156 / 392
エルナト先生との旅路 3
しおりを挟む
‘
とりあえずエルナト先生と別れて寮へと戻った。
オクタンにも状況を説明して、しばらく休学することを伝える。
「んと、そんなに…いないの?」
「あぁ。まぁ場合によっちゃ、早めに帰って来るからさ」
「うん…、…んと、気を付けてね…」
寮の自分の椅子に座って私の方を見てるオクタンはしょんぼりしてる。
「どうした?」
「ん?んと…アート君、いないと、…寂しいね」
二段ベッドの下で腰掛けてた私は、しょんぼりしてるオクタンにキュンと胸がときめく。
やっぱりオクタンて可愛すぎー!
私がいなくて寂しいだなんて…本当に小動物が寂しさに耳垂らして項垂れてるみたいでめちゃくちゃ可愛い!!
「嬉しい事言ってくれるなっ。オクタンの為にも早めに切り上げて戻ってくるさ!」
「ん…うん。あ、でも…んと、無理しないでね…」
「ハハッ、任せとけって!」
旦那の出張帰りを待つ幼妻みたいだよ。
よしっ、オクタンのためにも早めに終わらそう!
頑張るぞー!!
◇
翌朝の早朝。
待ち合わせてたアカデミアの正門前でエルナト先生と合流する。
「おはようございます。早速参りましょう」
「はい。とりあえず帝都から出てから移動しますか」
「えぇ、そのつもりです」
アカデミアを出て、しばらく歩くと帝都の検問所を通り外へと出る。
誰もいないのを気配でも確認して、近くの森の茂み辺りまで移動してきた。
「では、行きますよ。しっかり捕まってて下さい!」
「はい。この移動法も久方ぶりですね」
エルナト先生の手をしっかりとつなぎ、肩も掴んで体から離れないようにしてもらう。
そこから足を強化して風魔法とともに一気に跳躍する。
「──っく!」
体にかかる風圧にエルナト先生が声を漏らすけど、手を離す事はしなかった。
空高く飛び上がると先生の風魔法も使い、かなりの飛距離で移動してる。
「暫く体験しない間に、随分長く跳べるようになりましたね!」
風の音がびゅうびゅううるさいから、先生も声を張り上げて話し掛けてくる。
「えぇ!一人でならほぼ空を飛んでるのと変わらないですよ!」
エルナト先生がいる分、やっぱり重さも加わるから速度も落ちるけど、以前と比べれば更に速く移動できるようになったからなぁ。
コレやるときは先生の体が障害物にぶつからないように気をつけないといけない。
本当はお姫様抱っこ出来れば一番楽なんだけど、さすがにそれだけはきっぱり断られちゃったし。
そこから数時間。途中町で降りて休憩も挟みながら夕方頃には隣国アウリガル王国の検問所までやってきた。
近くの森に降り立って、エルナト先生が魔法で降下速度を減速してくれる。
この移動技ってエルナト先生とじゃないと無理なんだよね。基本風属性の魔法使いがいないと私の補助魔法だけじゃ減速が難しいし、着地するときの速度も二人分はキツい。
ここはまたベクルックス辺境伯の領地に隣接してる国とは別の国。
そう、エルナト先生のご実家であるインテルクルース辺境伯家と隣接してる王国なんだよね。
一応腰のベルトにもハイポーション何本か差してきたけど、飲むほど魔力も体力も減ってないし。
「ふぅ……さすがですね。通常ならば隣国であるアウリガル王国まで、馬車だと7日程かかる所を一日で移動してしまうとは…」
「えぇ、かなりの荒業ですけど」
「あなたにしか出来ませんよ。怪鳥ラーミヤより速いかもしれません」
「いやあ…どうでしょうね」
一日の移動でも手段が手段だけに、エルナト先生もちょっと疲れ気味。
身なりを整えて何食わぬ顔で検問所まで歩いていく。
アウリガル王国からの紹介状とか、エルナト先生の身分証明書とかまぁ色々見せて、慌てたみたいに門番の人達が馬車を用意してくれてた。
そりゃそうだよね。普通は馬車に乗ってここを通過するはずなのに歩いて来てるんだからさ。どうやって来たんだって話だよね。
「只今ご用意致しますので、今しばらくお待ち下さい!!」
しかも馬車での移動距離を見事に省いて来てるからね。ビックリだと思うよ。
でもエルナト先生はそんな事なんておくびにも出さないで余裕の笑顔で対応してる。
