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見知らぬ天井2
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「では動かしますね」
ギギギ……。
油のさしていない機械を動かした時のような音を上げながら、ゆっくりとベットの角度が変わる。まるで病院のベッドのようだ。
丁度いい角度になるとベッドは停止した。
このベッドは魔力を注ぐと、角度を変えることが出来るようだ。
騎士やら姫やらが出てきたから、てっきり中世ぐらいの発展度合なのかと思っていたが、そうでもないらしい。
「凄い……ですね」
「勇者様たちを泊める部屋ですからね。最新鋭、最高級の設備が備えられているのですよ」
アンジェラさんは誇らしげにふっと微笑む。
「飲み物を用意いたしましょうか?」
聞かれて気が付く。喉がカラカラだ。
「そうですね、お願いします」
どこからか運んできたのか、ワゴンの傍まで行くアンジェラさん。
そのワゴンの上にはティーカップやらティーポットやらお洒落なものが並んでいた。
本格的だ。流石中世。
「コーヒーとお茶どちらがよろしいでしょうか?」
飲み物の名称は元の世界と同じなのか。
いや、翻訳機能が勝手に似たような単語を見つけ出してくれただけかもしれない。
お茶って紅茶のことだよな……?まさか緑茶が出てくるとは思えない。
うーん。
「コーヒーでお願いします」
日和った。
いやだって、変な味のお茶が出てきたら嫌だもの。
その点コーヒーなら、きっとそんなに変わらないだろう。
たまたま俺たちの世界にあるコーヒーと同じ名前だったが、実はまったく違うものだった。ということでなければ。
その可能性もなくはないが、まあ、そうだったら運が悪かったと思うしかない。
アンジェラさんは、台のようなものの上に、口が細長くなっているヤカンのようなものを置く。
台のようなものに手を触れると、またもや魔力を込めた。ぼうっと火がつく。
あの台みたいなのはコンロのような役割を果たすらしい。
それから、あれなんて言うんだろう、ええと、ドリッパー?に紙を敷き、コーヒーの粉をスプーンで入れ始めた。
テレビで少しだけ見た事がある。
インスタントじゃない本格的なコーヒーの入れ方に、似てる……気がする。
粉の色はピンクとかオレンジとかではなく、普通に焦げ茶っぽい。
やはり、この世界のコーヒーも元の世界のコーヒーも同じものなんじゃないか?
もう少し観察してみる。
ヤカン?を持ち上げ、ドリッパー?にお湯を注ぎはじめた。回しながら入れる様は……おお……!これよくテレビとかで見るやつだ。
「砂糖とミルクはお付けしますか?」
「いえ、なしでお願いします」
畏まりました。とカップに注がれる液体は、予想通り真っ黒だ。
いや、まだ、まだ油断してはならない。油断した時に、
「どうぞ」
手渡した彼女の表情は自信に溢れているように見える。
どうやら俺の挙動不審な様子を見て、コーヒーが苦手だけど、大人ぶってコーヒーを飲もうとしている。と受け取ってしまったらしい。
然し、そんなコーヒーが苦手(実際は苦手ではない)な俺でも私のコーヒーなら飲めるぞ、と彼女は思っているようだ。
別にコーヒー自体は特に苦手ではない。まあ好きでもないから徹夜する時に飲む程度なんだけど、大人ぶって飲めないものを飲もうとしている、と思われるのは極めて心外だ。心外だけども説明するのは面倒くさいので放置。
それよりも、匂いは……?
