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アトリクスとレグルス 3
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レグルス様の姿が見えなくなると、近くにあった木に寄りかかって盛大なため息をついた。
どうして……?
なんで、近づきたくないメインキャラばっかり寄って来るの!?
わざわざ男になってほとんど接触してないのに、こうすんなり攻略できちゃうのもどうかと思うよ!
肝心のアルファルドはあれだけしつこく言い寄って、ようやく友達になれたのにさっ!
アルファルドってどんだけ高難易度なんだよ!!
うまくいかなくてイライラする。
寄りかかった木に背中を預けて、頭をガリガリ掻きながらそのまま座り込んだ。
ハァ……、しんどい……
まさかレグルス様まで接触してくるとは思わなかったな。権力者に目を付けられるのは面倒過ぎ。
やっぱり皇帝陛下の血を引いてるよね。試すつもりが試されてたなんて。
レグルス様ってゲームだとポラリスとしか接してる場面出てきてなかったし、ヒロインに見せる姿とはまた違う顔。
意外と腹黒なんだな、レグルス様って。
しかもさっきから建物の隅に人の気配を感じてる。
誰だろう?
盗み聞きしてるなんてはじめはルリオン様かと思ってたけど、レグルス様が居なくなってもまだいるし。
出てこないなら無視して戻ろうかな。
ちょっと今は相手にする気力もないし。
白いレンガ道をアカデミアの中庭側に向かって歩き出した。
「…アトリクス……」
――え?!
気配があった建物の側を通り過ぎようとしたら、その影から出てきたのはなんとアルファルドだった。
「あ、アルファルド!? なんで、ここに……」
アルファルドは建物の側から私の方へゆっくり近づいてきてる。
「……偶然……、通りかかった……」
いつから聞かれてた?
わりと初めの方から気配を感じてたけど、ずっとルリオン様かと思って気にしないで喋ってたのに。
偶然か……
どっちなんだろう?
確かにこの辺はアルファルドの読書場所に近いから、たまたま通りかかっただけかもしれない。
「そっか。……じゃあ、戻ろうぜ? もうすぐ予鈴が鳴るぞ」
ニコッと笑って普通に話しかけた。
これは知らんぷりしとくしかないね。アルファルドも通りかかったって言ってるだけだし。
「……」
「どうした? 行かないのか?」
「……」
針葉樹が並ぶレンガ道の真ん中で、アルファルドは立って俯いたまま動こうとしない。
「アルファルド?」
俯いたアルファルドを覗き込むように近づくと、なんだか苦しそうに自分の左胸を押さえてる。
「大丈夫か?! 具合でも悪いのか!?」
「…いや……、違う……」
「でも、ツラそうだぞ……?」
「……」
前も似たような仕草をしてたけど。
頭の中に、あるシーンが急に思い浮かんだ。
あっ!
そういえばこの仕草、見たことある!
ゲームのアルファルドがこんなふうに苦しそうにしてた場面。
レグルス様とポラリスが仲良さそうに二人で話してる時。建物の物陰からそっとソレを見てて、激しい嫉妬と憎悪でこうして胸を押さえてた。
アルファルドを見るとやっぱり同じようにしてて、表情は見えないのにまだ苦しそう。
もしかして、久しぶりに出来た友達をレグルス様に取られちゃうと思ってやきもきしてるのかな?
「アルファルドっ……!」
咄嗟に俯いてるアルファルドの頬に、手を伸ばして両手で包み込んだ。
「……っ」
そのまま自分のおでこを、俯いてるアルファルドのおでこにくっつけた。
「大丈夫だ! 心配するな……俺はお前の側にいる」
くっつけたまま目を閉じて、必死に自分の気持ちを言葉にしていく。
「帝国の皇太子だろうとなんだろうと、俺はきっぱり断ったぞっ」
「……」
「それに俺には初めから…お前しか見えてない。何よりも……誰よりも……、お前を望んでる」
「…アトリクス」
「言っただろ……? お前が嫌だって言っても、俺はずっと付き纏うってさ」
「……あぁ」
ようやく顔を上げたアルファルドに、安心させるように微笑んでから、またキッとアルファルドを睨んだ。
「ったく、俺をなめんなよ! あんな言葉で簡単に変わるような、半端な気持ちでお前の側にいるわけじゃないからなっ!」
アルファルドの頬に添えてた手でぎゅっと頬を掴んだ。
「……!」
「ハハッ、わかったか!」
ニッと笑ってアルファルドの頬から手を離すと、アルファルドは掴まれた自分の頬に手を当ててポソッと呟いてた。
「…そう……だな……」
「だろ?」
「………お前は、本当に……変なやつだ……」
呆れたように言われたのに、声音はすごく嬉しそうな響きが混ざってて――
あ……、笑ってる。
きっとこれって……笑顔だ。
苦しそうにしたのが嘘みたいに、綺麗に口角が上がってる。
胸をキュウッと掴まれるような、切なさが混じるような焦燥を感じる。
あぁ……、ちゃんと顔が見たいな。
アルファルドの笑った顔、全部見てみたい……
私達の側を春の爽やかな風が通り過ぎていく。
ちょうどタイミング良く予鈴の鐘がなった。いきなり現実に引き戻されたような感覚。
いつの間にか、結構時間が過ぎてたみたいだね。
「あっ……、やべぇ!そろそろ、戻ろうぜ」
「…あぁ」
レンガ道を慌てながら二人で並んで歩いて、アカデミアの講堂まで急いで歩いて行った。
レグルス様の姿が見えなくなると、近くにあった木に寄りかかって盛大なため息をついた。
どうして……?
