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リブラ星夜祭 2
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公爵家の家紋の入った馬車に乗り込んで、御者はベッテルさんがするみたい。
私とリタさんが隣で、アルファルドは一人で対面に座ってる。公爵家のわりと小さめの馬車でそれほど豪華さはないけど、3人で乗るには全く問題ない広さだった。
「それで、これは一体どういう事だい!?」
「どうって……? 種明かしはコレです」
指に嵌めた黒曜石の付いた指輪を前に出して見せる。
これはアウリガルで自分で買って頼んだ指輪。
「指輪かい?」
「はい。これマジックアイテムなんです」
リタさんが納得したように呟いてる。
これも普通の指輪だったけど、自分で魔法付与して今はマジックアイテムになってる。
アルファルドの髪色に似てたから髪飾りとセットで頼んじゃったんだよね。
「魔法の……アイテムってことかい? はぁ……そんなもので性別を変える事が可能性なんだね」
けど、実際は違うんですよ。性別は変えてるけど、こっちが本当の姿なんです。
とは言えないよね……
「えぇ。ある一定の時間だけ変えることができます。持続性はないので、お祭りの間だけこの姿でいることが出来るんです」
説明してる最中もアルファルドは無言でジーッとこっちを見てるだけで、私に話してくれない。
やっぱり嫌だったのかな。それはそれでショックだな……でもとにかくずっとこっちを見てるんだよね。
「いや、ビックリだよ! 誰が来たのかと思ってねぇ」
「いえ、すみません。お祭り当日に騒がせてしまいましたね」
「確かにビックリだけどさっ。やっぱりアートって女の子でもかなりの美人さんだねぇ! どこのお嬢様が間違えて来たのかと思ったよ?! むしろこっちの方が自然なくらいさっ」
「ハハッ、ありがとうございます」
リタさんが居てくれて良かった……
アルファルドと二人だけだったら、絶対無言のまま領地まで行きそうだし。
「旦那様? ……旦那様!! なんとか言ったらどうだい!?」
「……」
「まったく、そんな不甲斐ない男に育てた覚えはないよ!? 女性に褒め言葉の一つも言えないのかいっ」
「……あ、……いや……」
ひたすら私を見てたアルファルドは、リタさんに言われてハッとしたみたいに我に返ってた。
うぅ……、無理に言わそうとしなくていいんだけどな。
そのへんはそこまで期待してなかったし。とりあえずこの姿でも拒絶されなければそれだけでいいから。
「リタさん、大丈夫ですよ。俺が急にこんな格好で来たから、アルファルドも戸惑ってるんだと思います」
正面にいるアルファルドにニコッと笑いかけると、ビクッとしたみたいに腕組んでそっぽを向いてしまった。
んーー??
これはどういう反応だろう? 今までのとは違う感じだな?
「アルファルド?」
呼びかけるけど、今度はこっちを見ようとしない。腕組んで横向いたままの状態。
「はぁ、ゴメンよアート。気を悪くしないでおくれ。本当に困った旦那様だよー……」
「いえ、大丈夫です」
横向いて馬車の外をずっと見てる。けど、髪から出てる耳が赤くなってる。
なんだろう?もしかして照れてるのかなぁ?
移動中だけど席を立ってアルファルドの隣に移動する。
「アート?」
リタさんが驚いた顔して移動した私を見てる。
アルファルドも急に隣に座った私を驚きながら見て固まってる。
「なぁ、アルファルド。お前がそんなに嫌なら、離れて行動するよ?」
私も横向いていつもみたいにアルファルドの頬に手を伸ばした。
そっと頬に触れると、アルファルドはまたビクッとしてて体ごと思いきり横にずらしてる。
うん、やっぱり駄目だね。
避けられたショックで、胸がズキズキと痛む。
ハァ……、失敗しちゃったな。これは結構傷つく……
行き場を失った手を下へ下ろした。
アルファルドはそのまま止まってて、でも口は開いて何か言いたそうで。
でも精神的なダメージが強くて、そんなこと気にしてる余裕が私にはなかった。
「駄目だよ、アート! もっと旦那様に近づいておくれ!!」
「……へっ?」
反対側の席から凄い勢いで思い出したように捲し立てて話してるリタさん。
「丁度良かったよ! 旦那様ってさ、この年になっても全然女に縁がなくてさっ。ちょっと近づいただけで睨んだり避けたりするんだよ! だからこれを機会に女慣れしてもらうのと、あのバカ女を牽制するのにもってこいだよっ!!」
え……? なんの話し??
