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番外編
新学園生活 3
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あと少しで卒業かぁ……
色々あって卒業までの期間が短くなっちゃったけど、本来のゲームのエンディングとは全然違うものになっちゃったなぁ。
朝、アカデミアの庭園を眺めながら、回廊をアルファルドと二人で歩いてた。
色鮮やかな花が咲き始めて、季節は冬から春に変わってきてる。
「オクタンっ、おはよう!」
「あっ! んと、おはっ、おはよう……アート、君……」
講堂に入っていつもの後ろの席の方まで歩いて、一番に笑顔で挨拶するのはもちろんオクタン。
オクタンはまだ私が女になった事に慣れないのか、いつもよりアワアワして、顔が赤くなってて可愛い。
「お前さぁ、いい加減慣れろって」
「えと、んと……、う、うん……。でも、んとね……」
「ハァ……、まぁいいや。そういえば、後でお前の部屋行っていいか?」
「っ! えっ!?」
急に周りまでざわついてる。いちいち聞き耳を立てるのやめてほしいな。
「…アトリクスっ、お前……、どういうつもりだッ!」
他の人と話すことを許可してもらったのに、座ってたアルファルドが立ち上がって、また機嫌悪そうに話を割ってきた。
「どういうって……、俺とオクタンて同室だっただろ? まだ俺の荷物も置いてあるし。取りに行こうと思って」
特に疚しいことも何も無いから、普通に話してるんだけど、やっぱりアルファルドはすごく不機嫌そう。
「…同室」
「あぁ。一学年の時からオクタンとずっと一緒だったし、荷物取りに行くくらい別にいいだろ?」
「……」
「え? なに?」
「……」
アルファルドの機嫌はまだ治らない。私の隣に立ったまま、ショック受けてるみたいに口元を押さえてる。
今さらだと思うんだけどなぁ。
「…くそっ……! 無理にでも、寮生活にするべきだったか……」
なんだかアルファルドは俯きながらブツブツ言ってる。
「お、おはようございます。アトリクス君、オクタンス君」
ここで後ろから挨拶してきたのはアンカ。
アンカもだいぶ私達に慣れてきたのか、今だと近くの席に座って、こうして挨拶してくれる。
「おはようっ、アンカ」
「んと、おはよう……アンカ嬢」
「どうか……しましたか?」
「んー? あっ、そうだ。今日の実技演習だけど、またオクタンとアンカの2人にメインやってもらって、アルファルドは後方支援で、俺は後ろから指示出すからさ」
「「……え?」」
オクタンは座りながら、アンカも席に教材置いてて、二人して私見ながら声を揃えて疑問を投げかけてる。
「どーした?」
「んと、んと、アート君は……戦わ、ないの?」
「えぇ……、今のアトリクス君でしたら、むしろ私達はいらないのでは……」
あー……、そういうこと?
そりゃあ私が単体で戦っちゃえば、モンスター殲滅するのも早いと思うよ。
「ハハッ、何言ってんだよ。悪いけど、俺は手を出さないからな。ここでは生徒でもあるけどさ、一応教授でもある。基本的に教授は戦闘に参加しないから、よほどの危機的状況にならない限り戦うことはない」
二人の席の近くで立ったまま説明してたら、2人とも納得したように頷いてた。
「あ、んと、なるほど……」
「た、確かに……。今のアトリクス君は教授ですものね……」
校外実技演習もあと数える程しかない。
このチームで戦闘するのも、あと少しかー……
「なぁ、オクタンは卒業したら魔法師団に入るんだろ?」
「え……? んと、うん……。その、予定だよ?」
「アンカは?」
「えっ、私ですかっ? 私は、卒業後は……まだ決めてませんわ。おそらく、親の決めた男性と……結婚させられるのかと……」
アンカが立ったまま俯いて、言いづらそうに話してる。
うーん、あんまり乗り気じゃないのかな?
