356 / 392
アルファルド編
アルファルド視点 13(決戦後まで)
しおりを挟む
'
襲い来る魔物を倒しながら、徒歩で皇宮へと向かっていた。
馬にも乗れるが、もし途中でミラが居たら、見落としてしまうかもしれない。
あいつが無事か、心配でたまらない。
少し寄り道をして、小高い丘の上へ登った。ここなら、帝都を見渡せる。
あいつは戦闘向きではないが、頭は切れる。しかも、正義感も強い。自らを犠牲にして、無謀な事をしていないか……、心配が尽きない。
招集の事など忘れ、ミラを探す事に必死になっていた。
そんな俺の元に、突然……、シリウス卿が現れた。
「シリウス卿……?!」
驚きに上を見上げていた俺に、さらなる驚きが襲う。
シリウス卿が咄嗟に仮面を脱ぎ出した。卿は呪われていて、この黒衣の下は異形だと聞いている。
「よっ、逢いたかったぜ……アルファルド」
「――…」
ど……ういう……事、だ……?
ア…アトリクスが……、シリウス卿――?
混乱し過ぎて……、言葉が……、出ない。
頭が……、情報を……処理出来ない。
いや、現実を受け入れたく、ない……のか……?
どうして……、なぜ……、何故だっ……?
よりによって……、何故アトリクスが……、ミラが、シリウス卿だったんだ……!?
「……この戦いが終わったら……その時は、お前に全部話すよ……」
一人取り残された丘の上で、俺は……、力が抜けたように、地面に座り込んだ。
今、目の前で起こった事実が、衝撃的過ぎて……、それを、自分の中で処理するまで。しばらく……、いや、結構な時間…、そうして呆然としていた…。
駄目だ……
考え過ぎて……、吐き気がするっ。
頭が、理解することを、拒絶している。
あいつは……、今まで、ずっと、偽っていたのか……、実力を隠して……、学園に……何故だ?
なんのために……?
(――お前を、救いたかったから……)
ミラの言っていた言葉が突然浮かび……、俺はハッとする。
まさか……、これも……俺のため……か……?
あいつは、初めからずっと……俺に、つきまとっていた。
ずっと……俺の側にいて、俺に――
顔を上げ、巨大な化け物がそびえる皇宮を見る。
俺はようやく立ち上がり……、重い足を進めた。
また魔物を倒しながら、皇宮に向かう途中、あの巨大な化け物が真っ暗な空間へと消え……、その後、大歓声が響き渡った。
これが……シリウス卿の魔法……、そして実力っ…!
スゴいっ!!
この恐ろしい魔法の使い手が、本当に……ミラ、なのか……?!
あまりの驚異的な光景に、言葉を失い、思わず鳥肌が立つ。
今だに信じる事が出来ない俺は、シリウス卿を心の中で称賛していた。
だが次いで、天使が現れ…、これも敵だと、S級冒険者のベガが叫びながら皇宮へと向かっていった。
俺が、皇宮にたどり着いた時は、前線部隊は壊滅的になっていた。
叔父上や騎士団長たちは負傷し、レグルスやアカデミアの奴らも戦いながら次々離脱していった。
シリウス卿は何故か、立ち尽くしていて……、危険を感じた俺は、咄嗟に魔法を放った。
近づいたシリウス卿は無言だったが…、仮面の中から、微かに嗚咽が聞こえた。
やはりシリウス卿はミラなのか。
この時でも俺は、まだ信じられなかった。
だが、こいつはいつでも……俺の予想を覆し、遥かに上回る奇跡を起こす。
神々の力を思わせるほど強大で、圧倒的な魔法で天使を倒した。
周りの人間達が歓喜に沸き上がる中……、ミラがその場で倒れ、俺はすぐさま抱きとめた。
なぜか、女の姿に戻っている。
顔色が悪い……、汗も酷く、呼吸が異常なほど早い。俺も経験したからわかる。危険な状態だった。
俺は、急いで持参していたハイポーションを取り出し、口移しでミラへと飲ませた。
「んっ……」
すぐに様子を確認し、次第に顔色が戻ってきたことにホッとした。
だが、ミラはまだ目を覚まさない。
マントを掴み、ミラの体を包んだ。この大衆の中で、女になったこいつを、晒すわけにはいかない。
ミラを抱き抱えた俺は、急いでその場から離れようとしていたが、シリウス卿をどこへつれていくのかと、周りの連中はうるさく騒いでいた。
お前らに、ミラを渡すわけがないだろッ!
周りの静止も振り切り、近くにいた馬に乗り公爵家まで急いだ。
襲い来る魔物を倒しながら、徒歩で皇宮へと向かっていた。
馬にも乗れるが、もし途中でミラが居たら、見落としてしまうかもしれない。
あいつが無事か、心配でたまらない。
少し寄り道をして、小高い丘の上へ登った。ここなら、帝都を見渡せる。
あいつは戦闘向きではないが、頭は切れる。しかも、正義感も強い。自らを犠牲にして、無謀な事をしていないか……、心配が尽きない。
招集の事など忘れ、ミラを探す事に必死になっていた。
そんな俺の元に、突然……、シリウス卿が現れた。
「シリウス卿……?!」
驚きに上を見上げていた俺に、さらなる驚きが襲う。
シリウス卿が咄嗟に仮面を脱ぎ出した。卿は呪われていて、この黒衣の下は異形だと聞いている。
「よっ、逢いたかったぜ……アルファルド」
「――…」
ど……ういう……事、だ……?
