198 / 392
アトリクスとルリオン 1
しおりを挟む
'
「おい…、アトリクスとか言ったな」
朝、寮から講堂へと移動していた廊下で、待ち構えてたルリオン様にいきなり呼び止められた。
この人は我が友マイアの想い人。
肩までの光り輝く金髪を紐で横流しに縛り、彫りの深い芽吹いた草木のような若葉色の二重、レグルス様とは違いこの人はキツめで知的な顔の作りをしてる。
ルリオン・デュ・アンキロス公子。
オクタンと二人で歩いてて、ルリオン様は廊下の壁に凭れて腕を組んでた。
「…何か用か?」
そのまま通り過ぎても良かったけど、この人を無視すると面倒だからやめといた。平気そうに話しかけたけど、内心はちょっとドキドキしてる。
壁に凭れてた体を起こしてゆっくり歩き、立ってる私の目の前で止まった。
「話がある。顔を貸せ」
「…嫌だと言ったら?」
「!……貴様はつくづく無礼な奴だ。…悪い話じゃないから着いてこい」
顔をクイッと横へ振り、庭園の方への移動を促してるみたい。
ハァ……また?
もう、ほっといてほしいな…。
「あ、アート、君……」
隣にいたオクタンが不安気な顔で私を見てる。
もう、何度目?!
メインキャラが私にいちいち構うの、やめてほしいんだけど!!
心に苛立ちを感じながら、オクタンに笑顔を向ける。
「オクタン、悪いけど先に行っててくれ。俺もすぐ戻るから」
片手でポンとオクタンの肩を叩いて話す。
「ん…うん。…んと、早く…来てね……」
「ハハッ、心配するなっ」
私を見たまま立ち止まってるルリオン様。
まだ生徒もまばらで、でも廊下歩いてる生徒は歩きながら、何事かと私達を横目で見てた。
オクタンはおずおずしながら講堂へと向かった。途中振り返りながらやっぱり心配そうだった。
「時間がない。早く来い」
今度は振り返りもせずルリオン様が足早に庭園の奥の方へと移動する。
「だったら呼び出すなよ」
ルリオン様を追って庭園のレンガ道を歩いていく。結構奥まで来たけどまだルリオン様の足は止まらない。
「…貴様、誰にものを言っている…」
「わからないのか?お前しかいないだろ」
「口の減らないやつだ!」
私もちょっと慇懃無礼に挑発する。
レグルス様もそうだけど、ルリオン様とも正直関わりたくない。
挑発でもして怒って敵対してくれる方がありがたいんだけどな。
結局庭園の一番奥まで来た。もちろん周りにだれーもいないよね。聞き耳立ててる人すらいないよ。
木々が立ち並んでる前で立ち止まり、ルリオン様はその木に寄りかかりながら私に話し出す。
「私は下手な挑発には乗らない。貴様に話がある…」
ルリオン様が寄りかかってる場所から間を空けて私も立ち止まった。
「なるべく手短にしてくれよ」
「ふんっ、いちいち癪に障る奴だ!」
挑発に乗らないのにイライラしてるなら結局乗っちゃってるし。
「私がわざわざ貴様を呼び出したのは、卒業後の話をするためだ」
まだ卒業まで半年はあるのに、もう卒業後?…というか、卒業後って私はもういない予定だし。
いきなり飛躍した話に頭をガリガリと掻く。
「あのなぁ…」
「話を遮るなっ、貴様にとってはまたとない話だ」
もうなんとなく嫌な予感しかしない。
木に寄りかかりながらルリオン様は、若干偉そうに話してる。
「…一応、聞いてやるけど…」
「貴様の態度は粗暴だが、礼儀は一応弁えている。頭脳も認めたくないが平民にしては明晰だ。容姿もまあ見れるくらいには整っている…」
え…なに?もしかして…褒められてる?いや、むしろ貶されてる??
ルリオン様って結構プライドが高くて、レグルス様以外の人の事は絶対認めないし褒めない。
レグルス様至上主義でこんな風に他人に近づくことすら珍しいのに。
素直に喜べない褒め言葉だな…まぁ、ルリオン様に認められるって中々ないんだけど…全然嬉しくない。
それに、馴れ合うつもりなんて全くないんだよね。
「レグルス殿下も貴様を気にかけている。今までない事だ…あの方は将来皇帝の座に着くことを約束されている。だからこそ下々の者には平等に接するよう努められているんだ。それがだ!貴様と話したその後から、殿下は変わられた!」
自分の意見を、まるで私なんていないみたいに好き勝手に話していくルリオン様。
「ハァ……それは、光栄なことだな…」
「そうだろう!貴様は認められたのだ!今からでも私と共に行動し、殿下のお側で働き役に立つんだ。私の補佐として殿下を支えろ。この様な誉れ高い栄誉は、平民の貴様には身に余る程だ!」
私の言葉に気を良くしたのか、ルリオン様の話しは止まらない。饒舌にペラペラと話していくんだけど、私は半分も聞いてなかった。
いやー…無理だわ…。
レグルス様至上主義なのはわかるけど…私は貴方の言いなりじゃないし。
ルリオン様ってこんなキャラだったっけ?もう少し知的な印象があったんだけど…私が平民だから、こんなぞんざいな態度取ってるだけなのかな…。
私はルリオン様へと呆れ顔を向ける。
「…話しはそれだけか?」
「いいか、今言った事を必ず実行しろ。貴様にとってこれ以上ない栄光だろう!」
私の言葉なんて全く聞いてなくて、腕を組んで横に顔を反らしたドヤ顔のルリオン様にイラッとする。
「おい…、アトリクスとか言ったな」
朝、寮から講堂へと移動していた廊下で、待ち構えてたルリオン様にいきなり呼び止められた。
この人は我が友マイアの想い人。
肩までの光り輝く金髪を紐で横流しに縛り、彫りの深い芽吹いた草木のような若葉色の二重、レグルス様とは違いこの人はキツめで知的な顔の作りをしてる。
ルリオン・デュ・アンキロス公子。
オクタンと二人で歩いてて、ルリオン様は廊下の壁に凭れて腕を組んでた。
「…何か用か?」
そのまま通り過ぎても良かったけど、この人を無視すると面倒だからやめといた。平気そうに話しかけたけど、内心はちょっとドキドキしてる。
壁に凭れてた体を起こしてゆっくり歩き、立ってる私の目の前で止まった。
「話がある。顔を貸せ」
「…嫌だと言ったら?」
「!……貴様はつくづく無礼な奴だ。…悪い話じゃないから着いてこい」
顔をクイッと横へ振り、庭園の方への移動を促してるみたい。
ハァ……また?
