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アルファルド編

アルファルド視点 8(アウリガル帰還まで)

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 サークル活動に参加する一方、冒険者として働く機会が減り、また支払いが滞ると金貸しがうるさく催促に来た。
 
 本来なら、サークルなど無視して、冒険者活動をするべきなのだが…、何故か俺はサークル活動を優先していた。

「アルファルド、悪いっ。もう1回薬草の準備をしてくれるか?」

 こいつは飽きもせず、ずっとポーションを作り続けた。
 薬草を取っては作り、作ってはまた取り……。
 サークル活動の間、ずっとそれを繰り返している。

 ここまで必死に、ポーション作りをしている理由はわからないが、アトリクスの手伝いをする事は嫌じゃなかった。


 ──最近の俺は、おかしい…。


 こうして、アトリクスの近くにいると、なぜか無性に触れたくなる。
 こいつの笑顔を見ると…、胸の奥に、ひどい渇きを覚える。

 俺は一体、どうしてしまったんだ…?

 郊外実技演習の時も、アトリクスの活躍と言葉に、思わず後ろから抱きついてしまった。

 だがこいつも、俺が触れても嫌な顔一つしない。
 それどころか、嬉しそうに頬を染めている。

 この前、突然公爵家に現れた時も、俺をベッドへ押し倒していた。

 アトリクスが俺に触れても不快感はなく、寧ろ…、もっと…して欲しいとさえ思った。

 こいつは、男で…俺を友達だと言っている…。
 
 アトリクスが俺を見る時の目は、何と言うか…好意的だ。いや、違うな…他の表現が難しい。
 まるで取り憑かれたような…、憧れの類とは違う…また別のもの。

 熱が籠もったような…熱い眼差しを見ていると、また俺の心の奥が渇くような…、歯痒い…もどかしさを感じる。
 
 だが今は、この生温い感情を、不快感だとは感じなかった。

 これが何かわからないが、今はこいつの側にいるだけで、満足している。

 
 

 俺としては、思っていた学園生活とは、全く違う日々を送る中。

 ある日突然、アトリクスが講義に現れなくなった。

 1日、2日なら用事か具合が悪いのかと思ったが、4日、5日経っても姿を現さなかった。

 アトリクスといつも一緒にいる奴…オクタンスに問い詰めた。

「…おい、アトリクスはどうしたっ」

『えっ!あ、んと、んとっ…アート、君は…んと、エルナト教授の、手伝いに、行ってますっ…』

 エルナト、教授の手伝い?
 何故、平民のあいつが…?

 そういえば以前も、公爵家に泊まる時に…、その教授に怒られた話をしていた。

 講義も、郊外実技演習も…、それが当たり前だったはずだが…。
 アトリクスが居ないと、全てが上手く行かず…、どこか物足りない。

 攻撃も守りも、何もかもが揃わない。
 あいつの指示がないと、チームが機能しなかった。
 
『ねぇオクタンス君…、アトリクス君はまだ、帰って来ないんですか?』
『んと…、うん。結構かかるって、言ってたから…』

 アトリクスはまだ帰らない。
 すでに7日が経っていた。

 サークル活動は休止中だったが、ギルドに行かず、書庫で時間を潰していた。

 何故か、イライラする…。
 この苛立ちは、なんだ?
 何故、居ないはずのあいつの姿を…、どこまでも探してしまうんだ…。

 本を読んでいても、集中できていない。内容が全く入って来なかった。

 本を閉じて、アカデミアを出ようと正門まで向かった。

「よっ、アルファルドっ!」
 
 久しぶりに見るアトリクスの姿に、驚きを隠せなかった。
 
「帰ってすぐお前に会えてすげぇ嬉しい!」

 動揺している事を悟られないように、出来るだけ平静を装った。

 質の良さそうな異国の服を着ていると、こいつが平民には見えない。

「その…良かったら、使ってくれ。…いらなきゃ、売ってくれていいし…」

 俺に、土産…。
 いない間も、俺の事を忘れていなかったのか…。

 顔を赤く染め、俯いたアトリクスを見て…、また俺の体が勝手に動いた。
 
 人気のない場所で、アトリクスを抱きしめて、初めて気づいた…。


(あぁ…。俺は…、こいつに、会いたかったのか……)

  
 訳の分からない苛立ちが、いつの間にか消えて無くなっている。

 アトリクスも俺の体にしがみついていて…、俺の心が、何か温かいもので満たされるのを感じた。


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