冬来りなば、春遠からじ ～親友になった悪役公爵が俺（私）に求愛してくるけど、どうしたらいい…？

超越者

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　意識が深く混濁してて…身体は辛くないのに……まだ、浅い場所まで浮上してこない。

　空に浮かんでいるように体がふわふわする。


　ううん、底の見えない地底に羽のようにゆっくりと落ちていく感じ…。


　目は閉じているのに、頭の中に映像のような景色が次々と浮かび上がってく。

　まただ…。

　幼い頃にも見たような…でもまた、全然違う…夢…？

　ホントに、遥か遠くに感じるほど淡く……薄れた、儚い記憶。
　


　元々の私は、星々の神に生み出された存在だった。
　
　長い長い戦いを悲しんだ神達が創り出したモノ。

　この惑星の混沌を鎮めるため、星の力を宿して生まれた【超越者】と呼ばれる存在。

　この力でその時に暴れて惑星をめちゃくちゃにしてた、天使と悪魔を同時に封印した。

　それから超越者としての役割を終えて、肉体は消滅したけど、その力を持ったままずっと意志だけがこの惑星を漂ってた。

　たまに傷付いた人を少しだけ助けたり、飢餓に苦しんでる人達に恵みの雨を降らせたり、この世界の摂理から逸脱しない程度の手助けをしながら何年も…何百年も見守る者としてこの惑星に留まってた。


　そんなある日偶然漂ってた場所に、今にも不幸に呑まれそうな、か弱い子供を発見した。

　
　少しだけ興味が湧いたから、いつもみたいに少しの手助けのつもりでその子供を見守ってた。

　でもその子供はどんなに手助けしても、一向に不幸から抜け出せなかった。

　大体私が手助けした子供は、それなりに良い方向に向かって生きていくのに…。
　
　この子供の運命だけは、変えることが出来なかった。

　私はその子の過酷な生を少しでもどうにかしてあげたくて、時間を巻き戻って初めの時間軸からやり直した。

　そしてまたこの世界の摂理を変えないくらいの、ほんの少しの手助けをした。

　でも、やっぱりダメだった。

　何度、時間を戻っても、何度違う手助けを繰り返しても…、この子の運命を変える事は出来なくて、決まって同じ最期を迎えてた。

　この子にはこんな微々たる助けじゃなくて、もっともっと直接的な救いの手を向けないと、この負の連鎖を断ち切る事が出来ないと気付いた。

　そこで考えた私は、自分の持てる全ての力を使って、今いるこの世界から抜け出した。

　この世界の理の中だと、私の力に制限がかかってしまい出来ることが限られて、どうしてもこの子を助ける事が出来なかったから。


　どうにかこの世界から抜け出した私は、平行宇宙にある違う惑星に自分の意志を移した。

　同じくらいの知能を持つ人間の身体に入って、超越者だった頃の記憶は一切消して、別の人物として生きた。

　ただこの身体に移る時に、いずれまた元いた世界を望むように、仕掛けをしておいた。
　それがこの地球という惑星に存在していた、ゲームというものだった。

　この【meteor stream（流星群）～星たちの行方～】という有りもしないゲームを創り出して、このゲームをプレイするよう促し、この身体の人物に強い興味を抱かせるように仕向けた。

　この決して救われない哀れな子供を、どうしても救ってやりたいという強い意志を抱かせた。
　その願いが叶うように死の間際にまた少し細工をして、上手くこの世界へと戻ってきた。

　そして、以前の自分超越者とは違う人物になって、地球という惑星にいた記憶を持ったまま、ミラと言う人間としてこの世界に生まれ変わった。



　今度こそ、このか弱い子供を救う為に──。