「我々が早く着きすぎましたから、急がなくて結構ですよ」
検問所の門番もエルナト先生の対応に感動してるのか、表情が輝いて見える。
「あ、あの…アルタイル帝国でのスタンピードでご活躍されたインテルクルース准子爵様ですよね?有名なサジタリア魔法アカデミアの教授で、希少な2属性持ちの魔法使い様にお目にかかれるなんて光栄です!!」
わりと若めの門番がエルナト先生に話し掛けてる。
あー…そっか、先生ってそういう意味で隣国でも有名人なんだねー。
確かに2属性持ちって世界的にも希少だから有名なのは有名なんだろうけど。
アウリガル王国は今では友好国だから特にその傾向が強いのかも。
ベクルックス辺境伯の領地に隣接してる隣国は、停戦協定を結んでるけど味方になってる訳じゃないからな。
「それはどうも」
軽くニコッと笑いかけるだけで若い門番は尊敬の眼差しを向けていた。
「本日はスタンピードの英雄、シリウス卿はご一緒ではないのですね」
辺りをキョロキョロと見渡して残念そうにしてる若い門番。
私はシリウスの名前を出されてギクッとしちゃうよ。
「えぇ。シリウス准伯爵殿はご多忙のようですからね…」
私を見ながら楽しそうに話してるエルナト先生。
うぅ、絶対面白がってる…。
横目でジーッと見てたら、ようやく迎えの馬車がやってきた。
とりあえずエルナト先生と別れて寮へと戻った。
オクタンにも状況を説明して、しばらく休学することを伝える。
「んと、そんなに…いないの?」
「あぁ。まぁ場合によっちゃ、早めに帰って来るからさ」
「うん…、…んと、気を付けてね…」
寮の自分の椅子に座って私の方を見てるオクタンはしょんぼりしてる。
「どうした?」
「ん?んと…アート君、いないと、…寂しいね」
二段ベッドの下で腰掛けてた私は、しょんぼりしてるオクタンにキュンと胸がときめく。
やっぱりオクタンて可愛すぎー!
私がいなくて寂しいだなんて…本当に小動物が寂しさに耳垂らして項垂れてるみたいでめちゃくちゃ可愛い!!
「嬉しい事言ってくれるなっ。オクタンの為にも早めに切り上げて戻ってくるさ!」
「ん…うん。あ、でも…んと、無理しないでね…」
「ハハッ、任せとけって!」
旦那の出張帰りを待つ幼妻みたいだよ。
よしっ、オクタンのためにも早めに終わらそう!
頑張るぞー!!
◇
翌朝の早朝。
待ち合わせてたアカデミアの正門前でエルナト先生と合流する。
「おはようございます。早速参りましょう」
「はい。とりあえず帝都から出てから移動しますか」
「えぇ、そのつもりです」
アカデミアを出て、しばらく歩くと帝都の検問所を通り外へと出る。
誰もいないのを気配でも確認して、近くの森の茂み辺りまで移動してきた。
「では、行きますよ。しっかり捕まってて下さい!」
「はい。この移動法も久方ぶりですね」
エルナト先生の手をしっかりとつなぎ、肩も掴んで体から離れないようにしてもらう。
そこから足を強化して風魔法とともに一気に跳躍する。
「──っく!」
体にかかる風圧にエルナト先生が声を漏らすけど、手を離す事はしなかった。
空高く飛び上がると先生の風魔法も使い、かなりの飛距離で移動してる。
「暫く体験しない間に、随分長く跳べるようになりましたね!」
風の音がびゅうびゅううるさいから、先生も声を張り上げて話し掛けてくる。
「えぇ!一人でならほぼ空を飛んでるのと変わらないですよ!」
エルナト先生がいる分、やっぱり重さも加わるから速度も落ちるけど、以前と比べれば更に速く移動できるようになったからなぁ。
コレやるときは先生の体が障害物にぶつからないように気をつけないといけない。
本当はお姫様抱っこ出来れば一番楽なんだけど、さすがにそれだけはきっぱり断られちゃったし。
そこから数時間。途中町で降りて休憩も挟みながら夕方頃には隣国アウリガル王国の検問所までやってきた。
近くの森に降り立って、エルナト先生が魔法で降下速度を減速してくれる。
この移動技ってエルナト先生とじゃないと無理なんだよね。基本風属性の魔法使いがいないと私の補助魔法だけじゃ減速が難しいし、着地するときの速度も二人分はキツい。