リタさんて結構容赦なくアルファルドをディスってるよね。
とりあえず体の向きをリタさんの方に向き直して、距離を空けてアルファルドの隣に座って聞き返す。
「ば、バカ女……って、なんのことですか?」
「いやね……、アートには関係ないと思って言わなかったけどさぁ…公爵領に旦那様を狙ってる馬鹿な女がいてねっ」
「えぇっ!?」
嘘でしょ!?アルファルド狙いの女の子なんて居ないと思ってたのに……
「狙ってるって言っても目的は公爵家の爵位さ。その女の家は成り上がりの男爵家でね。金で爵位を買った口で、自分と一緒になれば借金を全額返済してやるって言ってるのさ」
座席に座ったまま、驚きとショックを隠せない。いくら爵位狙いでも、アルファルドに近づく女がいたなんて!
けどそんな上手い話だったら、アルファルドも簡単に受けちゃいそうだけど……とりあえず借金は無くなるわけだし。
疑問をそのまま口にしてみる。
「でも……、公爵家にしたら願ってもない申し出なんじゃ……?」
「やめとくれ! いくら借金が無くなってもあんな女、こっちから願い下げだよ!!」
「は、はぁ……?」
リタさんは自分のことみたいに顔を歪めて、吐き捨てるみたいに話してる。
横にいるアルファルドを見ると、心底嫌そうな不機嫌オーラがひしひしと湧き出てる。
「えーっと、もしかしてアルファルドの好みじゃないとか?」
「…好みの問題じゃない。…アレは……生理的に無理だ」
あ、やっと喋ってくれた。
でも物凄く嫌そうに話してるってことは、アルファルドも受ける気は無いってことかな。しかもアレ呼ばわりだし……
それ聞いて安心した。
「もうさ……なんだろ、上からの物言いが酷くてね……。いくら公爵家が落ちぶれてるからって、旦那様を蔑ろにするような外道な言い方しかしないんだよ!」
反対側の席でめちゃくちゃ怒ってるリタさん。
その様子に思わず苦笑しちゃう。
「だからさ、アート。いい機会だから旦那様と仲良いとこ見せつけて、あのバカ女をギャフンと言わせてやっておくれよ! 旦那様だって、こんな可愛い恋人がいるんだってさっ!!」
もう拳握りあげて、腹の底から声出してるリタさん。よっぽど嫌いみたいだね。
「俺は、別に構いませんが……」
「お願いだよ、アート!」
協力してあげたいけど……、肝心のアルファルドは嫌そうな感じだし、演技するならこんな状態じゃすぐバレちゃう。
横向いて隣に座ってるアルファルドを見上げた。
「アルファルド……お前が望むなら俺は協力する。でも、お前が嫌なら俺は何もしない。お前が選べ」
ジッとアルファルドを見つめて答えを待った。
私がどうにかしたくても、アルファルドが協力的じゃないなら意味がないよね。
だったら寧ろ何もしない方がいい。
誰かに言われてやるんじゃなくて、自分が望んで決めてほしい。
アルファルドは私の顔を見たまま、悩んでるみたいだった。
「…お、お前は……嫌じゃ、ないのか……?」
ちょっと引き気味で私を見ながら、ぎこちなく話し出したアルファルド。
「俺は構わないって言ったぞ?」
「……」
なんだか煮えきらない感じ。こっちがもどかしくなっちゃうよ。何を迷ってるのかわからないけど、嫌なら嫌ってはっきり言えばいいのに……思わずため息が出ちゃうよ。
「無理するな。俺は気にしないし、お前がどうにかできるなら特に悩む必要もないだろ?」
とりあえず安心させるように笑顔で話した。
アルファルドは膝の上に置いてあった拳を握って、しばらくしてからようやく口を開いてくれた。
「…無理は、してない。…お前が嫌じゃないなら……頼む……」
「本当か?」
「…あぁ」
嬉しい! その子より私の方がまだいいって事だよね。
他人に興味のないアルファルドが生理的に無理って言うくらいだから、相当酷い感じの子なのかな……
「良かったよ! 旦那様も了承してくれてさっ」
反対側にいたリタさんも、安心したみたいに私達を見て笑ってた。
「いいか、アルファルド! 自分で決めたんだから、ちゃんと俺に協力しろよ? わかったな!」
一応念押しして、隣りにいるアルファルドにズイッと迫って脅すように問いかける。
後で嫌だとかこんなの無理だとか言われたくないし。言質取っとかないと。
「…うっ、……わ、わかった……」
「リタさん。今の聞きましたね?」
「あぁ。バッチリ聞いたよ!」
私とリタさんお互い顔を見合わせて頷いた。
アルファルドはそんな私達を不思議そうに見てる。