ア…アトリクスが……、シリウス卿――?
混乱し過ぎて……、言葉が……、出ない。
頭が……、情報を……処理出来ない。
いや、現実を受け入れたく、ない……のか……?
どうして……、なぜ……、何故だっ……?
よりによって……、何故アトリクスが……、ミラが、シリウス卿だったんだ……!?
「……この戦いが終わったら……その時は、お前に全部話すよ……」
一人取り残された丘の上で、俺は……、力が抜けたように、地面に座り込んだ。
今、目の前で起こった事実が、衝撃的過ぎて……、それを、自分の中で処理するまで。しばらく……、いや、結構な時間…、そうして呆然としていた…。
駄目だ……
考え過ぎて……、吐き気がするっ。
頭が、理解することを、拒絶している。
あいつは……、今まで、ずっと、偽っていたのか……、実力を隠して……、学園に……何故だ?
なんのために……?
(――お前を、救いたかったから……)
ミラの言っていた言葉が突然浮かび……、俺はハッとする。
まさか……、これも……俺のため……か……?
あいつは、初めからずっと……俺に、つきまとっていた。
ずっと……俺の側にいて、俺に――
顔を上げ、巨大な化け物がそびえる皇宮を見る。
俺はようやく立ち上がり……、重い足を進めた。
また魔物を倒しながら、皇宮に向かう途中、あの巨大な化け物が真っ暗な空間へと消え……、その後、大歓声が響き渡った。
これが……シリウス卿の魔法……、そして実力っ…!
スゴいっ!!
この恐ろしい魔法の使い手が、本当に……ミラ、なのか……?!
あまりの驚異的な光景に、言葉を失い、思わず鳥肌が立つ。
今だに信じる事が出来ない俺は、シリウス卿を心の中で称賛していた。
だが次いで、天使が現れ…、これも敵だと、S級冒険者のベガが叫びながら皇宮へと向かっていった。
俺が、皇宮にたどり着いた時は、前線部隊は壊滅的になっていた。
叔父上や騎士団長たちは負傷し、レグルスやアカデミアの奴らも戦いながら次々離脱していった。
シリウス卿は何故か、立ち尽くしていて……、危険を感じた俺は、咄嗟に魔法を放った。
近づいたシリウス卿は無言だったが…、仮面の中から、微かに嗚咽が聞こえた。
やはりシリウス卿はミラなのか。
この時でも俺は、まだ信じられなかった。
だが、こいつはいつでも……俺の予想を覆し、遥かに上回る奇跡を起こす。
神々の力を思わせるほど強大で、圧倒的な魔法で天使を倒した。
周りの人間達が歓喜に沸き上がる中……、ミラがその場で倒れ、俺はすぐさま抱きとめた。
なぜか、女の姿に戻っている。
顔色が悪い……、汗も酷く、呼吸が異常なほど早い。俺も経験したからわかる。危険な状態だった。
俺は、急いで持参していたハイポーションを取り出し、口移しでミラへと飲ませた。
「んっ……」
すぐに様子を確認し、次第に顔色が戻ってきたことにホッとした。
だが、ミラはまだ目を覚まさない。
マントを掴み、ミラの体を包んだ。この大衆の中で、女になったこいつを、晒すわけにはいかない。
ミラを抱き抱えた俺は、急いでその場から離れようとしていたが、シリウス卿をどこへつれていくのかと、周りの連中はうるさく騒いでいた。
お前らに、ミラを渡すわけがないだろッ!
周りの静止も振り切り、近くにいた馬に乗り公爵家まで急いだ。
4
お気に入りに追加
323
あなたにおすすめの小説
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
契約結婚!一発逆転マニュアル♡
伊吹美香
恋愛
『愛妻家になりたい男』と『今の状況から抜け出したい女』が利害一致の契約結婚⁉
全てを失い現実の中で藻掻く女
緒方 依舞稀(24)
✖
なんとしてでも愛妻家にならねばならない男
桐ケ谷 遥翔(30)
『一発逆転』と『打算』のために
二人の契約結婚生活が始まる……。
きみは運命の人
佐倉 蘭
恋愛
青山 智史は上司で従兄でもある魚住 和哉から奇妙なサイト【あなたの運命の人に逢わせてあげます】を紹介される。
和哉はこのサイトのお陰で、再会できた初恋の相手と結婚に漕ぎ着けたと言う。
あまりにも怪しすぎて、にわかには信じられない。
「和哉さん、幸せすぎて頭沸いてます?」
そう言う智史に、和哉が言った。
「うっせえよ。……智史、おまえもやってみな?」
※「偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎」のExtra Story【番外編】です。また、「あなたの運命の人に逢わせてあげます」「お見合いだけど、恋することからはじめよう」のネタバレも含みます。
※「きみは運命の人」の後は特別編「しあわせな朝【Bonus Track】」へと続きます。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる