上 下
121 / 392

ポーション作り 8

しおりを挟む
'

 また日々が過ぎ、そろそろ秋も半ばで冬へと移り変わりそう。

 もう冬になるのか…早いなー…。
 もし、魔界王デネボラが復活するなら、それは2学年の冬。あと一年ちょっとてことだよね。
 ゲームのアルファルドが自分の魔力と生命を引き換えに、魔界王デネボラを復活させたのが。
 
 でも、この世界のアルファルドはポラリスとの接触もないし、今のところ闇落ちする気配もない。

 この結果がどう出るのか…今はまだわからないけど、自分なりにやれることは全力でやってきた。
 
 私とアルファルドの関係も友達って呼べるものに変わって来てる。まだ油断出来ないけどさ。

 ようやくだよ!?…まず大前提の友達になるっていうのに、まさかここまで時間がかかるとは思ってもみなかった…。
 
 現実のアルファルドって本っ当に手強い!





 ◇




 
 

「よしっ、今日はハイポーションを作るぞ!オクタン…」
「んと、水」

 自分でわかってるのか言われなくても鍋に水を入れていく。微細な魔力操作も完璧になって、溢れることなくすんなりと鍋に水を注いでく。

「次、アルファルド!」
「…ほら」

 こっちも言われなくても燭台に火がついてる。

 私が魔力を流しながら手慣れた手付きで薬草、毒草を順番に投入して、あっという間にハイポーションが完成。

「んと…すごい…ね」
「うんうん、いい感じ!綺麗なピンク色で、ハイポーションも品質ともに問題ないな!」
「……信じられん」

 光に透かして確認するけど、ダンジョン産のハイポーションと遜色はない。

 小瓶を口に付けてグイッと中身を飲み干すけど、効果はダンジョン産の物と全く同じ。

 私は特に愚者の輪ダークアイテムをつけてるから常に魔力が消費してて、だからこそハイポーションを使って体力魔力ともに回復すると、微々たるものでも身体が軽くなるのがわかる。

「万能薬も作れるけど、これは追々かな。アカデミアには材料が無いし、何よりこれを製造するのは危険過ぎる…」

 万能薬とは人間の身体の全ての状態異常を回復する特効薬。ポーションとかハイポーションて怪我の治癒とか体力、魔力の回復だけだけど、万能薬はどんな病気も不治の病さえも治せる物凄い薬だってことだよね。

 これってポーションやハイポーションなんかよりさらにレアな薬で、近年ではダンジョン産でも発見されていない。

 ポーションの取引価格はおよそ50万G…五千万円だとして、万能薬は一本でもう数十億超えの代物。

 今の段階ではやめとこ。

 未知の領域に踏み込むとろくな事ないし、ポーション製造だけでも十分採算は取れる。

「アルファルド…」
「…なんだ」
「近々学長室へ行くから、その時はついて来てくれないか?」

 出来上がったハイポーション片手に、ニコリと笑って窓際にいたアルファルドにお願いする。
 色んな意味でアルファルドがいないと意味がないんだ。私としても隣にいてくれるだけで心強いし。

 窓際にいたアルファルドは、少し離れた私の近くまで歩み寄ってくる。

「…アトリクス、無茶はするな」
「ハハッ、心配してくれてるのか?」
「……あぁ」
「っ……マジか…、すげぇ嬉しい…」

 予想外の言葉に驚いたけど、嬉しすぎて思わず笑みが溢れる。
 アルファルドはまたまたふいっとそっぽを向いてる。

 だいぶ心を開いてくれてるのか、アルファルドがちゃんと話してくれるし、こんなふうに私を気遣ってくれてる!
 
 今までが今までだったから、現実味がまるでなくて…やっぱまだ夢見てるみたい。

 見下ろしてるアルファルドの表情は前髪が邪魔してよく見えない。
 うーん、もう少しちゃんとアルファルドの顔見てみたいな…。
 
「アヴィオール学長はかなり厄介なんだ。だから、お前がいてくれるとすごく頼もしい…」
「…俺は構わないが」
「本当かっ…じゃあ、よろしくな!アルファルド」

 すぐ側にいるアルファルドは、今度はちゃんとこっちを見て頷いてくれた。

「あ…んと…んと、あの…これも…移す?」

 なぜか気まずそうに私に話しかけてきたオクタン。

 あ、オクタンの存在を忘れてた。  
 机に置いてあった冷めた鍋を持って、右往左往してる。

「あっ、悪ぃなオクタン。それも全部その小瓶に移してくれ。さて、まだまだ作るぞ~!」
「…まだ作るのか?」
「あぁ、もちろんだ!これからの事も考えると全然足りない。数は作っておかないとな」
「んと…たくさん?」

 発注した小瓶の製造も順調だし、数は多ければ多いほどいいからね。売ることを視野に考えてるし、もし販売するってなったときに注文が殺到すると思うから。

「うん、そうなんだ。ただ、置いとく場所がないんだよな…」

 チラッとアルファルドを見ると、気づいてくれたのか少し考えてから口を開いた。

「…うちに置いといてもいいが…」
「いいのか?!助かるぜっ」

 にっこりと笑って答える。

 よしっ、かかった!これで大体の下準備は整ったかな。
 あとはひたすら私がポーション、ハイポーションを作れば準備オッケー!
 

 さて、これで始められるね!


しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

契約結婚!一発逆転マニュアル♡

伊吹美香
恋愛
『愛妻家になりたい男』と『今の状況から抜け出したい女』が利害一致の契約結婚⁉ 全てを失い現実の中で藻掻く女 緒方 依舞稀(24) ✖ なんとしてでも愛妻家にならねばならない男 桐ケ谷 遥翔(30) 『一発逆転』と『打算』のために 二人の契約結婚生活が始まる……。

きみは運命の人

佐倉 蘭
恋愛
青山 智史は上司で従兄でもある魚住 和哉から奇妙なサイト【あなたの運命の人に逢わせてあげます】を紹介される。 和哉はこのサイトのお陰で、再会できた初恋の相手と結婚に漕ぎ着けたと言う。 あまりにも怪しすぎて、にわかには信じられない。 「和哉さん、幸せすぎて頭沸いてます?」 そう言う智史に、和哉が言った。 「うっせえよ。……智史、おまえもやってみな?」 ※「偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎」のExtra Story【番外編】です。また、「あなたの運命の人に逢わせてあげます」「お見合いだけど、恋することからはじめよう」のネタバレも含みます。 ※「きみは運命の人」の後は特別編「しあわせな朝【Bonus Track】」へと続きます。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...