私は立ち上がると、隣で座ってるアルファルドの膝の上に腰を下ろして、横を向いて間近にある顔を見つめた。
「…あ! …アトリクス!?」
慌てて膝から降ろそうと手を出してくるから、すかさずアルファルドの首に腕を回した。
「なっ……!」
「こら。協力するって言ったよね?」
離れられないように身体も密着させて、この時とばかりに胸とかも押しつけて、顔もかなりの寄せて至近距離でにっこり笑う。
「恋人同士ならこのくらい当たり前でしょ? ほら……腰に手を回してもっと抱き寄せて?」
「…っ、…ぅ!」
前髪で隠れててもわかるくらいアルファルドの首元まで赤くなってる。
んー……女慣れしてないって本当なんだ……
これはこれで嬉しい反応だな。
アルファルドの膝に座ると、私の方が目線が上になるんだよね。
「ねぇ、アルファルド。はやくぅ……」
「…っ!」
前髪から出てる耳元に口を寄せて囁くように話すと、アルファルドはビクッと身体を震わせて、おずおずと私の腰に手を回してきた。
それがまた嬉しくて、首に回した手を胸元に移動させて甘えるように体ごとピタッとくっつけた。
「ふふっ、嬉しい!」
「…あっ、う……アト……リクスっ……」
アルファルドの心臓の音が凄く速くなってるのが良く判る。リタさんが見てるのなんて気にもしないで、思いっきりアルファルドに甘えまくる。
はぁ……、このまま時間が止まればいいのに……
もう、めちゃくちゃ幸せ~!!
本来の姿でアルファルドに抱きつけるなんて、こんなのもう二度とないよね!
今のうちに堪能しとかないとっ!!
今までにないくらい甘いやり取りが繰り広げられてる。
「やるね、アート! あんた絶対女の方が向いてるよ!」
私達のやり取りを目の当たりにしながら、感心したように頷きながらリタさんが呟いてた。
公爵家の家紋の入った馬車に乗り込んで、御者はベッテルさんがするみたい。
私とリタさんが隣で、アルファルドは一人で対面に座ってる。公爵家のわりと小さめの馬車でそれほど豪華さはないけど、3人で乗るには全く問題ない広さだった。
「それで、これは一体どういう事だい!?」
「どうって……? 種明かしはコレです」
指に嵌めた黒曜石の付いた指輪を前に出して見せる。
これはアウリガルで自分で買って頼んだ指輪。
「指輪かい?」
「はい。これマジックアイテムなんです」
リタさんが納得したように呟いてる。
これも普通の指輪だったけど、自分で魔法付与して今はマジックアイテムになってる。
アルファルドの髪色に似てたから髪飾りとセットで頼んじゃったんだよね。
「魔法の……アイテムってことかい? はぁ……そんなもので性別を変える事が可能性なんだね」
けど、実際は違うんですよ。性別は変えてるけど、こっちが本当の姿なんです。
とは言えないよね……
「えぇ。ある一定の時間だけ変えることができます。持続性はないので、お祭りの間だけこの姿でいることが出来るんです」
説明してる最中もアルファルドは無言でジーッとこっちを見てるだけで、私に話してくれない。
やっぱり嫌だったのかな。それはそれでショックだな……でもとにかくずっとこっちを見てるんだよね。
「いや、ビックリだよ! 誰が来たのかと思ってねぇ」
「いえ、すみません。お祭り当日に騒がせてしまいましたね」
「確かにビックリだけどさっ。やっぱりアートって女の子でもかなりの美人さんだねぇ! どこのお嬢様が間違えて来たのかと思ったよ?! むしろこっちの方が自然なくらいさっ」
「ハハッ、ありがとうございます」
リタさんが居てくれて良かった……
アルファルドと二人だけだったら、絶対無言のまま領地まで行きそうだし。
「旦那様? ……旦那様!! なんとか言ったらどうだい!?」
「……」
「まったく、そんな不甲斐ない男に育てた覚えはないよ!? 女性に褒め言葉の一つも言えないのかいっ」
「……あ、……いや……」
ひたすら私を見てたアルファルドは、リタさんに言われてハッとしたみたいに我に返ってた。
うぅ……、無理に言わそうとしなくていいんだけどな。
そのへんはそこまで期待してなかったし。とりあえずこの姿でも拒絶されなければそれだけでいいから。
「リタさん、大丈夫ですよ。俺が急にこんな格好で来たから、アルファルドも戸惑ってるんだと思います」
正面にいるアルファルドにニコッと笑いかけると、ビクッとしたみたいに腕組んでそっぽを向いてしまった。
んーー??