もう、ほっといてほしいな…。
「あ、アート、君……」
隣にいたオクタンが不安気な顔で私を見てる。
もう、何度目?!
メインキャラが私にいちいち構うの、やめてほしいんだけど!!
心に苛立ちを感じながら、オクタンに笑顔を向ける。
「オクタン、悪いけど先に行っててくれ。俺もすぐ戻るから」
片手でポンとオクタンの肩を叩いて話す。
「ん…うん。…んと、早く…来てね……」
「ハハッ、心配するなっ」
私を見たまま立ち止まってるルリオン様。
まだ生徒もまばらで、でも廊下歩いてる生徒は歩きながら、何事かと私達を横目で見てた。
オクタンはおずおずしながら講堂へと向かった。途中振り返りながらやっぱり心配そうだった。
「時間がない。早く来い」
今度は振り返りもせずルリオン様が足早に庭園の奥の方へと移動する。
「だったら呼び出すなよ」
ルリオン様を追って庭園のレンガ道を歩いていく。結構奥まで来たけどまだルリオン様の足は止まらない。
「…貴様、誰にものを言っている…」
「わからないのか?お前しかいないだろ」
「口の減らないやつだ!」
私もちょっと慇懃無礼に挑発する。
レグルス様もそうだけど、ルリオン様とも正直関わりたくない。
挑発でもして怒って敵対してくれる方がありがたいんだけどな。
結局庭園の一番奥まで来た。もちろん周りにだれーもいないよね。聞き耳立ててる人すらいないよ。
木々が立ち並んでる前で立ち止まり、ルリオン様はその木に寄りかかりながら私に話し出す。
「私は下手な挑発には乗らない。貴様に話がある…」
ルリオン様が寄りかかってる場所から間を空けて私も立ち止まった。
「なるべく手短にしてくれよ」
「ふんっ、いちいち癪に障る奴だ!」
挑発に乗らないのにイライラしてるなら結局乗っちゃってるし。
「私がわざわざ貴様を呼び出したのは、卒業後の話をするためだ」
まだ卒業まで半年はあるのに、もう卒業後?…というか、卒業後って私はもういない予定だし。
いきなり飛躍した話に頭をガリガリと掻く。
「あのなぁ…」
「話を遮るなっ、貴様にとってはまたとない話だ」
もうなんとなく嫌な予感しかしない。
木に寄りかかりながらルリオン様は、若干偉そうに話してる。
「…一応、聞いてやるけど…」
「貴様の態度は粗暴だが、礼儀は一応弁えている。頭脳も認めたくないが平民にしては明晰だ。容姿もまあ見れるくらいには整っている…」
え…なに?もしかして…褒められてる?いや、むしろ貶されてる??
ルリオン様って結構プライドが高くて、レグルス様以外の人の事は絶対認めないし褒めない。
レグルス様至上主義でこんな風に他人に近づくことすら珍しいのに。
素直に喜べない褒め言葉だな…まぁ、ルリオン様に認められるって中々ないんだけど…全然嬉しくない。
それに、馴れ合うつもりなんて全くないんだよね。
「レグルス殿下も貴様を気にかけている。今までない事だ…あの方は将来皇帝の座に着くことを約束されている。だからこそ下々の者には平等に接するよう努められているんだ。それがだ!貴様と話したその後から、殿下は変わられた!」
自分の意見を、まるで私なんていないみたいに好き勝手に話していくルリオン様。
「ハァ……それは、光栄なことだな…」
「そうだろう!貴様は認められたのだ!今からでも私と共に行動し、殿下のお側で働き役に立つんだ。私の補佐として殿下を支えろ。この様な誉れ高い栄誉は、平民の貴様には身に余る程だ!」
私の言葉に気を良くしたのか、ルリオン様の話しは止まらない。饒舌にペラペラと話していくんだけど、私は半分も聞いてなかった。
いやー…無理だわ…。
レグルス様至上主義なのはわかるけど…私は貴方の言いなりじゃないし。
ルリオン様ってこんなキャラだったっけ?もう少し知的な印象があったんだけど…私が平民だから、こんなぞんざいな態度取ってるだけなのかな…。
私はルリオン様へと呆れ顔を向ける。
「…話しはそれだけか?」
「いいか、今言った事を必ず実行しろ。貴様にとってこれ以上ない栄光だろう!」
私の言葉なんて全く聞いてなくて、腕を組んで横に顔を反らしたドヤ顔のルリオン様にイラッとする。
3
お気に入りに追加
324
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる