上 下
372 / 392
番外編

断罪 3

しおりを挟む


 集まり出した周りの生徒達もざわめきだして、ヒソヒソと信じられないような声が聞こえだしてる。
 レグルス様も一気に顔色が悪くなって、立ったまま冷や汗流して拳を握りしめてる。

「さぁ、皇子様……。どう説明してくれる? ここまで十分な証拠を見せつけても、まだお前は違うと言い切れるのか?」

 腕組んで仁王立してる私を、レグルス様は苦虫を噛み潰したような顔して見てる。

「……っ! ……これは、君が、捏造したものかもしれないっ!」
「ハァ………、あんたってけっこう往生際が悪いのな? そんなことが可能だと思うか? どうやってこの映像を捏造するんだ? やってみろよ」
「……ぅッ!」

 呆れたような表情でレグルス様を問い詰めると、レグルス様は言葉に詰まってる様子。
 そんなのできるわけない。
 映像石はその場の景色を記憶することはできても、映像を創り出すことなんて絶対に出来ないから!
 いくら上手い言い訳がないからって、あまりに無茶なこと言われて、私も心底呆れちゃったよ。

「アルファルドの再三の抗議を無視し、執拗に付きまとうお前の婚約者は、俺を欺いた上に自作自演し、罪のないアルファルドを貶めようと嘘まで付いたっ! ……この責任、どうしてくれるッ!!」
「……くッ!」

 計画が上手くいかなかったレグルス様は、どうしようか頭の中で必死で考えてる感じ。
 焦りが見えてて、明らかに動揺してる。
 
「何が……、望みだ。アトリクス……」
「ハッ、望みだぁ!? まずは謝罪しろよ!! それが道理ってもんだろうがッ!!」

 二人を睨みつけて激しく激高してる私に、レグルス様は相当悔しそうにポラリスと共に頭を下げてきてる。

「……も……申し訳、なかった……大公、シリウス名誉教授……」
「大公様……、大変……申し訳、ございません、でした……」

 帝王学を学んだレグルス様が、これだけの公衆面前で非を認めて謝るのなんて、ものすごく屈辱的なことだと思う。
 でもさ、形だけの謝罪なんてどうでもいいんだ。
 こんな生温い言葉だけじゃ、私の気が収まらないからっ!!

「なぁ、聖女様よ……、お前はなぜあんな嘘をついた? アルファルドはあんなにはっきり付いて来るなと言っていた。聞こえなかったでは済まされないぞっ!」

 レグルス様の隣で真っ青な顔して俯いてたポラリスは、一瞬だけチラッとレグルス様の方を見て、またすぐ俯いてた。

「ぁ……、そ、それは……おそらく、私の……聞き間違え……かと……」
「は? 聞き間違え? お前、皇太子の婚約者だろ? 将来帝国の皇后になろうって奴が、こんな重大な場面で聞き間違えでしたなんて言い訳が通るとでも思っているのかッ?!」
「ッ! っ、あ、……ぅ……、その……」

 私の予想だと、これはレグルス様単独の仕業じゃないのかな。ポラリスに何か吹き込んで、三文芝居をさせた。
 私とアルファルドを陥れて、広まりすぎた大公家の名声を落としたかったのか知らないけど、やることが雑で計画の立て方が甘すぎだよッ!

「いいか、皇子様。俺はこいつに危害を加える奴がこの世で一番許せないっ!! 今の俺は、お前より地位も立場も上だ。その俺をここまで怒らせた罪、どう償ってくれるッ!」
「ぐっ……! ここは……、アカデミアだ……。君も言ってただろう。アカデミアで身分や地位は関係はないと……」
「先に皇太子の名を盾にしたお前が、今さら何をほざいてる! これは大公家を相手取った、皇室の宣戦布告と受け取るぞっ!!」
「「――っ!!」」

 ビシッと言い放って、さらに二人に追い打ちをかけてやった。
 野次馬もみんなシーンとして固唾を飲んで見守ってる。こんなに人が沢山のいるのに、話す言葉一つ聞こえないくらい静まり返ってる。

「殿下っ!」

 そこでルリオン様が血相を変えてレンガ道から走ってきた。
 遅れてやってきたルリオン様は、何がなんだかわからないって顔してる。

「この騒ぎは…、どうされたのですか?!」

 ルリオン様がこう言ってるってことは……、この茶番はレグルス様が勝手に考えたことみたいだね。
 ま、誰が考えてようと私には関係はないけど。

「おい、側近。お前のあるじは判断を誤った。それがどういうことを意味するか……身を持って思い知るがいいッ」
「……っ! なんのことだっ?! レグルス殿下、一体……、何があったと言うのですか!?」

 立ったまま拳を握りしめて悔しそうに俯いてるレグルス様に、ルリオン様が焦ったように理由を問い詰めてる。

「行こうぜ、アルファルド」
「…あぁ」

 私とアルファルドは大衆が注目する中、その場を離れた。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

契約結婚!一発逆転マニュアル♡

伊吹美香
恋愛
『愛妻家になりたい男』と『今の状況から抜け出したい女』が利害一致の契約結婚⁉ 全てを失い現実の中で藻掻く女 緒方 依舞稀(24) ✖ なんとしてでも愛妻家にならねばならない男 桐ケ谷 遥翔(30) 『一発逆転』と『打算』のために 二人の契約結婚生活が始まる……。

きみは運命の人

佐倉 蘭
恋愛
青山 智史は上司で従兄でもある魚住 和哉から奇妙なサイト【あなたの運命の人に逢わせてあげます】を紹介される。 和哉はこのサイトのお陰で、再会できた初恋の相手と結婚に漕ぎ着けたと言う。 あまりにも怪しすぎて、にわかには信じられない。 「和哉さん、幸せすぎて頭沸いてます?」 そう言う智史に、和哉が言った。 「うっせえよ。……智史、おまえもやってみな?」 ※「偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎」のExtra Story【番外編】です。また、「あなたの運命の人に逢わせてあげます」「お見合いだけど、恋することからはじめよう」のネタバレも含みます。 ※「きみは運命の人」の後は特別編「しあわせな朝【Bonus Track】」へと続きます。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...