なんで、近づきたくないメインキャラばっかり寄って来るの!?
わざわざ男になってほとんど接触してないのに、こうすんなり攻略できちゃうのもどうかと思うよ!
肝心のアルファルドはあれだけしつこく言い寄って、ようやく友達になれたのにさっ!
アルファルドってどんだけ高難易度なんだよ!!
うまくいかなくてイライラする。
寄りかかった木に背中を預けて、頭をガリガリ掻きながらそのまま座り込んだ。
ハァ……、しんどい……
まさかレグルス様まで接触してくるとは思わなかったな。権力者に目を付けられるのは面倒過ぎ。
やっぱり皇帝陛下の血を引いてるよね。試すつもりが試されてたなんて。
レグルス様ってゲームだとポラリスとしか接してる場面出てきてなかったし、ヒロインに見せる姿とはまた違う顔。
意外と腹黒なんだな、レグルス様って。
しかもさっきから建物の隅に人の気配を感じてる。
誰だろう?
盗み聞きしてるなんてはじめはルリオン様かと思ってたけど、レグルス様が居なくなってもまだいるし。
出てこないなら無視して戻ろうかな。
ちょっと今は相手にする気力もないし。
白いレンガ道をアカデミアの中庭側に向かって歩き出した。
「…アトリクス……」
――え?!
気配があった建物の側を通り過ぎようとしたら、その影から出てきたのはなんとアルファルドだった。
「あ、アルファルド!? なんで、ここに……」
アルファルドは建物の側から私の方へゆっくり近づいてきてる。
「……偶然……、通りかかった……」
いつから聞かれてた?
わりと初めの方から気配を感じてたけど、ずっとルリオン様かと思って気にしないで喋ってたのに。
偶然か……
どっちなんだろう?
確かにこの辺はアルファルドの読書場所に近いから、たまたま通りかかっただけかもしれない。
「そっか。……じゃあ、戻ろうぜ? もうすぐ予鈴が鳴るぞ」
ニコッと笑って普通に話しかけた。
これは知らんぷりしとくしかないね。アルファルドも通りかかったって言ってるだけだし。
「……」
「どうした? 行かないのか?」
「……」
針葉樹が並ぶレンガ道の真ん中で、アルファルドは立って俯いたまま動こうとしない。
「アルファルド?」
俯いたアルファルドを覗き込むように近づくと、なんだか苦しそうに自分の左胸を押さえてる。
「大丈夫か?! 具合でも悪いのか!?」
「…いや……、違う……」
「でも、ツラそうだぞ……?」
「……」
前も似たような仕草をしてたけど。
頭の中に、あるシーンが急に思い浮かんだ。
あっ!
そういえばこの仕草、見たことある!
ゲームのアルファルドがこんなふうに苦しそうにしてた場面。
レグルス様とポラリスが仲良さそうに二人で話してる時。建物の物陰からそっとソレを見てて、激しい嫉妬と憎悪でこうして胸を押さえてた。
アルファルドを見るとやっぱり同じようにしてて、表情は見えないのにまだ苦しそう。
もしかして、久しぶりに出来た友達をレグルス様に取られちゃうと思ってやきもきしてるのかな?
「アルファルドっ……!」
咄嗟に俯いてるアルファルドの頬に、手を伸ばして両手で包み込んだ。
「……っ」
そのまま自分のおでこを、俯いてるアルファルドのおでこにくっつけた。
「大丈夫だ! 心配するな……俺はお前の側にいる」
くっつけたまま目を閉じて、必死に自分の気持ちを言葉にしていく。
「帝国の皇太子だろうとなんだろうと、俺はきっぱり断ったぞっ」
「……」
「それに俺には初めから…お前しか見えてない。何よりも……誰よりも……、お前を望んでる」
「…アトリクス」
「言っただろ……? お前が嫌だって言っても、俺はずっと付き纏うってさ」
「……あぁ」
ようやく顔を上げたアルファルドに、安心させるように微笑んでから、またキッとアルファルドを睨んだ。
「ったく、俺をなめんなよ! あんな言葉で簡単に変わるような、半端な気持ちでお前の側にいるわけじゃないからなっ!」
アルファルドの頬に添えてた手でぎゅっと頬を掴んだ。
「……!」
「ハハッ、わかったか!」
ニッと笑ってアルファルドの頬から手を離すと、アルファルドは掴まれた自分の頬に手を当ててポソッと呟いてた。
「…そう……だな……」
「だろ?」
「………お前は、本当に……変なやつだ……」
呆れたように言われたのに、声音はすごく嬉しそうな響きが混ざってて――
あ……、笑ってる。
きっとこれって……笑顔だ。
苦しそうにしたのが嘘みたいに、綺麗に口角が上がってる。
胸をキュウッと掴まれるような、切なさが混じるような焦燥を感じる。
あぁ……、ちゃんと顔が見たいな。
アルファルドの笑った顔、全部見てみたい……
私達の側を春の爽やかな風が通り過ぎていく。
ちょうどタイミング良く予鈴の鐘がなった。いきなり現実に引き戻されたような感覚。
いつの間にか、結構時間が過ぎてたみたいだね。
「あっ……、やべぇ!そろそろ、戻ろうぜ」
「…あぁ」
レンガ道を慌てながら二人で並んで歩いて、アカデミアの講堂まで急いで歩いて行った。
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