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番外編
レグルス視点 2
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ある日、突然…ドラコニス公爵家の借金が帳消しになった。それどころか、莫大な財産が舞い込む出来事が起きた。
原因は前代未聞のポーション製造。
これについても調べたが、どうやらアトリクスが関わっていた。
「リオ…、これはどういう事だい?」
「申し訳ございません…殿下。やはりアトリクスは野放しにしてはいけない人物ですね」
皇宮の一室で、リオ…、ルリオンと共に話していた。リオもアトリクスには一目置いており、警戒と共に勧誘もしていた。
だが…私同様、アトリクスは靡かなかった。
彼の目にはアルしか見えていない。
おそらく、友情ではないのだろうな。それは二人の親密さからしてわかっていた。
アルが男色に走ろうが、私の気にする所ではないが…これも結局は弱味になる。
だからあえて放置していた。
たとえ結ばれたとしても、アトリクスとの仲を知れば世間はまた大いに批判する。
アルは変わらず、私の引き立て役となってくれる…。
心の中でアルの失態を喜び、ほくそ笑んでいた。
私は聖女と名高いポラリスと婚約し、帝国の皇太子としての名声を着実に高めていった。
一方アルはポーション事業で盛り返して来たとはいえ、平民であるアトリクスと共に行動している。
どこまでも救いようのない、愚かで馬鹿な男だ。
私のように知名度の高い、高位貴族のパートナーを見つければ、まだ名誉も立場も少しは回復出来ただろうに…。
よりによって平民の男を選ぶなんて、アルらしいよ。
もっと二人の仲が深まってから、アトリクスをこちら側に引き入れれば、アルはどんな反応をするかな?
皇太子である私に、出来ないことはない。
本来なら進んで私の元へ来て欲しかったが…、本人の意思なんて必要ない。平民のアトリクスを私の手に入れる事など、造作もない事だ。
そんな中、帝国に異変が起こる。
魔界王なる者の存在。
皇室内も騒然としていた。
すぐに対策本部が立ち上げられ、魔界王の呪いにかけられたというシリウス卿を筆頭に物事が進んでいった。
私は正直、この人が苦手だった。
まずシリウス卿は無言で威圧してくる。喋らずとも立っているだけで、周りの空気を緊張感のあるものへと変えてしまう。
皇太子の私としては、非常にやりにくい相手だった。立場上では、私の方が上だが…、SS級冒険者であるシリウス卿にそれは関係ない。
シリウス卿は父である皇帝に対しても、私に対しても…さほど態度は変わらない。
私は皇帝である父に、あそこまで反抗的な態度をして許された人間を見たことがなかった。
そういった意味で、私はシリウス卿を認めていた。
野蛮な冒険者など粗暴で鈍才だと決めつけていた私だが…、シリウス卿の指示は的確だった。
さり気なく筆談で渡される指示の紙を見る度に、この人はかなり頭の切れる人だと感じていた。
カストル叔父上がシリウス卿に入れ込んでいる理由が、この時初めて理解できた。
ただ気に入らない事は、シリウス卿はそれとなくアルを庇っているという事だ。
これは諜報機関からも報告が上がっていた。前々からドラコニス公爵家に食材を送り、アルの生活を助けていることを…。
知っていたが…シリウス卿を敵に回す事が得策ではないと考えた為、ずっと黙認しながら放置していた。
本来ならば刑に値する行為だ。
私はシリウス卿をわざと持ち上げ、対魔界王戦の最高責任者へと指名した。
こうすればシリウス卿はこの大役から逃れられない。卿は見かけによらず民衆の命を尊び、見捨てることの出来ない情の深い人物だ。
魔界王と戦って殉職でもしてくれるといい。
ついでに、最近地位を取り戻しつつあるアルも、この戦いで秘密裏に亡き者にすればいい…。
不要な者達を排除できる事に安心感を抱き、リオと共に計画を進めていった。
現皇帝である父は、皇宮に魔物が現れてから徐々に身体が弱っていった。
あの偉大で高圧的だった父は見る間に痩せ細り、次第に身体が動かなくなり、気づけば床に伏せるようになってしまった。
婚約者であるポラリスに、光魔法での回復を願ったが…効果的な結果は得られなかった。
『お役に立てず…申し訳ございませんっ…、レグルス様…』
「いや、ポラリス…君は十分やってくれたよ。君のせいじゃない…」
ベッドで寝たまま、光魔法でも回復しない父にポラリスは傍らに座りながら落胆していた。
ポラリスの肩を抱き励ましながら、世代交代の時が近づいていることを思い、自分の思い描いていた計画が早まってきた事を感じていた。
この時までは───。
迎えた魔界王戦はまだ順調だった。
作戦の最高責任者であるシリウス卿の活躍は予想以上に凄かったが、私達も前線に立ちフォローしながら戦っていた。
ポラリスの活躍も予想以上に上手く行き、これで問題なく民衆の指示は得られたと思っていた。
だが、予想外の事態が起きた。魔界王の次に突如として現れた天使の存在だ。
先の魔界王戦で魔力を使い果たした騎士団の者達が、次々と離脱していく。
私の作戦も裏目に出るようになり、冷静さを欠いたリオが撤退しろなどと言い出した。
危機的状況の中、どうにか物事を修正したが…私が不利になる状況は続いていた。
この天使に光属性の聖剣は効かず、戦局が次第に最悪な方へと流れていく。
私自身、天使にやられ負傷した。
気絶している間に、アルがシリウス卿と共に戦っていた。
そして、ここで一番驚いた事は…、シリウス卿がアトリクスだった、という事実だ!
そのアトリクスはさらに驚異的な未知の魔法で天使までも倒してしまった。
帝国に平和が訪れた事に安堵を覚えたが、私の計画は軌道修正を余儀なくされた。
スタンピードの英雄、帝国の救世主、未知の魔法、民衆からの絶大な指示…加えてアトリクスは天才児だ。
いつでも手に入れられるからと放置していたが、それが間違いだった。
アルは何も努力することなく、それら全てを手入れてしまったんだっ…。
世の中は平和になったが、私の心の平穏は崩れていった。
だが…、アトリクスは男だ。
たとえ二人が恋仲でも…婚姻関係になることも、子孫を残すこともできないじゃないか。
そう思うことでどうにか自分を納得させたが…療養を終え、改めて皇宮に現れたアトリクスを見て、私はさらなる衝撃に襲われる。
ア、アトリクスがっ…、女性ッ…?!
アトリクスがシリウス卿だった事も驚いたが、そのアトリクスが魔界王の呪いで性別を変えられていた事にさらなる驚きを受けた。
私はてっきり、アトリクスがシリウス卿だと諭られない為に、変装していただけかと思っていたが…。
シリウス卿の呪いとは男に変えられた事だった。
確かに、女性が男性になるなど…常識では考えられない。
アトリクスは只者ではないと思っていたが、予想以上にとんでもない人物だった。
ポラリスが聖女として認められ、先の戦いで知名度も上がったが、世界を救ったアトリクスの名声にはとてもじゃないが敵わなかった。
アトリクスは私との婚約話も即座に断っていた。私との婚約など、普通の令嬢ならば誰もが願う事なのだがっ…。
今さらアトリクスの心を手に入れる事は不可能に近い。
アトリクスはアルに心を奪われ、あの様子ではおそらくアルの為ならば何でもする。
アルだけを秘密裏に消そうとしたが、それも危険だと判断した。
帝国一の実力者であるシリウス卿が側に付いているのならば、こちら側が反対に消されてしまう可能性が高い。しかもアトリクスは頭も切れる。完全にお手上げ状態だ。
かくなる上は…。
私は可愛い婚約者を呼び出した。
ある日、突然…ドラコニス公爵家の借金が帳消しになった。それどころか、莫大な財産が舞い込む出来事が起きた。
原因は前代未聞のポーション製造。
これについても調べたが、どうやらアトリクスが関わっていた。
「リオ…、これはどういう事だい?」
「申し訳ございません…殿下。やはりアトリクスは野放しにしてはいけない人物ですね」
皇宮の一室で、リオ…、ルリオンと共に話していた。リオもアトリクスには一目置いており、警戒と共に勧誘もしていた。
だが…私同様、アトリクスは靡かなかった。
彼の目にはアルしか見えていない。
おそらく、友情ではないのだろうな。それは二人の親密さからしてわかっていた。
アルが男色に走ろうが、私の気にする所ではないが…これも結局は弱味になる。
だからあえて放置していた。
たとえ結ばれたとしても、アトリクスとの仲を知れば世間はまた大いに批判する。
アルは変わらず、私の引き立て役となってくれる…。
心の中でアルの失態を喜び、ほくそ笑んでいた。
私は聖女と名高いポラリスと婚約し、帝国の皇太子としての名声を着実に高めていった。
一方アルはポーション事業で盛り返して来たとはいえ、平民であるアトリクスと共に行動している。
どこまでも救いようのない、愚かで馬鹿な男だ。
私のように知名度の高い、高位貴族のパートナーを見つければ、まだ名誉も立場も少しは回復出来ただろうに…。
よりによって平民の男を選ぶなんて、アルらしいよ。
もっと二人の仲が深まってから、アトリクスをこちら側に引き入れれば、アルはどんな反応をするかな?
皇太子である私に、出来ないことはない。
本来なら進んで私の元へ来て欲しかったが…、本人の意思なんて必要ない。平民のアトリクスを私の手に入れる事など、造作もない事だ。
そんな中、帝国に異変が起こる。
魔界王なる者の存在。
皇室内も騒然としていた。
すぐに対策本部が立ち上げられ、魔界王の呪いにかけられたというシリウス卿を筆頭に物事が進んでいった。
私は正直、この人が苦手だった。
まずシリウス卿は無言で威圧してくる。喋らずとも立っているだけで、周りの空気を緊張感のあるものへと変えてしまう。
皇太子の私としては、非常にやりにくい相手だった。立場上では、私の方が上だが…、SS級冒険者であるシリウス卿にそれは関係ない。
シリウス卿は父である皇帝に対しても、私に対しても…さほど態度は変わらない。
私は皇帝である父に、あそこまで反抗的な態度をして許された人間を見たことがなかった。
そういった意味で、私はシリウス卿を認めていた。
野蛮な冒険者など粗暴で鈍才だと決めつけていた私だが…、シリウス卿の指示は的確だった。
さり気なく筆談で渡される指示の紙を見る度に、この人はかなり頭の切れる人だと感じていた。
カストル叔父上がシリウス卿に入れ込んでいる理由が、この時初めて理解できた。
ただ気に入らない事は、シリウス卿はそれとなくアルを庇っているという事だ。
これは諜報機関からも報告が上がっていた。前々からドラコニス公爵家に食材を送り、アルの生活を助けていることを…。
知っていたが…シリウス卿を敵に回す事が得策ではないと考えた為、ずっと黙認しながら放置していた。
本来ならば刑に値する行為だ。
私はシリウス卿をわざと持ち上げ、対魔界王戦の最高責任者へと指名した。
こうすればシリウス卿はこの大役から逃れられない。卿は見かけによらず民衆の命を尊び、見捨てることの出来ない情の深い人物だ。
魔界王と戦って殉職でもしてくれるといい。
ついでに、最近地位を取り戻しつつあるアルも、この戦いで秘密裏に亡き者にすればいい…。
不要な者達を排除できる事に安心感を抱き、リオと共に計画を進めていった。
現皇帝である父は、皇宮に魔物が現れてから徐々に身体が弱っていった。
あの偉大で高圧的だった父は見る間に痩せ細り、次第に身体が動かなくなり、気づけば床に伏せるようになってしまった。
婚約者であるポラリスに、光魔法での回復を願ったが…効果的な結果は得られなかった。
『お役に立てず…申し訳ございませんっ…、レグルス様…』
「いや、ポラリス…君は十分やってくれたよ。君のせいじゃない…」
ベッドで寝たまま、光魔法でも回復しない父にポラリスは傍らに座りながら落胆していた。
ポラリスの肩を抱き励ましながら、世代交代の時が近づいていることを思い、自分の思い描いていた計画が早まってきた事を感じていた。
この時までは───。
迎えた魔界王戦はまだ順調だった。
作戦の最高責任者であるシリウス卿の活躍は予想以上に凄かったが、私達も前線に立ちフォローしながら戦っていた。
ポラリスの活躍も予想以上に上手く行き、これで問題なく民衆の指示は得られたと思っていた。
だが、予想外の事態が起きた。魔界王の次に突如として現れた天使の存在だ。
先の魔界王戦で魔力を使い果たした騎士団の者達が、次々と離脱していく。
私の作戦も裏目に出るようになり、冷静さを欠いたリオが撤退しろなどと言い出した。
危機的状況の中、どうにか物事を修正したが…私が不利になる状況は続いていた。
この天使に光属性の聖剣は効かず、戦局が次第に最悪な方へと流れていく。
私自身、天使にやられ負傷した。
気絶している間に、アルがシリウス卿と共に戦っていた。
そして、ここで一番驚いた事は…、シリウス卿がアトリクスだった、という事実だ!
そのアトリクスはさらに驚異的な未知の魔法で天使までも倒してしまった。
帝国に平和が訪れた事に安堵を覚えたが、私の計画は軌道修正を余儀なくされた。
スタンピードの英雄、帝国の救世主、未知の魔法、民衆からの絶大な指示…加えてアトリクスは天才児だ。
いつでも手に入れられるからと放置していたが、それが間違いだった。
アルは何も努力することなく、それら全てを手入れてしまったんだっ…。
世の中は平和になったが、私の心の平穏は崩れていった。
だが…、アトリクスは男だ。
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そう思うことでどうにか自分を納得させたが…療養を終え、改めて皇宮に現れたアトリクスを見て、私はさらなる衝撃に襲われる。
ア、アトリクスがっ…、女性ッ…?!
アトリクスがシリウス卿だった事も驚いたが、そのアトリクスが魔界王の呪いで性別を変えられていた事にさらなる驚きを受けた。
私はてっきり、アトリクスがシリウス卿だと諭られない為に、変装していただけかと思っていたが…。
シリウス卿の呪いとは男に変えられた事だった。
確かに、女性が男性になるなど…常識では考えられない。
アトリクスは只者ではないと思っていたが、予想以上にとんでもない人物だった。
ポラリスが聖女として認められ、先の戦いで知名度も上がったが、世界を救ったアトリクスの名声にはとてもじゃないが敵わなかった。
アトリクスは私との婚約話も即座に断っていた。私との婚約など、普通の令嬢ならば誰もが願う事なのだがっ…。
今さらアトリクスの心を手に入れる事は不可能に近い。
アトリクスはアルに心を奪われ、あの様子ではおそらくアルの為ならば何でもする。
アルだけを秘密裏に消そうとしたが、それも危険だと判断した。
帝国一の実力者であるシリウス卿が側に付いているのならば、こちら側が反対に消されてしまう可能性が高い。しかもアトリクスは頭も切れる。完全にお手上げ状態だ。
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