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二人の想い 15

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 細かい取り決めは後日にして交渉もなんとか成立したし、リリーは馬車に乗ってアカデミアへと帰った。


 かくいう私はと言うと。

「…やっと二人きりになれたな、アトリクス……」

 リリーを見送った後、応接室からアルファルドの私室に移動して、改めてアルファルドの部屋でお茶を飲み直してる。

「ア……ルファルド……」

 いつものソファーに二人で座りながら、お茶を飲んでた筈なのにどうしてもこうなっちゃうんだよね。

 もう当たり前のようにアルファルドが私の身体を引き寄せて、腕の中に閉じ込めて間近で私に囁いてる。

 ロイヤルパープルと黄金色の瞳が私を揺らめくように移してて、その美貌に抗う術もなく――
 逞しい両腕に抱きしめられて、ソファーに座りながら愛しそうな顔で迫られるともう何も言えなくなる。

 実はここに来る前にアルファルドに外泊許可取って来いって言われたんだよね。
 それを条件にリリーの公爵邸訪問を許可してくれたんだけど。

 人払いもしてアルファルドと二人きりで、やっぱりドキドキして赤い顔して間近にあるアルファルドを見つめた。
 あれだけ散々キスしたのに、アルファルドはまだ足りないみたいで、私の顎に手を当ててクイッと持ち上げて私の唇に何度も軽くキスしてる。

「っ……、ん……」

 キスされながら、私は心の中でこの先どうしようか葛藤してた。

 アルファルドに自分の正体をバラすかどうか。

 実は女でした、なんてアルファルドに言ったらどうなるんだろう。

 元々アルファルドはゲイでもないだろうし、ゲームだとポラリス好きになるくらいだから、普通に異性愛者だと思うんだけど、そこは私が捻じ曲げちゃって同性愛者にしちゃったんだとは思うんだけど。

「んっ、はぁ……」

 深く重なり合った唇から舌が入ってきて、気持ち良さに艶めいた声が鼻から抜ける。

 もし私が女だって知ったら……、アルファルドは私を軽蔑するかもしれない。

 私はそれがすごく怖い。

 自分が勇気出してアルファルドと一緒にこれからを生きようって決心したのに、正体バラした途端冷たい態度取られたら?
 
 唇が離れて、アルファルドの濡れた口元が目に入った。
 熱い吐息と艶めいた潤んだ瞳がすごく色っぽくて、ゾクッと鳥肌が立った。

 私を愛しげに見てるこの瞳が、他の人見るみたいに冷淡に見下ろしてきたら……
 私だけに甘く囁いてくれることも……、こんな風に触れてくれることも無くなるかもしれない。

 そう考えただけで怖くて、あと一歩が踏み出せない。
 
「…アトリクス? どうか、したのか?」

 よっぽど不安そうな顔してたのかアルファルドが抱き寄せてくれて、私もアルファルドの身体に抱きついてピタッとくっついた。

 傷付くことを怖がってたら先には進めない。

 元々、アルファルドとは離れようって考えてたんだ。
 それなのに……、アルファルドがこんなになりふり構わず私を求めてきてくれてる。

 だから私も、覚悟を決めないといけないよね。

「俺……、お前に……話さなきゃいけない事があるんだ……」
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