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アルファルド編

アルファルド視点 12(魔界王復活)

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 また…アトリクスが学園に来なくなった…。

 オクタンスを問い詰めたが、自分にもわからないと言われた。

 その間に、俺に、訳の分からない奴が付きまといだした。
 隣国の王女だか知らないが、俺が欲しいのはアトリクスだけだ…!

 暗黒竜を倒した辺りまでは、アトリクスも俺を求めていたはずだったが…何も言わずに、居なくなってしまった…。
 日々、苛立ちを隠せないまま、虚しい学園生活を送っていた。

 アトリクスがいないと、世界が色褪せて、くすんで見える…。

 以前の俺に戻った気分だ…。
 
 あいつに…アトリクスに会いたくて仕方ない。
 会いたい…、あいつの笑った顔が見たい…、俺にだけ見せる、あの笑顔がたまらなく恋しい…。
 会って、思いきり抱きしめて…、思うまま、唇を奪いたい…。
 
『アルファルド様っ、お待ち下さいっ…』

 寄るなっ…!
 俺が求めているのは、お前じゃないっ! 
 
 アトリクス、アトリクス、アトリクスっ…。
  
 また俺の心の闇が…、仄暗い感情が、更に深まった…。
 
 ようやくアトリクスが戻ってきたが、どこか様子がおかしい。
 なぜか俺を避け、距離を空けようとしている。
 今まであれだけ触れ合っていて、頬を染め…取り憑かれたように、俺を見ていたのにだ…。
 
 どんどん俺の仄暗い感情が深く、濃くなる…。

 アトリクス…、お前は、お前だけは…、決して離さないっ…!
 お前は、俺のものだッ…!

 
 こいつは…、やはり俺から、離れようとしていた。

 アトリクスをどこへも逃さないよう…、俺は、自分の想いをアトリクスへぶつけ…、そこで初めてアトリクスの秘密を知る事となった。

 アトリクスが…、女……。
 しかも、俺を救う為に…。

 動揺と…、混乱と…、言葉にできない複雑な…、様々な思いが入り混じり…、言葉がなかなか出て来なかった…。
 
 ただ…アトリクスが男だろうが女だろうが…、俺の気持ちに何も変わりはない。 

 それだけは、確かだ…。
  
 女のアトリクスは、やけに積極的で…。
 俺を押し倒し、初めて…身体を重ねた。
 
 触れ合う熱い肌が、アトリクスの甘える声が、泣き顔が…全て愛しい…。

 こいつを、誰にも触らせたくない…。見せたくないっ…。

 俺の側にずっと置いて、俺だけを視界に映していないと気が済まないッ…。
 
 
 アトリクスと結ばれ、世間などどうでも良くなり始めた頃…。
 それと逆行するように、世界が終わりを迎えようとしていた。

 この頃、またアトリクスがあの教授の手伝いに借り出された。
 あの教授も、アトリクスが女だと知っていたっ…。
 アイツは…アトリクスを狙っている。

(アトリクスは、俺のだッ…!!)

 ダメだっ…、足りない。…鎖だけじゃ、足りない…、もっともっと、アトリクスを繋げる物がないと…!

 手枷だけじゃなく…、足枷も用意しよう…。
 檻や鳥籠に閉じ込めるのもいいな…。…あぁ、そうだ…。俺のモノだとわかるよう…首輪も必要だ…。

 俺の仄暗い闇が、またさらに深まる。
 底が見えない程、真っ暗に染まり出し…、いかにアトリクスを…、いや…ミラを、俺から逃げられないようにできるか……、それしか頭になかった…。
  
 
 この時、暗闇にいた俺が、正気を保てていたのは、他ならないシリウス卿のおかげだった。

 シリウス卿が呪われたのは、魔界王のせいだと知り、俺は納得した。
 これだけ人離れした実力を持った人物だからこそ、魔界王も危険だと思ったのだろう…。
 
 卿はやはり素晴らしかった。
 この人がいなければ、誰にもこの危機を察することなど出来なかっただろう…。
 俺が皇宮で糾弾されていた時にも、シリウス卿は怒り、助けてくれた。

 ミラの居ない心の隙間は、どうやっても埋まらないが…、シリウス卿の存在は、やはり俺の救いになっていた。





 そして、迎えた魔界王の降臨。

 シリウス卿の言った通り…、本当に黒い星が流れ出した。
 屋敷に居た俺は、しばらくその様子を見て考えていた。
 
 この世の終わりか…。
 そういえば、何故ミラは…俺が世界の終わりを望んでいると知っていたんだ…?

 一瞬…、このまま、屋敷にいようかとも考えた…。
 俺があんな奴らの為に、戦う義理も、必要もない…。

 自分の部屋の窓から流れる黒い星を見て、そう考えたが…、思い直した。
 
 この世界が無くなれば…、ミラに会えない…。
 あいつが今、どこにいるかわからないが…、もし、危険な目にあっていたら、俺が守ってやらないと…。
 あいつは、戦闘向きじゃないからな…。

 それに、シリウス卿も戦っている。
 卿の戦う姿を、この目で見る事ができるっ…。

『旦那様っ、本当に行くのかい!?危ないよっ!!』
『旦那様……、ご武運をお祈り致しております……』

 リタとベッテルには、決して屋敷から出るなと言った。
 ミラの残したアイテムが、どこまでのものかわからないが…、まさか、本当に役に立つ時が来るとは思わなかった。
 
 仕度を整え、屋敷を出たが…、すでに街中は大混乱だった。魔物で溢れ返り、人々が逃げ惑っていた。
 スタンピード同様、あちこちから悲鳴が飛び交い、貴族どもは我先にと馬車で逃げ出していた。

 ミラが、やっていたように…、俺も屋敷からポーションとハイポーションを持ち出し、魔物の襲撃に備えた。
 
 準備を整えた俺は、公爵家から混乱を見せる帝都へと、足を進めた…。




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