これはどういう反応だろう? 今までのとは違う感じだな?
「アルファルド?」
呼びかけるけど、今度はこっちを見ようとしない。腕組んで横向いたままの状態。
「はぁ、ゴメンよアート。気を悪くしないでおくれ。本当に困った旦那様だよー……」
「いえ、大丈夫です」
横向いて馬車の外をずっと見てる。けど、髪から出てる耳が赤くなってる。
なんだろう?もしかして照れてるのかなぁ?
移動中だけど席を立ってアルファルドの隣に移動する。
「アート?」
リタさんが驚いた顔して移動した私を見てる。
アルファルドも急に隣に座った私を驚きながら見て固まってる。
「なぁ、アルファルド。お前がそんなに嫌なら、離れて行動するよ?」
私も横向いていつもみたいにアルファルドの頬に手を伸ばした。
そっと頬に触れると、アルファルドはまたビクッとしてて体ごと思いきり横にずらしてる。
うん、やっぱり駄目だね。
避けられたショックで、胸がズキズキと痛む。
ハァ……、失敗しちゃったな。これは結構傷つく……
行き場を失った手を下へ下ろした。
アルファルドはそのまま止まってて、でも口は開いて何か言いたそうで。
でも精神的なダメージが強くて、そんなこと気にしてる余裕が私にはなかった。
「駄目だよ、アート! もっと旦那様に近づいておくれ!!」
「……へっ?」
反対側の席から凄い勢いで思い出したように捲し立てて話してるリタさん。
「丁度良かったよ! 旦那様ってさ、この年になっても全然女に縁がなくてさっ。ちょっと近づいただけで睨んだり避けたりするんだよ! だからこれを機会に女慣れしてもらうのと、あのバカ女を牽制するのにもってこいだよっ!!」
え……? なんの話し??
リタさんて結構容赦なくアルファルドをディスってるよね。
とりあえず体の向きをリタさんの方に向き直して、距離を空けてアルファルドの隣に座って聞き返す。
「ば、バカ女……って、なんのことですか?」
「いやね……、アートには関係ないと思って言わなかったけどさぁ…公爵領に旦那様を狙ってる馬鹿な女がいてねっ」
「えぇっ!?」
嘘でしょ!?アルファルド狙いの女の子なんて居ないと思ってたのに……
「狙ってるって言っても目的は公爵家の爵位さ。その女の家は成り上がりの男爵家でね。金で爵位を買った口で、自分と一緒になれば借金を全額返済してやるって言ってるのさ」
座席に座ったまま、驚きとショックを隠せない。いくら爵位狙いでも、アルファルドに近づく女がいたなんて!
けどそんな上手い話だったら、アルファルドも簡単に受けちゃいそうだけど……とりあえず借金は無くなるわけだし。
疑問をそのまま口にしてみる。
「でも……、公爵家にしたら願ってもない申し出なんじゃ……?」
「やめとくれ! いくら借金が無くなってもあんな女、こっちから願い下げだよ!!」
「は、はぁ……?」
リタさんは自分のことみたいに顔を歪めて、吐き捨てるみたいに話してる。
横にいるアルファルドを見ると、心底嫌そうな不機嫌オーラがひしひしと湧き出てる。
「えーっと、もしかしてアルファルドの好みじゃないとか?」
「…好みの問題じゃない。…アレは……生理的に無理だ」
あ、やっと喋ってくれた。
でも物凄く嫌そうに話してるってことは、アルファルドも受ける気は無いってことかな。しかもアレ呼ばわりだし……
それ聞いて安心した。
「もうさ……なんだろ、上からの物言いが酷くてね……。いくら公爵家が落ちぶれてるからって、旦那様を蔑ろにするような外道な言い方しかしないんだよ!」
反対側の席でめちゃくちゃ怒ってるリタさん。
その様子に思わず苦笑しちゃう。
「だからさ、アート。いい機会だから旦那様と仲良いとこ見せつけて、あのバカ女をギャフンと言わせてやっておくれよ! 旦那様だって、こんな可愛い恋人がいるんだってさっ!!」
もう拳握りあげて、腹の底から声出してるリタさん。よっぽど嫌いみたいだね。
「俺は、別に構いませんが……」
「お願いだよ、アート!」
協力してあげたいけど……、肝心のアルファルドは嫌そうな感じだし、演技するならこんな状態じゃすぐバレちゃう。
横向いて隣に座ってるアルファルドを見上げた。
「アルファルド……お前が望むなら俺は協力する。でも、お前が嫌なら俺は何もしない。お前が選べ」
ジッとアルファルドを見つめて答えを待った。
私がどうにかしたくても、アルファルドが協力的じゃないなら意味がないよね。
だったら寧ろ何もしない方がいい。
誰かに言われてやるんじゃなくて、自分が望んで決めてほしい。
アルファルドは私の顔を見たまま、悩んでるみたいだった。
「…お、お前は……嫌じゃ、ないのか……?」
ちょっと引き気味で私を見ながら、ぎこちなく話し出したアルファルド。
「俺は構わないって言ったぞ?」
「……」
なんだか煮えきらない感じ。こっちがもどかしくなっちゃうよ。何を迷ってるのかわからないけど、嫌なら嫌ってはっきり言えばいいのに……思わずため息が出ちゃうよ。
「無理するな。俺は気にしないし、お前がどうにかできるなら特に悩む必要もないだろ?」
とりあえず安心させるように笑顔で話した。
アルファルドは膝の上に置いてあった拳を握って、しばらくしてからようやく口を開いてくれた。
「…無理は、してない。…お前が嫌じゃないなら……頼む……」
「本当か?」
「…あぁ」
嬉しい! その子より私の方がまだいいって事だよね。
他人に興味のないアルファルドが生理的に無理って言うくらいだから、相当酷い感じの子なのかな……
「良かったよ! 旦那様も了承してくれてさっ」
反対側にいたリタさんも、安心したみたいに私達を見て笑ってた。
「いいか、アルファルド! 自分で決めたんだから、ちゃんと俺に協力しろよ? わかったな!」
一応念押しして、隣りにいるアルファルドにズイッと迫って脅すように問いかける。
後で嫌だとかこんなの無理だとか言われたくないし。言質取っとかないと。
「…うっ、……わ、わかった……」
「リタさん。今の聞きましたね?」
「あぁ。バッチリ聞いたよ!」
私とリタさんお互い顔を見合わせて頷いた。
アルファルドはそんな私達を不思議そうに見てる。
私は立ち上がると、隣で座ってるアルファルドの膝の上に腰を下ろして、横を向いて間近にある顔を見つめた。
「…あ! …アトリクス!?」
慌てて膝から降ろそうと手を出してくるから、すかさずアルファルドの首に腕を回した。
「なっ……!」
「こら。協力するって言ったよね?」
離れられないように身体も密着させて、この時とばかりに胸とかも押しつけて、顔もかなりの寄せて至近距離でにっこり笑う。
「恋人同士ならこのくらい当たり前でしょ? ほら……腰に手を回してもっと抱き寄せて?」
「…っ、…ぅ!」
前髪で隠れててもわかるくらいアルファルドの首元まで赤くなってる。
んー……女慣れしてないって本当なんだ……
これはこれで嬉しい反応だな。
アルファルドの膝に座ると、私の方が目線が上になるんだよね。
「ねぇ、アルファルド。はやくぅ……」
「…っ!」
前髪から出てる耳元に口を寄せて囁くように話すと、アルファルドはビクッと身体を震わせて、おずおずと私の腰に手を回してきた。
それがまた嬉しくて、首に回した手を胸元に移動させて甘えるように体ごとピタッとくっつけた。
「ふふっ、嬉しい!」
「…あっ、う……アト……リクスっ……」
アルファルドの心臓の音が凄く速くなってるのが良く判る。リタさんが見てるのなんて気にもしないで、思いっきりアルファルドに甘えまくる。
はぁ……、このまま時間が止まればいいのに……
もう、めちゃくちゃ幸せ~!!
本来の姿でアルファルドに抱きつけるなんて、こんなのもう二度とないよね!
今のうちに堪能しとかないとっ!!
今までにないくらい甘いやり取りが繰り広げられてる。
「やるね、アート! あんた絶対女の方が向いてるよ!」
私達のやり取りを目の当たりにしながら、感心したように頷きながらリタさんが呟いてた。
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