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デネボラ復活編 3

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 帝都内はスタンピード同様に酷かった。
 まだ逃げ惑ってる人に、モンスターに襲われて叫んでる人、泣き叫んでる人や、応戦してる騎士まで…。

 門の前の光景とはまた違う。
 何kmか離れた場所には暗黒の魔力を撒き散らせてるデネボラが鎮座してる。
 そこはまさに白亜の皇宮の真ん前。
 
 確か皇宮前には帝国騎士団や魔法騎士団他に、レグルス様率いるアカデミアの生徒で結成されたチーム。
 レグルス様、ルリオン様、ポラリス、マイア、アケルナー、リゲル、そして何故かリリーも同時に参加してるんだ。
 リリーは何で参戦してるのか謎だけど、2属性持ちのリリーがこの戦いにさんかしてくれるのはとっても心強いよ。

「ヒィッ!な、なんだ…こいつら!!」
「いやぁぁぁ!!助けてっ!!」
「どうして帝都に魔物が現れるんだぁ!?」
「こんなのっ、ありえんぞ!!スタンピードも終わったのに…!」

 帝都の平民街は大パニックになってる。
 まだ門の前の光景はかわいいもんだった。
 
 出現してるモンスターは上級だけどそこまで強くはなかった。
 一般人にとっては脅威になるモンスターだけど、帝国騎士団や魔法騎士団の面々がチーム組んで散り散りになって戦ってた。

「隊を乱すなっ!3対1の陣形を崩さぬよう、魔物を追い詰めるのだぁ!!」

 ここで指揮を取ってるのはルリオン様の父のアンキロス公爵。
 ルリオン様は頭脳派の文官系なのに、父であるアンキロス公爵は帝国騎士団をまとめる将軍閣下。
 同じ親子でも似て非なる者なんだよね…、面白い事に。

 この辺りもマニュアルが機能してるのか、初めに取り決めてたチーム編成がきちんと出来てる。
 帝国騎士団2人に対して魔法騎士団から1人の3人チーム。
 これも会議で議論して各騎士団長が話し合ってチーム編成してた。
 早い段階での話し合いで決まってたのが良い方向に左右したね!
 
 でも、おかしいなぁ…。

 この終盤戦だと帝都内はもっと強力なモンスターとかで大変な事になってるんだけど…。
 
 またゲームとは違うある意味嬉しい誤算に私は迷わず皇宮方面へと向かった。

 皇宮から近いアカデミアへと続く平民街のレンガ道を抜けて、途中騎士団が追い付いてないモンスター達を片っ端からデュランダルを構えて倒していった。

「あなたはっ、シリウス!?」
「うわあ~、あの仮面飾りと一緒だぁ!!」
「英雄様っ!恩に着ますだぁ!」

 貴族街とは違って平民街の方が被害が大きいな。

 箝口令は引かれてたけど、それとなく漏れ出した情報を耳にした一部の貴族達は早々荷物まとめて帝都を出て行ったらしいからね。
 
 上級モンスターで牛に似た怪物ミノタウルスとか、大きな狼の姿をした黒いフェンリルなんかも現れてて、隊を組んでた騎士たちも押されだしてる。

「くっ…、なんで帝都にこんな上級の魔物がッ…」
「うぅ、強いっ!フェンリルなんかがどうしてこんなところに現れるんだぁ!?」
「気をつけろぉぉ!強力な魔法を放ってくるぞぉぉ!!」

 旧世界ではフェンリルも元々が高度な魔法攻撃をするモンスターだった。
 でも新世界になって魔法も退化してから使えなくなった筈なのに、デネボラが復活したせいかただでさえ強いのに雷属性や氷属性の魔法を放ってきてる。

 平民街の真ん中で魔物系攻撃魔法が飛び交ってる。

 噴水前の広場まで来ると騎士団の面々が魔法攻撃と物理攻撃で追い詰められてて、フェンリルが襲いかかってきてた。

「ぐっ、あ…あ…」

 一人の騎士が広場に倒れてフェンリルに乗りかかられてる。
 周りの騎士たちも助けようとしてるけど、その周りから集まってきてる他の中級モンスター達の相手が精一杯で、どうすることも出来ないでいた。

「あんな魔法は初めて見るぞ!?」
「次から次へと現れやがってえ!!」
「怯むなっ!!魔法騎士団が前面へ出て攻撃を防御しろっ!!」

 いつもなら穏やかな景色が広がってる噴水の広場が、モンスターで溢れる悲惨な戦いの場になってる。
 帝国騎士団の副団長がこの現場の指揮を取ってた。

 私も最前線の持ち場に戻らなきゃいけないんだけど…。
 
 何名かの魔法騎士たちが上級防御魔法で防ぎながら応戦してる。
 
「くっそぉ…、最上級防御魔法がっ!!」
「…ダメだっ!!魔法防御が崩れるぞっ!お前ら、剣を構えろっ!!」

 フェンリルが雷属性の上級攻撃を放ってて、何層かに展開してた防御魔法が破られた。

 防御魔法が解けて一斉に囲まれてたモンスターが襲いかかってきた。
 
 もう見てられないよ!!
 
 咄嗟に無属性の魔法剣を作って、風魔法と身体強化で最高速で現場に突撃した。
 
 まず放たれてた雷属性の魔法を魔法剣で斬り裂いた。私に気付いたフェンリルが吠えながら攻撃魔法を放ってきた。

「ワオゥッ!!」

 バリバリ放電しながら放たれた魔法を魔法剣で十字に斬り裂きながら無力化させて、その勢いのままフェンリルの肢体を斬りつけた。

「ギャオウ!!」
 
 攻撃してた隙にフェンリルが前足で蹴ってきて咄嗟に両手を出して構えて防御した。
 でも蹴られた衝撃で広場に建てられてる露店まで飛ばされて身体ごと突っ込んでく。

「っぐ…!」

 身体強化で構えて何とか衝撃に耐えたけど、時間が惜しいから一気に倒さないとっ!
 派手に壊された露店の瓦礫から抜け出して、広場の前に戻った。
 
「シリウス卿っ!!及ばずながら加勢致しますっ!不甲斐ない我々を見捨てず、ご助力頂き感謝致します!!」

 まだ若い副団長が私の前に出てきてまた指揮を取り始めた。
 体制を取り直して周りのモンスター達と、フェンリルに攻撃を仕掛けてる。

「今ですっ!シリウス卿ぉ!!」

 副団長の呼び掛けで剣を構え直した私は、トップスピードでレンガを蹴ってフェンリルに突っ込んだ。

 フェンリルの前まで来ると瞬間的にデュランダルを何度も振り翳して肢体を斬り裂いた。

「ガッ!…グゥ……」

 血を吹き出しながらようやくフェンリルがバタンッと地に伏せた。

「よしっ!!やったぞぉ~!!」
「凄いっ!素晴らしいっ!!」
「オイッ、まだ油断するなぁ!他の魔物はやって来てるぞ!!」

 はぁ…、何とかなった。
 
 まだモンスターはいるけど、後はここの人達でどうにかしてもらわないと。 
 
 私は再びデネボラがいる皇宮方面に足を向けた。

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