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ポーション作り 5

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 散々エルナト先生からお説教をくらって、ヘトヘトになってから寮へと帰った。
 
「あっ、アート、君?おかえり…遅かった、ね?」

 寮の部屋で勉強してたオクタンが、私がドアを開けると椅子から降りてきて駆け寄ってくれた。

「おぅ、疲れたぜ…オクタン。エルナト先生の説教が長くて…」
「え?…んと…エルナト、教授の?」
 
 のろのろ歩いてそのまま2段ベッドの下へボブッとうつ伏せた。

 ポーションの説明もだけど…、アルファルドとの関係についてもだいぶ追及されたし。 
 どうにか躱したけど…。
 
 ベッドで目を閉じながら、近づいてくるオクタンの気配を感じる。
 心配してくれてるのか、ベッドの側でオロオロしてるのがよくわかる。
 うつ伏せたままオクタンの方へ顔だけ向けてニコッと笑った。

「とりあえず説明してきた。後は販売許可が降りるか…アヴィオール学長との勝負だな…」
「あ、アヴィオール…学長…」
「あの学長かなり手強いからな。簡単に許可してくれるとは思えない」
「ん、そ…だね?」

 それからまた顔を布団に押し付けた。 

 アヴィオール学長はああ見えて、帝国でも唯一の三属性持ちの魔法使い。
 先の他国との大戦でも活躍したアヴィオール学長。防御魔法に特化してる学長は、前線で三属性を操り帝国を守った。知識量も優れていて、帝国の賢者とも呼ばれる油断のできない人。
 
「ハァ……次から次に。前途多難だ……」

 横向くとやっぱりオクタンが心配そうにこっちを見てる。やっぱりオクタンて小動物だよねー。

 その姿にちょっと癒される。

「あ、アート、君。あの…良かったら…その…」
「んー…どうした?」
「今度、の休み…んと…うち、うちに…来ない?」

 ベッドの側にいたオクタンは思い切って切り出したみたいで、言った後に顔を赤くしてた。

「…そういえばオクタンち行ってなかったな。俺が遊びに行って迷惑じゃないのか?」
「あ、んと、全然…大丈夫!帝都、のお屋敷…は、今、誰も…いない、から…」
「何でだよ」
「え…、んと…スタンピード、の時に…家族は、領地…に帰って…、今は、僕だけ…」

 家族のこと話してるのに、オクタンはなぜか悲しそうで。もじもじしてるのは変わらないのに、表情が暗かった。
 私はベッドから起き上がると、座り直してオクタンと向き合った。

「そっか。じゃあ気兼ねなくお邪魔しようかな!」
「あ、うん!へへっ…」

 嬉しそうに笑うオクタン可愛いなー。
 うんうん、オクタンてやっぱり癒やし系だね。

 こうして次の休み、急遽オクタンちのお屋敷でチィズル男爵家へと遊びになった。



 


 ◇







「お邪魔しまーす」
「んと…どうぞ!」 
 
 大きさでいえばドラコニス公爵家の方が断然凄かったけど、チィズル男爵家のお屋敷も中々のものだった。
 造船業で儲けてるおかげか、お屋敷で使われてる家具や調度品も良い物が使われてた。
 
「ようこそいらっしゃいました。お部屋までご案内致します」

 チィズル家の執事のクリスさん。

 割りと若い感じの執事で、口調は丁寧なのにニコリともしない厳しめな感じ。
 私が平民だと聞かされているのか、歓迎されてない感じがヒシヒシと伝わってくる。
 オクタンの部屋まで歩く間なんて無言で、かなり感じが悪い。
 オクタンも何だかビクビクしてる感じで、自分の方が立場は偉いのによくわからない関係図だった。

「ただいまお茶をお持ち致します。しばらくお待ち下さい」

 部屋に着くなりそう言って、さっさと行ってしまった。

 オクタンに促されてソファーに座ってから、早速体乗り出して問い詰めた。

「俺、来て良かったのか?だいぶ歓迎されてないぞっ」
「あ、んと…クリスは、いつも、厳しくて…」
「え?いつもあぁなのか?」
「うん…ぼ、僕が、こんな、だから…」

 対面式のソファーに座ってやっぱりもじもじしてるオクタン。
 まぁ、シャキッとはしてないけど、それがオクタンの可愛いとこだし。
 それを執事がどうのってのもどうなんだろう…。
 他人の家だし、口出しはしないけどさ。

 しばらくするとお茶とお菓子が運ばれて、侍女が運んで来たけどかなり乱暴に机に置かれて思わずムッとする。
 その間もオクタンは何だか緊張してるみたいで…私にとってはやっぱり不思議な光景だった。

 とりあえずテーブルに置かれたお茶とお菓子をご馳走になる。

「そういえばご家族は領地へ行ったままなんだ?こっちには戻らないのか?」
「あ…、んと…僕が、いるから、…」
「へ…?」
「んと…僕…、兄弟いるけど…、チィズル家では、1番…出来損ないで…役立たずだから…」

 お茶にも手を付けないで、オクタンは膝に置いたズボンをずっと握り締めてた。
 
「だ、から…んと、親も…魔法が、発現するまで…んと…ずっと…僕を、避けてて……」
「……」
「でも、んと…魔法が発現、したら…今度は…、魔法使いで、貢献しろ、って…スタンピードの時に…んと、一人で、ここやに置いて、かれたんだ…」

 あぁ…、そっか…。

 オクタンがこんなにも自分に自身が無いのには、ちゃんと理由があったのか…。
 毒親に当たった子が、こうやって使用人からも酷い扱いを受けてるからだったんだね。


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