?あのスキルのことを言うってことは、つまりは俺の職業に関しても説明することになる訳で、神谷たちは本当に信頼できるのか……?と思ったが八束は安心しろと言うようにニカッと笑う。
八束がこう笑うってことは任せておけば大丈夫なんだろう。知らず知らず入っていた肩の力を抜く。
「妙なスキル……とは?」
誰かが、ゴクリと息を飲んだ音が聞こえた気がした。
「柏岡が何かをしようとすると必ず不幸なことが起こる」
「「「「え?」」」」
「え?」
思わず、驚いた声が漏れてしまった。皆から不審そうな顔で見られた為、慌てて曖昧な笑みを浮かべておく。
なんだその呪いみたいなのは。いや、でも本当にスキル〝不幸〟というのがあるらしい。
でもなんかもうちょっといいのあっただろう……と思わなくはない。
場が混乱している中、またも八束が言葉を重ねる。
「ほら、鑑定石使って能力調べてるときも、柏岡、倒れただろ?あれはスキルの所為だったんだ」
なんだってー!?衝撃の事実だった。
しかし、周囲はそれで納得しているようで、なるほど……などという声が聞こえてくる。……本当にそれで納得していいのか?
「そういうことなら、仕方がないね。なんというか、辛いこと掘り出したみたいでごめんね……」
なんか謝られた。
別に本当の事ではないし、仮に本当にそんなスキルを待っていたとしても、聞かれたぐらいでは何とも思わないんじゃないかなあ。親族の亡くなった話でもあるまいし。つまり謝られても、ピンとこない。
そんな事は言えないので、適当に、曖昧に、微笑んでおく。
ずっと神谷といるとこの笑いが顔に張り付いてしまうのではないか、という不安が過った。
まあ、神谷とずっといることはないだろう。俺よりも八束が持たないと思う。終始作り笑いだったし。
「じゃあ、俺達はこれで……」
神谷ほそういって部屋を出た。じゃあなと三芳が片手を上げ、白井さんがにこりと微笑み手を振る。中禅寺さんはぺこりと一礼した。
最後に姫が……。
「いろいろと申し訳ありませんでした」
と深くお辞儀をして、退出する。その様子をアンジェラさんは驚いたように見ていた。
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