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番外編
新学園生活 5
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「アトリクス君っ」
その日の帰り道。
廊下を抜けて庭園へと続く回廊を歩いてたら、後ろから急に呼び止められた。
「なんだ?」
立ち止まって振り返ると、そこにはアケルナーとリゲルがいた。
うわっ……、よりによってこの2人。
なんか、ヤな予感がする。
アケルナーは意気揚々と歩いて来てるのに、隣のリゲルはどっちかっていうと嫌そうな感じ。
「アトリクス君、あなたにお願いがあります。どうか僕を、大公家の騎士団に入団させて下さいっ!」
「………はあ?」
アケルナーは至って真剣に話してるだけど、私は予想もしない発言に思わず疑問の声が漏れちゃったよ。
「おいっ、アケルナー! お前本気で言ってるのか?!」
一緒に着いてきたリゲルの方が意外と冷静で、アケルナーを止めてる感じだった。
「僕は本気です。アトリクス君の元でぜひ、魔力操作や剣技を学びたいんです。皇宮の魔法騎士団など、どうでもいいです!」
「お前なぁ、言葉に気を付けろよっ!」
アケルナーの胸ぐらを掴んで説得してるけど、アケルナーは私の方をずっと見てて、ちょっと……いや、かなり怖い。
「お願いいたします、アトリクス君。僕の実力はあなたもご存知のはずです。入団しても、決して君を失望させるような真似はしません!」
回廊の少し離れた場所でお互い話してるのに、なんだか熱気と圧がすごい。
いやぁー……、無理。
まず、怖いし。目がギラギラしてるし。アケルナーの貪欲な強さに対する姿勢が真剣過ぎて……やっぱりイヤだ。
「ハァ……、却下だな。俺は、欲しいヤツは自分で声をかけてる。お前に声がかからないってのは、そういうことだ」
「なっ……!」
私はさ、もっとアットホームにしたいんだよ。
ほんわかしながら、やる時はやる! みたいな感じでさ……
アケルナーだとずっと気を張って、戦場の第一線で活躍してますっ! って感じ。
その必死さが他の人の気まで張り詰めさせそうで嫌なんだよね。
「悪いが、諦めろ」
「なぜです!? 理由をお聞かせ下さいっ」
アケルナーは拳を握りしめて、腕組んで断った私を睨むように見て、食ってかかってる。
アケルナーからしたら、自分以上に実力の高い人間なんて、アカデミアにはいないって思ってるんだよね。自分の実力に対する自信が滲み出てるもん。
「まずお前は余裕がない。自分のことばかりで、周りを気遣うこともできてない。自分の強さしか求めていないやつに、誰かを救うことなんてできるか?」
「――っ!」
「騎士団てのは個人戦じゃないんだ。強さだけが全てじゃない。だったらまだ、リゲルの方がマシだ。お前はもう少し自分を見つめ直せ。それから出直して来い……」
すっぱり諦めてほしいから、ズバッと言わせてもらった。変に期待持たせると絶対面倒になるからね。
くるっと後ろ向いてまた正門へと向かおうとしたのに、ここで今度はリゲルが呼び止めてきた。
「おいっ、平民っ! あ、いや……、アトリクスっ!」
「あ? なんだ」
珍しくリゲルが私のこと、名前で呼んでる。
「確かにアケルナーは強い奴にしか目がないし、単体行動するし、言っても全然聞かない時もあるけどっ!」
え……? なんなの?
それって肯定してるだけで、全くフォローになってないんだけど。
「こいつだってちゃんと俺のこと考えて、危ない時とかは突っ走らないで助けてくれるんだっ! こいつのこと何もわかってないクセに、わかったようなこと言うなっ!」
うーん、リゲルって怪しいんだよね……
男になってた私だからわかるけど、アケルナーに対して友情以上のものを感じてると思うんだ。私とアルファルドみたいにさ。
「へぇ……? そこまで言うなら、お前が一緒に志願しろよ。それができるなら考えてやってもいいぜ?」
「……はっ? な、なんで俺が!?」
リゲルが口開けたまま驚きに固まってる。
「アケルナーのことはお前が一番良くわかってるんだろ? だったら、お前がこいつの面倒見ろよ。じゃなきゃ中途半端な覚悟で、いちいち他人のことに口出しするなっ」
「ぐっ……!」
「それにリゲル。お前が大公家に従うのなら、俺やアルファルドを主と認めなければならない。お前にそれができるとは思えないがな……」
こんな美少女顔してるけど、リゲルは侯爵家の嫡男。跡取りなのはもちろんだけど、ここの侯爵家は皇室との繋がりも強い。ま、アケルナーの家門も皇室派だからね。
皇室との確執があるドラコニス大公家の騎士団に入るなら、相応の覚悟をしないといけないよね。
そんなリゲルが家門を取るか、アケルナーを取るか……
さぁ、どっちかな? 意地悪いってわかってるけど、こっちとしては勘弁してほしいし。
やっぱり私って悪役向きだよね。
「時間はまだある。よく考えろ」
「アトリクス君っ! リゲルが共に入団すれば、僕のことも――」
「勘違いするな。あくまで、考えるだけだ。お前らに選択権はない。決めるのは俺だ」
腕組んだまま睨んで、冷淡な視線を2人に向けた。
「「――っ!」」
冷や汗流しながら2人は私を見て動きを止めてる。
牽制も込めて殺気も纏わせておいたから、これで諦めるかな?
この2人ってミティスト本編だと、卒業後は皇室の魔法騎士団に入団するんだ。
私がイレギュラーに、大公家の騎士団結成するなんて言っちゃったからいけないんだよね。
「…アトリクスっ! …どうした?」
正門で待っててってアルファルドには言ってあったから。
私が遅いのを心配して、わざわざ迎えに来てくれたみたい。
リゲルとアケルナーを一瞥して、回廊を走って私の元に駆け寄って来てくれる。
「…何か、あったのか?」
訝しそうに近づいて、すかさず私の肩を抱き寄せてくれた。
そんな仕草にドキッとしちゃう。
庇ってもらってるのが擽ったくて嬉しくて、初めの頃に比べたらアルファルドも成長したなぁ、って感心するよ。
私をこんなふうに扱ってくれるのって、今はアルファルドしかいないから。
私もアルファルドの体に抱きついて、安心させるようにニコッと笑った。
「いや、問題ない。帰ろうぜっ」
「…本当か?」
「うん!」
立ち尽くしてる二人を後に、アルファルドと一緒に正門へと歩き出した。
「アトリクス君っ」
その日の帰り道。
廊下を抜けて庭園へと続く回廊を歩いてたら、後ろから急に呼び止められた。
「なんだ?」
立ち止まって振り返ると、そこにはアケルナーとリゲルがいた。
うわっ……、よりによってこの2人。
なんか、ヤな予感がする。
アケルナーは意気揚々と歩いて来てるのに、隣のリゲルはどっちかっていうと嫌そうな感じ。
「アトリクス君、あなたにお願いがあります。どうか僕を、大公家の騎士団に入団させて下さいっ!」
「………はあ?」
アケルナーは至って真剣に話してるだけど、私は予想もしない発言に思わず疑問の声が漏れちゃったよ。
「おいっ、アケルナー! お前本気で言ってるのか?!」
一緒に着いてきたリゲルの方が意外と冷静で、アケルナーを止めてる感じだった。
「僕は本気です。アトリクス君の元でぜひ、魔力操作や剣技を学びたいんです。皇宮の魔法騎士団など、どうでもいいです!」
「お前なぁ、言葉に気を付けろよっ!」
アケルナーの胸ぐらを掴んで説得してるけど、アケルナーは私の方をずっと見てて、ちょっと……いや、かなり怖い。
「お願いいたします、アトリクス君。僕の実力はあなたもご存知のはずです。入団しても、決して君を失望させるような真似はしません!」
回廊の少し離れた場所でお互い話してるのに、なんだか熱気と圧がすごい。
いやぁー……、無理。
まず、怖いし。目がギラギラしてるし。アケルナーの貪欲な強さに対する姿勢が真剣過ぎて……やっぱりイヤだ。
「ハァ……、却下だな。俺は、欲しいヤツは自分で声をかけてる。お前に声がかからないってのは、そういうことだ」
「なっ……!」
私はさ、もっとアットホームにしたいんだよ。
ほんわかしながら、やる時はやる! みたいな感じでさ……
アケルナーだとずっと気を張って、戦場の第一線で活躍してますっ! って感じ。
その必死さが他の人の気まで張り詰めさせそうで嫌なんだよね。
「悪いが、諦めろ」
「なぜです!? 理由をお聞かせ下さいっ」
アケルナーは拳を握りしめて、腕組んで断った私を睨むように見て、食ってかかってる。
アケルナーからしたら、自分以上に実力の高い人間なんて、アカデミアにはいないって思ってるんだよね。自分の実力に対する自信が滲み出てるもん。
「まずお前は余裕がない。自分のことばかりで、周りを気遣うこともできてない。自分の強さしか求めていないやつに、誰かを救うことなんてできるか?」
「――っ!」
「騎士団てのは個人戦じゃないんだ。強さだけが全てじゃない。だったらまだ、リゲルの方がマシだ。お前はもう少し自分を見つめ直せ。それから出直して来い……」
すっぱり諦めてほしいから、ズバッと言わせてもらった。変に期待持たせると絶対面倒になるからね。
くるっと後ろ向いてまた正門へと向かおうとしたのに、ここで今度はリゲルが呼び止めてきた。
「おいっ、平民っ! あ、いや……、アトリクスっ!」
「あ? なんだ」
珍しくリゲルが私のこと、名前で呼んでる。
「確かにアケルナーは強い奴にしか目がないし、単体行動するし、言っても全然聞かない時もあるけどっ!」
え……? なんなの?
