258 / 392
異変 5
しおりを挟む
‘
エルナト先生の部屋に入ると、いつも座っている席に見慣れた人物が腰掛けてた。
「あれ?…タウリ?どうしたんだ??」
魔法アカデミアに似つかわしくない厳つい顔のタウリが、机の前で優雅に座ってる。
「お嬢!緊急事態ですぞ!」
私を見るやいなや立ち上がって厳つい顔をさらに顰めてる。
ついこの前小瓶回収するのに会ったばっかなのに、こんなに慌てて来るなんて…何だか、ものすごく嫌な予感がする。
「一体どうした?お前が来るってことは商会かギルド関係か?」
座ってる席の近くまで来て、立ち上がったタウリに問いかけた。
「それが、大変な事が起こったのですぞ!なんと、帝国中のダンジョンが突然地形から消えたのですぞ!」
「──っ!!」
「帝国全てのダンジョンが?……そんな事があり得るのですか?」
私もタウリも突っ立ったままで、エルナト先生もタウリの言葉に衝撃を受けてる。
「わしもタラゼドに聞いても信じられんでしたが、実際何個かのダンジョンを回った結果、やはりダンジョンが跡形も無く消えておったのですぞ…」
タウリの言葉に、私の思考が断絶される。
動悸が激しくて、全身の震えが止まらない。
立って拳を握り締めたまま、冷や汗が背中を伝い身体中に戦慄が走る。
「ダンジョンが消えた事は…今までの歴史上、聞いた事がないですね。そもそもダンジョンとは、遥か昔から存在しているものですから」
「エルナト殿の言う通り、ギルドでもこの事態を調査中ですぞ。タラゼドもシリウスに調査を依頼したいらしく、わしがここまで駆り出されたのですぞ」
話しながらタウリもエルナト先生も私を見るけど、はっきり言って何の言葉も入って来なかった。
帝国中のダンジョンの消失…、そしてその後に来るのは──。
「…お嬢?……お嬢?!どうかされたんですかなっ!?」
タウリの言葉にハッと我に返る。
「アトリクス君…顔色が悪いです。もしや…何か心当たりがあるのですか?」
深刻な顔して無言で立ってる私に、二人の視線が刺さる。
「お嬢、知ってる事があるなら話して下され。わしは…妙な胸騒ぎがして、落ち着かんのですぞ」
「……」
「他言も言及もしません。あなたがそんな顔をするという事は…よほどの事態なのではないですか?」
タウリもエルナト先生も、確信をもって私に問い質してる。
「──……」
この事実を話すことが…、果たして正しい事なのか私にはわからない。
だけど、これから起こるであろう悲劇を少しでも止められるかもしれない……。
俯いて大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
胸元を握り締めて何度か深呼吸を繰り返して、どうにか自分を落ち着かせていく。
「エルナト先生…、タウリ……」
私が立ったまま、静かに二人の名前を呼ぶ。
二人も固唾を飲んで、私の言葉を待ってる。
「今から話す事を、信じてほしい…とは言わないけど、これから確実に来るであろう…、終末についてお話しします……」
目を開き顔を上げ、二人の顔をしっかり見ながら、言葉を続けた。
エルナト先生の部屋に入ると、いつも座っている席に見慣れた人物が腰掛けてた。
「あれ?…タウリ?どうしたんだ??」
魔法アカデミアに似つかわしくない厳つい顔のタウリが、机の前で優雅に座ってる。
「お嬢!緊急事態ですぞ!」
私を見るやいなや立ち上がって厳つい顔をさらに顰めてる。
ついこの前小瓶回収するのに会ったばっかなのに、こんなに慌てて来るなんて…何だか、ものすごく嫌な予感がする。
「一体どうした?お前が来るってことは商会かギルド関係か?」
座ってる席の近くまで来て、立ち上がったタウリに問いかけた。
「それが、大変な事が起こったのですぞ!なんと、帝国中のダンジョンが突然地形から消えたのですぞ!」
「──っ!!」
「帝国全てのダンジョンが?……そんな事があり得るのですか?」
私もタウリも突っ立ったままで、エルナト先生もタウリの言葉に衝撃を受けてる。
「わしもタラゼドに聞いても信じられんでしたが、実際何個かのダンジョンを回った結果、やはりダンジョンが跡形も無く消えておったのですぞ…」
タウリの言葉に、私の思考が断絶される。
動悸が激しくて、全身の震えが止まらない。
立って拳を握り締めたまま、冷や汗が背中を伝い身体中に戦慄が走る。
「ダンジョンが消えた事は…今までの歴史上、聞いた事がないですね。そもそもダンジョンとは、遥か昔から存在しているものですから」
「エルナト殿の言う通り、ギルドでもこの事態を調査中ですぞ。タラゼドもシリウスに調査を依頼したいらしく、わしがここまで駆り出されたのですぞ」
話しながらタウリもエルナト先生も私を見るけど、はっきり言って何の言葉も入って来なかった。
帝国中のダンジョンの消失…、そしてその後に来るのは──。
「…お嬢?……お嬢?!どうかされたんですかなっ!?」
タウリの言葉にハッと我に返る。
「アトリクス君…顔色が悪いです。もしや…何か心当たりがあるのですか?」
深刻な顔して無言で立ってる私に、二人の視線が刺さる。
「お嬢、知ってる事があるなら話して下され。わしは…妙な胸騒ぎがして、落ち着かんのですぞ」
「……」
「他言も言及もしません。あなたがそんな顔をするという事は…よほどの事態なのではないですか?」
タウリもエルナト先生も、確信をもって私に問い質してる。
「──……」
この事実を話すことが…、果たして正しい事なのか私にはわからない。
だけど、これから起こるであろう悲劇を少しでも止められるかもしれない……。
俯いて大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
胸元を握り締めて何度か深呼吸を繰り返して、どうにか自分を落ち着かせていく。
「エルナト先生…、タウリ……」
私が立ったまま、静かに二人の名前を呼ぶ。
二人も固唾を飲んで、私の言葉を待ってる。
「今から話す事を、信じてほしい…とは言わないけど、これから確実に来るであろう…、終末についてお話しします……」
目を開き顔を上げ、二人の顔をしっかり見ながら、言葉を続けた。
2
お気に入りに追加
324
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる