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ギルド依頼 5

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 アケルナー父とは距離を取るべきだね。マジで怖い。この人って一見文官ぽいのに、着てる服は魔法騎士団の物だ。

 戦闘狂は一人で十分なので、ごめんなさい。

 現場になった内宮の広場まで来て、身体強化と風魔法使って一気に屋根の上まで飛び上がった。

「――っ! な……、これは、なんという跳躍力っ……!」

 うぅ……、私には何も聞こえない。

 アケルナー父が信じられ顔で上を見上げて、色々言ってるけどもう聞かない。
 
 ふぅ……、ようやく集中できる。

 皇宮の屋根の上って壮観だね~。
 帝都中が良く見えるね。
 こんなことでもないと多重魔法結界張られてる皇宮の屋根なんて登れないしさ。

 仮面の中で目を閉じて気配探査を皇宮一帯に広げる。皇宮内は沢山の人がいるから気配ないが分散して集中しにくいけど、魔物の気配となるとまた別物なんだよね。
 
 地下にも範囲を広げて探るけど……、今の段階で怪しい気配はないな。

 あの時もそうだった……亡くなった人間、特に魔力枯渇状態だとこういった気配探査には引っかからない。
 
 やっぱり夜中にならないと現れないんだね。
 
 目を開けて気配探査を解く。
 そのまま屋根から飛び降りて、風魔法使って降下速度を落として着地する。
 スタッと地面に降りると、周りには沢山の人が集まってた。

「シリウス卿。こんな事態でなければ、貴殿と手合わせを願いたいところなのですがっ!」

 下に降りた私をアケルナー父が待ち構え怖いこと言ってる。

 いやぁ悪いけど、こんな事態じゃなくても絶っ対お断りですから!

 



 それから2日、3日……と夜中も皇宮に滞在して気配探査と見回りしたけど、何故か怪しい気配や事件は起きなかった。 
 私の寝不足だけが募り、講義の最中も欠伸ばっかりで机に突っ伏して寝てた。

「んと…アート君、大丈夫?」
「んー……、おぅ……任せろ」

 この日のサークル中はポーション作りながら半分寝てて、鍋かき混ぜてガクッとなりそうなところで、アルファルドに後ろから抱き留められた。

「…アトリクス。…お前は帰って寝ろ」
「あ、悪い……、アルファルド」

 寝不足で身体が怠くて、全く寝てない訳じゃないんだけど、身体が睡眠を欲してる。朝なんていつも遅く起きてるオクタンに起こされるくらいだもんね。

「…なぜそんなに寝不足なんだ? お前……、一体何をしてる?」
 
 取り敢えず魔力送りながら鍋だけはかき混ぜてる。高額なのにポーションの需要も結構あるから、こうして毎日作らないと供給が間に合わなくなっちゃうんだよね。

「ん? あー……、ちょっと野暮用があってな……」

 あと4日我慢すればお役御免だからさ。夜はポーション飲んでシャキッとするんだけど、寝不足って蓄積してくみたいでやっぱり寝ないと駄目なんだよね。

「…俺には言えないことか?」

 後ろから抱きしめながら、耳元で切ない声で言わないでほしい。アルファルドじゃなくても誰にも言えないんだよ。

「や……、そういうんじゃ……ないんだ……」

 眠すぎてもう頭が回らないから、適当な言い訳も思い浮かばないし。
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