まぁそうだよね。
結局は政略結婚だし、家門の為に無理やり婚約させられて、嫁がされるのが普通なんだよね。
「二人さえ良かったらさ、大公家で騎士団作るからそれに入らないかっ!」
「「……えっ!?」」
また二人の驚きがハモってて面白かった。周りもまたどよめきが起きてて、凝視しながらさらに聞き耳を立てるし。
「まだ募集中なんだよ。俺が直接スカウトしてるから中々集まらなくてさぁ。二人だったら実力も気心も知れてるし、俺としては入団をお願いしたいんだけどっ」
「え! んとっ、た、大公家の、き、騎士団っ??」
「ほ、ほ、本気で、言ってますか!?」
「あぁ。もちろんっ」
「んと、んと! で、でも、僕、んと、魔法しか使えない、よ?!」
「同じく、私もですっ! しかも私、女ですが……」
二人の慌てようがまたシンクロしてて思わず笑っちゃう。
オクタンがまだアンカに告白してないのが勿体ないと思うよ。オクタンが奥手だからしょうがないんだけどさ。
あと少しで卒業かぁ……
色々あって卒業までの期間が短くなっちゃったけど、本来のゲームのエンディングとは全然違うものになっちゃったなぁ。
朝、アカデミアの庭園を眺めながら、回廊をアルファルドと二人で歩いてた。
色鮮やかな花が咲き始めて、季節は冬から春に変わってきてる。
「オクタンっ、おはよう!」
「あっ! んと、おはっ、おはよう……アート、君……」
講堂に入っていつもの後ろの席の方まで歩いて、一番に笑顔で挨拶するのはもちろんオクタン。
オクタンはまだ私が女になった事に慣れないのか、いつもよりアワアワして、顔が赤くなってて可愛い。
「お前さぁ、いい加減慣れろって」
「えと、んと……、う、うん……。でも、んとね……」
「ハァ……、まぁいいや。そういえば、後でお前の部屋行っていいか?」
「っ! えっ!?」
急に周りまでざわついてる。いちいち聞き耳を立てるのやめてほしいな。
「…アトリクスっ、お前……、どういうつもりだッ!」
他の人と話すことを許可してもらったのに、座ってたアルファルドが立ち上がって、また機嫌悪そうに話を割ってきた。
「どういうって……、俺とオクタンて同室だっただろ? まだ俺の荷物も置いてあるし。取りに行こうと思って」
特に疚しいことも何も無いから、普通に話してるんだけど、やっぱりアルファルドはすごく不機嫌そう。
「…同室」
「あぁ。一学年の時からオクタンとずっと一緒だったし、荷物取りに行くくらい別にいいだろ?」
「……」
「え? なに?」
「……」
アルファルドの機嫌はまだ治らない。私の隣に立ったまま、ショック受けてるみたいに口元を押さえてる。
今さらだと思うんだけどなぁ。
「…くそっ……! 無理にでも、寮生活にするべきだったか……」
なんだかアルファルドは俯きながらブツブツ言ってる。
「お、おはようございます。アトリクス君、オクタンス君」
ここで後ろから挨拶してきたのはアンカ。
アンカもだいぶ私達に慣れてきたのか、今だと近くの席に座って、こうして挨拶してくれる。
「おはようっ、アンカ」
「んと、おはよう……アンカ嬢」
「どうか……しましたか?」
「んー? あっ、そうだ。今日の実技演習だけど、またオクタンとアンカの2人にメインやってもらって、アルファルドは後方支援で、俺は後ろから指示出すからさ」
「「……え?」」
オクタンは座りながら、アンカも席に教材置いてて、二人して私見ながら声を揃えて疑問を投げかけてる。
「どーした?」
「んと、んと、アート君は……戦わ、ないの?」
「えぇ……、今のアトリクス君でしたら、むしろ私達はいらないのでは……」
あー……、そういうこと?
そりゃあ私が単体で戦っちゃえば、モンスター殲滅するのも早いと思うよ。
「ハハッ、何言ってんだよ。悪いけど、俺は手を出さないからな。ここでは生徒でもあるけどさ、一応教授でもある。基本的に教授は戦闘に参加しないから、よほどの危機的状況にならない限り戦うことはない」
二人の席の近くで立ったまま説明してたら、2人とも納得したように頷いてた。
「あ、んと、なるほど……」
「た、確かに……。今のアトリクス君は教授ですものね……」
校外実技演習もあと数える程しかない。
このチームで戦闘するのも、あと少しかー……
「なぁ、オクタンは卒業したら魔法師団に入るんだろ?」
「え……? んと、うん……。その、予定だよ?」
「アンカは?」
「えっ、私ですかっ? 私は、卒業後は……まだ決めてませんわ。おそらく、親の決めた男性と……結婚させられるのかと……」
アンカが立ったまま俯いて、言いづらそうに話してる。
うーん、あんまり乗り気じゃないのかな?
まぁそうだよね。
結局は政略結婚だし、家門の為に無理やり婚約させられて、嫁がされるのが普通なんだよね。
「二人さえ良かったらさ、大公家で騎士団作るからそれに入らないかっ!」
「「……えっ!?」」
また二人の驚きがハモってて面白かった。周りもまたどよめきが起きてて、凝視しながらさらに聞き耳を立てるし。
「まだ募集中なんだよ。俺が直接スカウトしてるから中々集まらなくてさぁ。二人だったら実力も気心も知れてるし、俺としては入団をお願いしたいんだけどっ」
「え! んとっ、た、大公家の、き、騎士団っ??」
「ほ、ほ、本気で、言ってますか!?」
「あぁ。もちろんっ」
「んと、んと! で、でも、僕、んと、魔法しか使えない、よ?!」
「同じく、私もですっ! しかも私、女ですが……」
二人の慌てようがまたシンクロしてて思わず笑っちゃう。
オクタンがまだアンカに告白してないのが勿体ないと思うよ。オクタンが奥手だからしょうがないんだけどさ。
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