別に異臭がする、とかそんなことはない。寧ろいい香りだ。
ゴクリ、と唾を飲み込んだ後、手に持ったカップを傾けた。
……美味しい。
これは良い意味でいつも飲んでるコーヒーとは別物だ。思ったよりも苦味が少なく、仄かな甘みが口のなかに広がる。コーヒーがフルーティとかいう奴は舌がおかしいのかと思っていたが、そんなことは無かった。なるほど、確かにフルーティだ。
アンジェラは俺が飲む様子を見て、満足そうに頷くと口を開いた。
「それでは、カシオカ様が倒られた後のことを説明させていただきます」
ギギギ……。
油のさしていない機械を動かした時のような音を上げながら、ゆっくりとベットの角度が変わる。まるで病院のベッドのようだ。
丁度いい角度になるとベッドは停止した。
このベッドは魔力を注ぐと、角度を変えることが出来るようだ。
騎士やら姫やらが出てきたから、てっきり中世ぐらいの発展度合なのかと思っていたが、そうでもないらしい。
「凄い……ですね」
「勇者様たちを泊める部屋ですからね。最新鋭、最高級の設備が備えられているのですよ」
アンジェラさんは誇らしげにふっと微笑む。
「飲み物を用意いたしましょうか?」
聞かれて気が付く。喉がカラカラだ。
「そうですね、お願いします」
どこからか運んできたのか、ワゴンの傍まで行くアンジェラさん。
そのワゴンの上にはティーカップやらティーポットやらお洒落なものが並んでいた。
本格的だ。流石中世。
「コーヒーとお茶どちらがよろしいでしょうか?」
飲み物の名称は元の世界と同じなのか。
いや、翻訳機能が勝手に似たような単語を見つけ出してくれただけかもしれない。
お茶って紅茶のことだよな……?まさか緑茶が出てくるとは思えない。
うーん。
「コーヒーでお願いします」
日和った。
いやだって、変な味のお茶が出てきたら嫌だもの。
その点コーヒーなら、きっとそんなに変わらないだろう。
たまたま俺たちの世界にあるコーヒーと同じ名前だったが、実はまったく違うものだった。ということでなければ。
その可能性もなくはないが、まあ、そうだったら運が悪かったと思うしかない。
アンジェラさんは、台のようなものの上に、口が細長くなっているヤカンのようなものを置く。
台のようなものに手を触れると、またもや魔力を込めた。ぼうっと火がつく。
あの台みたいなのはコンロのような役割を果たすらしい。
それから、あれなんて言うんだろう、ええと、ドリッパー?に紙を敷き、コーヒーの粉をスプーンで入れ始めた。
テレビで少しだけ見た事がある。
インスタントじゃない本格的なコーヒーの入れ方に、似てる……気がする。
粉の色はピンクとかオレンジとかではなく、普通に焦げ茶っぽい。
やはり、この世界のコーヒーも元の世界のコーヒーも同じものなんじゃないか?
もう少し観察してみる。
ヤカン?を持ち上げ、ドリッパー?にお湯を注ぎはじめた。回しながら入れる様は……おお……!これよくテレビとかで見るやつだ。
「砂糖とミルクはお付けしますか?」
「いえ、なしでお願いします」
畏まりました。とカップに注がれる液体は、予想通り真っ黒だ。
いや、まだ、まだ油断してはならない。油断した時に、
「どうぞ」
手渡した彼女の表情は自信に溢れているように見える。
どうやら俺の挙動不審な様子を見て、コーヒーが苦手だけど、大人ぶってコーヒーを飲もうとしている。と受け取ってしまったらしい。
然し、そんなコーヒーが苦手(実際は苦手ではない)な俺でも私のコーヒーなら飲めるぞ、と彼女は思っているようだ。
別にコーヒー自体は特に苦手ではない。まあ好きでもないから徹夜する時に飲む程度なんだけど、大人ぶって飲めないものを飲もうとしている、と思われるのは極めて心外だ。心外だけども説明するのは面倒くさいので放置。
それよりも、匂いは……?
別に異臭がする、とかそんなことはない。寧ろいい香りだ。
ゴクリ、と唾を飲み込んだ後、手に持ったカップを傾けた。
……美味しい。
これは良い意味でいつも飲んでるコーヒーとは別物だ。思ったよりも苦味が少なく、仄かな甘みが口のなかに広がる。コーヒーがフルーティとかいう奴は舌がおかしいのかと思っていたが、そんなことは無かった。なるほど、確かにフルーティだ。
アンジェラは俺が飲む様子を見て、満足そうに頷くと口を開いた。
「それでは、カシオカ様が倒られた後のことを説明させていただきます」
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