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異変 5

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 エルナト先生の部屋に入ると、いつも座っている席に見慣れた人物が腰掛けてた。

「あれ?…タウリ?どうしたんだ??」

 魔法アカデミアに似つかわしくない厳つい顔のタウリが、机の前で優雅に座ってる。

「お嬢!緊急事態ですぞ!」

 私を見るやいなや立ち上がって厳つい顔をさらに顰めてる。
 ついこの前小瓶回収するのに会ったばっかなのに、こんなに慌てて来るなんて…何だか、ものすごく嫌な予感がする。

「一体どうした?お前が来るってことは商会かギルド関係か?」

 座ってる席の近くまで来て、立ち上がったタウリに問いかけた。

「それが、大変な事が起こったのですぞ!なんと、帝国中のダンジョンが突然地形から消えたのですぞ!」

「──っ!!」

「帝国全てのダンジョンが?……そんな事があり得るのですか?」

 私もタウリも突っ立ったままで、エルナト先生もタウリの言葉に衝撃を受けてる。

「わしもタラゼドに聞いても信じられんでしたが、実際何個かのダンジョンを回った結果、やはりダンジョンが跡形も無く消えておったのですぞ…」

 タウリの言葉に、私の思考が断絶される。

 動悸が激しくて、全身の震えが止まらない。

 立って拳を握り締めたまま、冷や汗が背中を伝い身体中に戦慄が走る。

「ダンジョンが消えた事は…今までの歴史上、聞いた事がないですね。そもそもダンジョンとは、遥か昔から存在しているものですから」

「エルナト殿の言う通り、ギルドでもこの事態を調査中ですぞ。タラゼドもシリウスに調査を依頼したいらしく、わしがここまで駆り出されたのですぞ」

 話しながらタウリもエルナト先生も私を見るけど、はっきり言って何の言葉も入って来なかった。

 帝国中のダンジョンの消失…、そしてその後に来るのは──。

「…お嬢?……お嬢?!どうかされたんですかなっ!?」

 タウリの言葉にハッと我に返る。

「アトリクス君…顔色が悪いです。もしや…何か心当たりがあるのですか?」

 深刻な顔して無言で立ってる私に、二人の視線が刺さる。

「お嬢、知ってる事があるなら話して下され。わしは…妙な胸騒ぎがして、落ち着かんのですぞ」

「……」

「他言も言及もしません。あなたがそんな顔をするという事は…よほどの事態なのではないですか?」

 タウリもエルナト先生も、確信をもって私に問い質してる。

「──……」

 この事実を話すことが…、果たして正しい事なのか私にはわからない。

 だけど、これから起こるであろう悲劇を少しでも止められるかもしれない……。

 俯いて大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。

 胸元を握り締めて何度か深呼吸を繰り返して、どうにか自分を落ち着かせていく。

「エルナト先生…、タウリ……」

 私が立ったまま、静かに二人の名前を呼ぶ。

 二人も固唾を飲んで、私の言葉を待ってる。


「今から話す事を、信じてほしい…とは言わないけど、これから確実に来るであろう…、終末についてお話しします……」


 目を開き顔を上げ、二人の顔をしっかり見ながら、言葉を続けた。


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