上 下
378 / 392
番外編

新学園生活 7

しおりを挟む
'

「…俺も、一緒に行くッ」

 黙って話を聞いてたアルファルドが、さらに私の腰を引いて抱き寄せた。

「あ、アルファルド?一緒にって……」
「…お前と、離れたくないっ。…また俺を、置いていくつもりかっ?」
「ちょ、やっ、そういうわけじゃ……」

 言葉も言い終わらないまま、アルファルドは抱き寄せた腕に力を込めてる。

「…最近のお前は不在が多すぎる! 俺のことなんかどうでもいいのかっ?!」

 怒って言ってるはずなのに、言われてることは明らかに「仕事と私、どっちが大事なの!?」的なニュアンス。

「――ッ!」

 感情的になって顔を上げたアルファルドは、綺麗なオッドアイをうるうるさせて切実に訴えてきてる。 

「そんな訳ないだろ? お前より大事なものなんて俺にはない」

 膝の上に乗ったままサラりとしたすべすべの頬に両手を添えて、アルファルドを至近距離で見下ろした。

「…本当か?」
「当たり前だろ!? 不安にさせてごめんな……。俺が悪かった」
「…アトリクス……」

 私の言葉に落ち着きを取り戻したのか、アルファルドの不安そうにしてた顔に笑顔が戻って、私に向かって嬉しそうに口角上げて笑いかけてくれる。

「~~っ!!」

 かッ、かわゆいぃぃっっ~~!!
 なに?! なんなのっ!? もうッアルファルドってば、あざとすぎだよッ!!
 素でやってるんだろうけど、めちゃくちゃキュンとしちゃった!
 見てるだけで鼻血出そうなくらい、ものスゴいイケメンなのに、たまにこうやって拗ねてみせるのがたまんなく心をくすぐられちゃうよぉッ!!
 アルファルドの笑顔にやられた私は、真っ赤な顔しながらぷるぷる震えてる。

「「「キャ~~!!」」」

 けど、周りから悲鳴に似た黄色い声が響いて、その声でハッと我に返った。

 あっぶな……
 ヤバい……、ここが講堂だってこと忘れて、この場でアルファルド押し倒すとこだった……

 取り繕うように咳払いして、気を取り直して話を続ける。

「うん。まぁ……お前の気持ちは良くわかった。風属性のリリーもいるし、今度はアルファルドも一緒に行こうぜっ」
「…本当か?」
「あぁ。多少スピードは落ちるけど、一日もあれば着くだろう」

 ニコッと笑った私に、アルファルドが背中に手を回してぎゅっと抱きついてきた。

「…絶対だぞッ」
 
 っ!そんなに一緒に行きたかったんだ……
 確かにここ最近、出掛けるって言うと「…また行くのか」って、いつも悲しそうな顔して見送ってくれてたからなぁ。
 でもアルファルド連れて行くわけに行かなかったから、断腸の思いで屋敷から出てってた。
 
 やばいな……、アルファルドが可愛すぎるッ! こういうトコ見ると、ゲームのアルファルド思い出すよ。
 ガリガリで、寂しがり屋で、傷つきやすくて、誰かに愛して欲しくて堪らなかったアルファルド。
 
 私の胸元にピタッと抱きついて、幸せそうな顔してるアルファルド見てるとすごく愛しい気持ちが溢れてくる。

「貴方がたが羨ましいわ。わたくしもこれだけ想われてみたいですわ……」

 私達のやり取りを黙って見てたリリーが、しみじみ呟いてる。
 アルファルドに抱きしめられたまま、顔だけリリーの方を向いた。

「あ、悪ぃな。……てことで、三人で行く予定だから」
「えぇ、わかりましたわ。しかし、どうやって三人で移動しますの?」
「ん? うーん……、とりあえずアルファルドを背中に乗せて、リリーは俺が抱えて移動するのが一番妥当かなぁ?」
「――それは、かなり無理があるのではなくて……」

 リリーはかなり不安そうに……、いや胡散臭そうに私を見てる。
 アルファルドはまだべったりくっついてて、いつの間にか登校してきたオクタンとアンカも興味深そうにこっちを見てた。

「大丈夫大丈夫。実証済みだから安心しろ。なんとかなるって」
「……えぇ。お手柔らかに頼みますわ」

 まだリリーの表情は晴れないけど、一応了解は得たからね。

「ハハッ、俺を信じろって!」
 
 リリーがこの後コバット王国へ向かう道中で、絶叫しながら私に当たり散らすのは言うまでもなかった。

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

処理中です...