せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

文字の大きさ
上 下
14 / 116

見知らぬ天井2

しおりを挟む
「では動かしますね」
 ギギギ……。
 油のさしていない機械を動かした時のような音を上げながら、ゆっくりとベットの角度が変わる。まるで病院のベッドのようだ。
 丁度いい角度になるとベッドは停止した。
 このベッドは魔力を注ぐと、角度を変えることが出来るようだ。
 騎士やら姫やらが出てきたから、てっきり中世ぐらいの発展度合なのかと思っていたが、そうでもないらしい。

「凄い……ですね」
「勇者様たちを泊める部屋ですからね。最新鋭、最高級の設備が備えられているのですよ」
 アンジェラさんは誇らしげにふっと微笑む。

「飲み物を用意いたしましょうか?」
 聞かれて気が付く。喉がカラカラだ。
「そうですね、お願いします」

 どこからか運んできたのか、ワゴンの傍まで行くアンジェラさん。
 そのワゴンの上にはティーカップやらティーポットやらお洒落なものが並んでいた。
 本格的だ。流石中世。

「コーヒーとお茶どちらがよろしいでしょうか?」
 飲み物の名称は元の世界と同じなのか。
 いや、翻訳機能が勝手に似たような単語を見つけ出してくれただけかもしれない。
 お茶って紅茶のことだよな……?まさか緑茶が出てくるとは思えない。
 うーん。

「コーヒーでお願いします」
 日和った。
 いやだって、変な味のお茶が出てきたら嫌だもの。
 その点コーヒーなら、きっとそんなに変わらないだろう。
 たまたま俺たちの世界にあるコーヒーと同じ名前だったが、実はまったく違うものだった。ということでなければ。
 その可能性もなくはないが、まあ、そうだったら運が悪かったと思うしかない。

 アンジェラさんは、台のようなものの上に、口が細長くなっているヤカンのようなものを置く。
 台のようなものに手を触れると、またもや魔力を込めた。ぼうっと火がつく。
 あの台みたいなのはコンロのような役割を果たすらしい。
 それから、あれなんて言うんだろう、ええと、ドリッパー?に紙を敷き、コーヒーの粉をスプーンで入れ始めた。
 テレビで少しだけ見た事がある。
 インスタントじゃない本格的なコーヒーの入れ方に、似てる……気がする。
 粉の色はピンクとかオレンジとかではなく、普通に焦げ茶っぽい。
 やはり、この世界のコーヒーも元の世界のコーヒーも同じものなんじゃないか?

 もう少し観察してみる。
 ヤカン?を持ち上げ、ドリッパー?にお湯を注ぎはじめた。回しながら入れる様は……おお……!これよくテレビとかで見るやつだ。

「砂糖とミルクはお付けしますか?」
「いえ、なしでお願いします」
 畏まりました。とカップに注がれる液体は、予想通り真っ黒だ。
 いや、まだ、まだ油断してはならない。油断した時に、

「どうぞ」
 手渡した彼女の表情は自信に溢れているように見える。
 どうやら俺の挙動不審な様子を見て、コーヒーが苦手だけど、大人ぶってコーヒーを飲もうとしている。と受け取ってしまったらしい。
 然し、そんなコーヒーが苦手(実際は苦手ではない)な俺でも私のコーヒーなら飲めるぞ、と彼女は思っているようだ。
 別にコーヒー自体は特に苦手ではない。まあ好きでもないから徹夜する時に飲む程度なんだけど、大人ぶって飲めないものを飲もうとしている、と思われるのは極めて心外だ。心外だけども説明するのは面倒くさいので放置。

 それよりも、匂いは……?
 別に異臭がする、とかそんなことはない。寧ろいい香りだ。
 ゴクリ、と唾を飲み込んだ後、手に持ったカップを傾けた。

 ……美味しい。
 これは良い意味でいつも飲んでるコーヒーとは別物だ。思ったよりも苦味が少なく、仄かな甘みが口のなかに広がる。コーヒーがフルーティとかいう奴は舌がおかしいのかと思っていたが、そんなことは無かった。なるほど、確かにフルーティだ。

 アンジェラは俺が飲む様子を見て、満足そうに頷くと口を開いた。

「それでは、カシオカ様が倒られた後のことを説明させていただきます」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜

ばふぉりん
ファンタジー
 こんなスキルあったらなぁ〜?  あれ?このスキルって・・・えい〜できた  スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。  いいの?

同級生の女の子を交通事故から庇って異世界転生したけどその子と会えるようです

砂糖流
ファンタジー
俺は楽しみにしていることがあった。 それはある人と話すことだ。 「おはよう、優翔くん」 「おはよう、涼香さん」 「もしかして昨日も夜更かししてたの? 目の下クマができてるよ?」 「昨日ちょっと寝れなくてさ」 「何かあったら私に相談してね?」 「うん、絶対する」 この時間がずっと続けばいいと思った。 だけどそれが続くことはなかった。 ある日、学校の行き道で彼女を見つける。 見ていると横からトラックが走ってくる。 俺はそれを見た瞬間に走り出した。 大切な人を守れるなら後悔などない。 神から貰った『コピー』のスキルでたくさんの人を救う物語。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...