ここはまたベクルックス辺境伯の領地に隣接してる国とは別の国。
そう、エルナト先生のご実家であるインテルクルース辺境伯家と隣接してる王国なんだよね。
一応腰のベルトにもハイポーション何本か差してきたけど、飲むほど魔力も体力も減ってないし。
「ふぅ……さすがですね。通常ならば隣国であるアウリガル王国まで、馬車だと7日程かかる所を一日で移動してしまうとは…」
「えぇ、かなりの荒業ですけど」
「あなたにしか出来ませんよ。怪鳥ラーミヤより速いかもしれません」
「いやあ…どうでしょうね」
一日の移動でも手段が手段だけに、エルナト先生もちょっと疲れ気味。
身なりを整えて何食わぬ顔で検問所まで歩いていく。
アウリガル王国からの紹介状とか、エルナト先生の身分証明書とかまぁ色々見せて、慌てたみたいに門番の人達が馬車を用意してくれてた。
そりゃそうだよね。普通は馬車に乗ってここを通過するはずなのに歩いて来てるんだからさ。どうやって来たんだって話だよね。
「只今ご用意致しますので、今しばらくお待ち下さい!!」
しかも馬車での移動距離を見事に省いて来てるからね。ビックリだと思うよ。
でもエルナト先生はそんな事なんておくびにも出さないで余裕の笑顔で対応してる。
「我々が早く着きすぎましたから、急がなくて結構ですよ」
検問所の門番もエルナト先生の対応に感動してるのか、表情が輝いて見える。
「あ、あの…アルタイル帝国でのスタンピードでご活躍されたインテルクルース准子爵様ですよね?有名なサジタリア魔法アカデミアの教授で、希少な2属性持ちの魔法使い様にお目にかかれるなんて光栄です!!」
わりと若めの門番がエルナト先生に話し掛けてる。
あー…そっか、先生ってそういう意味で隣国でも有名人なんだねー。
確かに2属性持ちって世界的にも希少だから有名なのは有名なんだろうけど。
アウリガル王国は今では友好国だから特にその傾向が強いのかも。
ベクルックス辺境伯の領地に隣接してる隣国は、停戦協定を結んでるけど味方になってる訳じゃないからな。
「それはどうも」
軽くニコッと笑いかけるだけで若い門番は尊敬の眼差しを向けていた。
「本日はスタンピードの英雄、シリウス卿はご一緒ではないのですね」
辺りをキョロキョロと見渡して残念そうにしてる若い門番。
私はシリウスの名前を出されてギクッとしちゃうよ。
「えぇ。シリウス准伯爵殿はご多忙のようですからね…」
私を見ながら楽しそうに話してるエルナト先生。
うぅ、絶対面白がってる…。
横目でジーッと見てたら、ようやく迎えの馬車がやってきた。
11
お気に入りに追加
323
あなたにおすすめの小説
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
契約結婚!一発逆転マニュアル♡
伊吹美香
恋愛
『愛妻家になりたい男』と『今の状況から抜け出したい女』が利害一致の契約結婚⁉
全てを失い現実の中で藻掻く女
緒方 依舞稀(24)
✖
なんとしてでも愛妻家にならねばならない男
桐ケ谷 遥翔(30)
『一発逆転』と『打算』のために
二人の契約結婚生活が始まる……。
きみは運命の人
佐倉 蘭
恋愛
青山 智史は上司で従兄でもある魚住 和哉から奇妙なサイト【あなたの運命の人に逢わせてあげます】を紹介される。
和哉はこのサイトのお陰で、再会できた初恋の相手と結婚に漕ぎ着けたと言う。
あまりにも怪しすぎて、にわかには信じられない。
「和哉さん、幸せすぎて頭沸いてます?」
そう言う智史に、和哉が言った。
「うっせえよ。……智史、おまえもやってみな?」
※「偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎」のExtra Story【番外編】です。また、「あなたの運命の人に逢わせてあげます」「お見合いだけど、恋することからはじめよう」のネタバレも含みます。
※「きみは運命の人」の後は特別編「しあわせな朝【Bonus Track】」へと続きます。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる