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ドラコニス公爵家救済計画 4
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アルファルドはずっと私を見たまま止まってる。
私はアルファルドがちゃんと向き合ってくれたことにホッとして、とにかく嬉しくてニコニコしてた。
「じゃあ、戻ろうぜ」
「……あぁ」
講義すっぽかして来ちゃった。サボったのなんて初めてだな。
でもあの場にいるのは無理だった。
言葉は少なかったけど、ずっと私の肩を寄せてくれたことが何より嬉しくて、理由はわからないままでもその気持ちだけで十分伝わった。
アルファルドは私から離れて立ち上がった。
私もお尻に付いた葉っぱをパンパンと叩いて立ち上がる。
二人で講堂に向かって走ってきたレンガ道を歩き出した
「…アトリクス」
「ん? どうした?」
二人で並んで歩く帰り道。
無言で歩いてたアルファルドが急に口を開いた。
「…何も、聞かないのか……」
歩きながら、俯き加減でポソッと話すアルファルド。
「え……? だって、お前にもよくわからないんだろ?」
「……」
「お前が追いかけて来てくれただけで、すげぇ嬉しかった。俺にはそれだけで十分だ」
隣で歩きながらアルファルドを見て、ニッと笑った。
「…お前は、簡単に……許すんだな……」
「へ……?」
「…俺みたいな、どうしようもない奴……放っておけばいい…」
私はその言葉にピタッと足を止めた。
隣を歩いてたアルファルドも足を止めて、こっちを見てる。
アルファルドの胸ぐらを掴んで、自分の方までグイッと引き寄せた。
「…なっ!」
「今の言葉は許せないな……」
間近まで引き寄せたアルファルドの顔をキッと睨んだ。
「お前はどうしようもない奴なんかじゃない! だから、今の言葉は取り消せ!」
「…アト……リクス?」
アルファルドは誰よりも頑張り屋で立派で思いやりのある人なのに……!
周りの人間が悪く言ってるからって、自分の評価を下げないでほしい。
「たとえお前自身であっても、お前を悪く言うのは許さない!」
「……」
これまでの事を思えば、仕方ないのかもしれない。
でも、私はそんなの嫌だ。
掴んでた胸ぐらから手を離して、今度は腕を伸ばしてアルファルドの頬にそっと両手を添えた。
フッと安心させるように微笑んでから、アルファルドを真っ直ぐ見つめた。
「お前は違うだろ? 俺の知ってるアルファルドは、そんな奴じゃない」
戸惑ってる様子のアルファルドは言葉が出ないみたいだった。
冬場の冷気を含んだ風が、ふわっと私達の身体を通り過ぎていく。
「自分を貶めるな。お前は誰よりも凄い奴だ」
アルファルドは呆然としたまま何も言わないで、ただ私をずっと見てた。
「お前より気高くて高潔な人間を俺は知らない。だからもっと自信を持て……」
アルファルドを見上げながらニコッと笑った。
「――…」
周りから称賛されてる人間がみんな偉いわけじゃない。それは色々な人間を見てきたからよくわかるんだ。
「………また、だ」
「ん?」
「…アトリクス。お前といると……自分でも、よくわからない感情が湧いてくる……」
添えてた頬から手を離して、今度はアルファルドの顔をまじまじと見てる。
「ん……? わからない感情? どんなだ?」
アルファルドは自分の左胸の制服を掴んでて、下を向きながら苦しそうにしてる。
「…それが……言葉にするのが、難しい……」
「??」
アルファルドにもわからないんじゃ、私にはもっとわからないなぁ。
具体的に言ってくれれば分析できるけど、今は色々戸惑ってるみたい。
「そっか。あんま難しく考えんなよ。わかったら教えてくれ」
久しぶりにできた友達に戸惑ってるのかな?
幼少期以降、アルファルドってずっと不遇の時代を過ごしてて友達なんていなかったから。
その感情に慣れるまで、今はまだそっとしてあげたほうがいいのかな。
「……あぁ」
立ち止まって話してたら、講義終了の予鈴が鳴っちゃった。
「ハハッ、完璧サボりだなっ。後で怒られそう」
「……」
「大丈夫か? 行こうぜ」
「…あぁ」
また二人で並んで歩きながら講堂へと足を進めた。
アルファルドはずっと私を見たまま止まってる。
私はアルファルドがちゃんと向き合ってくれたことにホッとして、とにかく嬉しくてニコニコしてた。
「じゃあ、戻ろうぜ」
「……あぁ」
講義すっぽかして来ちゃった。サボったのなんて初めてだな。
でもあの場にいるのは無理だった。
言葉は少なかったけど、ずっと私の肩を寄せてくれたことが何より嬉しくて、理由はわからないままでもその気持ちだけで十分伝わった。
アルファルドは私から離れて立ち上がった。
私もお尻に付いた葉っぱをパンパンと叩いて立ち上がる。
二人で講堂に向かって走ってきたレンガ道を歩き出した
「…アトリクス」
「ん? どうした?」
二人で並んで歩く帰り道。
無言で歩いてたアルファルドが急に口を開いた。
「…何も、聞かないのか……」
歩きながら、俯き加減でポソッと話すアルファルド。
「え……? だって、お前にもよくわからないんだろ?」
「……」
「お前が追いかけて来てくれただけで、すげぇ嬉しかった。俺にはそれだけで十分だ」
隣で歩きながらアルファルドを見て、ニッと笑った。
「…お前は、簡単に……許すんだな……」
「へ……?」
「…俺みたいな、どうしようもない奴……放っておけばいい…」
私はその言葉にピタッと足を止めた。
隣を歩いてたアルファルドも足を止めて、こっちを見てる。
アルファルドの胸ぐらを掴んで、自分の方までグイッと引き寄せた。
「…なっ!」
「今の言葉は許せないな……」
間近まで引き寄せたアルファルドの顔をキッと睨んだ。
「お前はどうしようもない奴なんかじゃない! だから、今の言葉は取り消せ!」
「…アト……リクス?」
アルファルドは誰よりも頑張り屋で立派で思いやりのある人なのに……!
周りの人間が悪く言ってるからって、自分の評価を下げないでほしい。
「たとえお前自身であっても、お前を悪く言うのは許さない!」
「……」
これまでの事を思えば、仕方ないのかもしれない。
でも、私はそんなの嫌だ。
掴んでた胸ぐらから手を離して、今度は腕を伸ばしてアルファルドの頬にそっと両手を添えた。
フッと安心させるように微笑んでから、アルファルドを真っ直ぐ見つめた。
「お前は違うだろ? 俺の知ってるアルファルドは、そんな奴じゃない」
戸惑ってる様子のアルファルドは言葉が出ないみたいだった。
冬場の冷気を含んだ風が、ふわっと私達の身体を通り過ぎていく。
「自分を貶めるな。お前は誰よりも凄い奴だ」
アルファルドは呆然としたまま何も言わないで、ただ私をずっと見てた。
「お前より気高くて高潔な人間を俺は知らない。だからもっと自信を持て……」
アルファルドを見上げながらニコッと笑った。
「――…」
周りから称賛されてる人間がみんな偉いわけじゃない。それは色々な人間を見てきたからよくわかるんだ。
「………また、だ」
「ん?」
「…アトリクス。お前といると……自分でも、よくわからない感情が湧いてくる……」
添えてた頬から手を離して、今度はアルファルドの顔をまじまじと見てる。
「ん……? わからない感情? どんなだ?」
アルファルドは自分の左胸の制服を掴んでて、下を向きながら苦しそうにしてる。
「…それが……言葉にするのが、難しい……」
「??」
アルファルドにもわからないんじゃ、私にはもっとわからないなぁ。
具体的に言ってくれれば分析できるけど、今は色々戸惑ってるみたい。
「そっか。あんま難しく考えんなよ。わかったら教えてくれ」
久しぶりにできた友達に戸惑ってるのかな?
幼少期以降、アルファルドってずっと不遇の時代を過ごしてて友達なんていなかったから。
その感情に慣れるまで、今はまだそっとしてあげたほうがいいのかな。
「……あぁ」
立ち止まって話してたら、講義終了の予鈴が鳴っちゃった。
「ハハッ、完璧サボりだなっ。後で怒られそう」
「……」
「大丈夫か? 行こうぜ」
「…あぁ」
また二人で並んで歩きながら講堂へと足を進めた。
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