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ラストステージ 8

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 皇宮前の広場の光と干渉波が収まると、また辺りがシーンとしてる。

 はぁ…、やっぱりデネボラと違ってアヌの光属性魔法は魔力消費がそれ程多くはないね。
 ただ逆に体力が大幅に削られてる。身体中の切り傷もズキズキ痛むし、動き回りながら魔法も使って息も切れてる。でも、この状況で回復薬なんて飲んでられない。

 アヌと睨み合ってる今の状態でも汗が吹き出してる。神経が研ぎ澄まされて、まるであのスタンピードの時みたいな自分が自分じゃないみたいな感じ。

 周りにいたアカデミアチームも、教授達も、騎士団の面々も…みんなさっきの衝撃でボロボロになってて、広場に立って見合ってる私とアヌをひたすら眺めてるだけだった。



「シリウス准伯爵様!!微力ながら、わたくしもお手伝いさせて頂きますわっ」

 突然背後から声が上がった。

 これってリリーの声だ。ゲームだとこの場に居るはずのないリリーが意気揚々と話してる。

『アクアストリーム』
『ウィンドカッター』

 最前線に立って、リリーが両手から水属性と風属性魔法を同時に展開してる。

 え!?ちょっと!
 突然だけど、リリーってめちゃくちゃ凄いじゃんっ!!

 これって、相当な魔法センスがないと出来ないんだよ?!
 2属性持ち自体が少ない上に、片手ずつ違う属性の魔法を展開するなんて、物凄くずば抜けた魔力操作が必要になるから。
 合成魔法もスゴいけど、この緻密な魔力操作と魔法センスは真似できないよ!

 いや、ありがたいけど…リリーって一応他国のお姫様で婚約も決まったばっかなんだよ?
 どうして国に帰らないで、よりにもよってこんな最前線で戦ってるかなぁ…。

 レグルス様の立ってる前線本部前にはポラリス、ルリオン様、マイア、アケルナー、リゲル、リリーのもう原作とはかけ離れたアカデミアチームが立ってる。
 ある意味、ゲームなんかより人数も多いしイレギュラーも混ざってる。これが戦闘にどう影響してくるかな?

 リリーが魔法使ってるのも初めて見たし、確かに交換留学するだけの人物なんだね。
 お姫様だからって無理矢理留学してきたのかと疑ってたよ…。
 
「リリー王女っ!危ないから下がってくれっ!!」

 レグルス様が慌てて止めようとしてるけど、リリーは全く聞く耳を持たないで、アヌにどんどん攻撃魔法仕掛けてる。

「加勢致しますわっ!リリー殿下!」
「マイア嬢っ!?危ないっ!」

 隣から杖を持ち上げて水属性の攻撃魔法放ってるのは我が友マイア。ルリオン様の静止も気にせず果敢に立ち向かってる。

『ウォーターアロー!』

 マイアも魔力操作が上手いから、発動までの時間が短くて命中率が高い。
 無数の水の矢がアヌの頭上に降り注いでる。

《小賢しい…》

 鬱陶しそうに光属性魔法で防いでて、大したダメージも受けてないけどさ。

「私も、回復の手助けをします!」

 レグルス様の背後に控えていたポラリスも光属性の回復魔法使ってる。

『サンライトヒール!』

 光属性のポラリスだと同属性のアヌにはあんまり効果がない。確かに周りの人間の回復に徹してくれるのが一番効果的だよね。
 
 これは広範囲の上級回復魔法。
 広場の周りにいてボロボロになってた騎士団の面々や、倒れてた騎士団長達の怪我や体力もどんどん回復してる。
 私も傷付いた身体が治って、体力が回復した。

 ポラリスも勇ましい女子達に触発されたのか、ずっとレグルス様の後ろに控えてたけど、自発的に魔法を使ってる。

「ポラリス…」

 確かにデネボラ戦だとポラリスは最大戦力だけど、アヌ戦だと回復に回るしかないから役割がまるで変わるんだ。

 プレイヤーがいない今は、本来ならレグルス様が指揮を取るべきなんだけど…。

「女性達にばかり無理させる訳にはいきませんね」

「おぅっ!行くぜっ、アケルナー!!」

 ここで口を開いたのはアケルナーとリゲル。
 この二人も魔法剣士だから学生だけど、かなりの手練れなんだよ。

「無茶はいけませんよ、リゲル」
「わかってるよ!つーか、お前に言われたくないっ!!」

 いつもの調子でぎゃんぎゃん騒ぎながらリゲルは業物の剣を構えて、アケルナーは火属性の魔法剣を片手にアヌに向かってる。

「私も行くぞ」

「殿下っ!?しかし、殿下が本陣を離れてはっ」

 効果の薄い聖剣を地面に突き刺して、今度は豪華なロングソードに持ち替えてる。

「リオ、上に立つ者が先頭に立って戦わなくては示しが付かない。それに君はいつまで、婚約者を前線で戦わせる気なのか?」

 レグルス様がフッと笑いながら、自分達の目の前で勇敢に攻撃魔法で戦ってるマイア達を見てる

「…ッ!殿下の…仰る通りです…私もお供致しますっ!!」

 ようやくここでミティストのキャラ達が全員戦闘に入ったんだ!
 
 危機的状況なのに沸き起こる高揚とドキドキで、手に汗握りながらその光景を頭に焼き付けてた。
 
 
 
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