それって肯定してるだけで、全くフォローになってないんだけど。
「こいつだってちゃんと俺のこと考えて、危ない時とかは突っ走らないで助けてくれるんだっ! こいつのこと何もわかってないクセに、わかったようなこと言うなっ!」
うーん、リゲルって怪しいんだよね……
男になってた私だからわかるけど、アケルナーに対して友情以上のものを感じてると思うんだ。私とアルファルドみたいにさ。
「へぇ……? そこまで言うなら、お前が一緒に志願しろよ。それができるなら考えてやってもいいぜ?」
「……はっ? な、なんで俺が!?」
リゲルが口開けたまま驚きに固まってる。
「アケルナーのことはお前が一番良くわかってるんだろ? だったら、お前がこいつの面倒見ろよ。じゃなきゃ中途半端な覚悟で、いちいち他人のことに口出しするなっ」
「ぐっ……!」
「それにリゲル。お前が大公家に従うのなら、俺やアルファルドを主と認めなければならない。お前にそれができるとは思えないがな……」
こんな美少女顔してるけど、リゲルは侯爵家の嫡男。跡取りなのはもちろんだけど、ここの侯爵家は皇室との繋がりも強い。ま、アケルナーの家門も皇室派だからね。
皇室との確執があるドラコニス大公家の騎士団に入るなら、相応の覚悟をしないといけないよね。
そんなリゲルが家門を取るか、アケルナーを取るか……
さぁ、どっちかな? 意地悪いってわかってるけど、こっちとしては勘弁してほしいし。
やっぱり私って悪役向きだよね。
「時間はまだある。よく考えろ」
「アトリクス君っ! リゲルが共に入団すれば、僕のことも――」
「勘違いするな。あくまで、考えるだけだ。お前らに選択権はない。決めるのは俺だ」
腕組んだまま睨んで、冷淡な視線を2人に向けた。
「「――っ!」」
冷や汗流しながら2人は私を見て動きを止めてる。
牽制も込めて殺気も纏わせておいたから、これで諦めるかな?
この2人ってミティスト本編だと、卒業後は皇室の魔法騎士団に入団するんだ。
私がイレギュラーに、大公家の騎士団結成するなんて言っちゃったからいけないんだよね。
「…アトリクスっ! …どうした?」
正門で待っててってアルファルドには言ってあったから。
私が遅いのを心配して、わざわざ迎えに来てくれたみたい。
リゲルとアケルナーを一瞥して、回廊を走って私の元に駆け寄って来てくれる。
「…何か、あったのか?」
訝しそうに近づいて、すかさず私の肩を抱き寄せてくれた。
そんな仕草にドキッとしちゃう。
庇ってもらってるのが擽ったくて嬉しくて、初めの頃に比べたらアルファルドも成長したなぁ、って感心するよ。
私をこんなふうに扱ってくれるのって、今はアルファルドしかいないから。
私もアルファルドの体に抱きついて、安心させるようにニコッと笑った。
「いや、問題ない。帰ろうぜっ」
「…本当か?」
「うん!」
立ち尽くしてる二人を後に、アルファルドと一緒に正門へと歩き出した。
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