上 下
385 / 392
番外編

決着 7

しおりを挟む
'

「アルファルドはちゃんと領地民の事を考えて、税収を抑えて、自分達の生活を犠牲にしてでも、領地を守ってた」
「……」
「それって、誰にでもできることじゃない。私は……、自分の都合で、大切な人達を切り捨てた。結果的に自分の我儘を通して、今ここにいる。でも、アルファルドは違うよね」
「……」
「贅沢も我儘も言わないで、自分の身体を傷つけてまで、冒険者としてお金を稼いで……ずっとずっと、領地の人達の為に尽くしてた」
「――それは……俺のせいで、領民が苦しむ事になったからだ」
「だからだよ。それこそが、国の頂点に立つ人間の資質だと私は思ってる。自分のせいで領地が荒れ果てても当たり前のように贅沢して、高い税を取り立てて平気で領地民を餓死させてる奴なんてごまんといるよ?」
「――っ」

 膝の上に座ったままにこりと微笑む私に、アルファルドのオッドアイがどんどん潤んでる。

「アルファルドはすごく良い王様になるよ! 私はそんな風にできないから。私はアルファルドの隣に立って、お前の為に動いてお前を支える事。それが私の役割なんだ! だから、私をもっと利用してくれて構わない」
「……」
「言っただろう? ……英雄とまで呼ばれたこの俺を、唯一動かせるのはお前しかいないんだ。頼り過ぎなんかじゃない。俺をもっと有効的に使えよ。俺は、お前の為ならなんでもする」
「…ミ、ラ……」
「お前はどんと構えてればいいんだ。俺はアルファルドの為に何かできることが嬉しいし、お前の役に立てることが俺にとっての幸せなんだからさっ!」

 アルファルドの唇に触れるだけの軽いキスをして、またアルファルドに向かってニコっと笑った。
 わかってくれたかな……?
 自分のこと、情けないとか思わないでほしいんだ。
 アルファルドは私が見てきた中で、誰よりも立派な人だから。そんな事で引け目を感じないでほしい……

「はぁぁ……」

 アルファルドがぎゅうっと私の身体を抱き寄せて、長ぁ~いため息を吐いてる。

「どーした?」
「…ミラ」

 ちょうど私の肩辺りに、アルファルドは自分の顔を置いて、擦り付けるみたいに頭を振って腕に力を込めてる。
 
「…俺も、お前を愛してる。…いや、言葉では、俺のすべてを表し切れない……。これほど誰かを求め、愛おしいと思ったことはないっ。…お前がいてくれたから、俺はここまでこれた。お前の期待を裏切らないよう……、これからも最善を尽くそう……」

「うんっ!」

 ゆらゆら揺れる馬車の中。
 アルファルドは私を強く抱きしめてくれて……
 私はアルファルドの力強い腕の感触に幸せを感じながら帰路に着いた。
 
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

処理中です...