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夕暮れの図書館

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※まだミラが女だとバレる前の、本編とあまり関係ない話です。入れるタイミングのなかったものです。









「……んっ、…は…」

「…アトリクス…」

 誰もいないアカデミアの図書室。
 私は本棚に寄りかかり、上を向かされている。
 その私に覆いかぶさるみたいに本棚に片腕をついて、もう片方は私の頬にそっと添えてあって…。
 
「はぁっ……」

 2人の荒い息遣いだけが辺りにこだましてる。

 アルファルドの唇が私の唇に吸い付くみたいに重なって性急に求められるキスに、私はアルファルドの制服の前を掴んでやり過ごしてる。
 
「……はっ」

 ようやく唇を離されて、はぁ、はぁと酸素を求めて息を吸った。
 心臓が面白いくらい早く動いてて、キスの余韻に浸る間もなく、また上を向かされて唇が重なり当たり前のように舌が入ってくる。

「んっ…、ッ…」
   
 駄目だって何度も自分に言い聞かせるのに、頭と心は全く意見が違って、私の心が一身にアルファルドを求める。

 足に力が入らなくなるくらい長い長いキスが終わると、寄りかかってた本棚に背を預けずるずるとへたり込んだ。
 そのまま呼吸と鼓動を整えてると、私に合わせてアルファルドも片膝ついてしゃがんでる。

「こっちを向け、アトリクス」
「……な、んだよ」
「もっと、したい」
「…っ!もうっ、お前はしつこくてヤダ!」
「俺とこうするの、好きだろ?」
「~~っっ!!」
「お前がキスした後に、またして欲しそうな顔するのがたまらなくいい…」
「もうっ!アルファルドのバカッ!変態っ!イケメンッ!!」

 私が真っ赤になって叫んでるのを笑いながら見てて、魅惑的な美貌が愛おしそうにしてるのを見て、私の理性をひどく揺さぶるんだ。

 駄目だってわかってるのに、アルファルドが好き過ぎて拒むことが出来ないでいる。

「はっ、…お前はその変態がいいんだろ?」 

「─っ!もうっ、嫌いだ。お前なんて…」

「……イヤに、なったのか…」

 プイッと横向いて冗談で言ってるのに、本気で捉えててアルファルドは跪きながら顔をシュンと伏せてる。

「あ、…違うっ!本気にするなよ」

 跪いてるアルファルドに駆け寄ると、待ち構えてたみたいに抱きしめられた。

「…じゃあどう思ってる?」

「どうって…好きに決まってるだろ…」

「どのくらい?」

「そんなの…言葉じゃ表現しきれないよ!俺の中でお前より大事なヤツなんていない…」

「…本当か?」

「疑り深いヤツだな!俺がこんなに大好きなのも、こうやって唇を許すのも…お前以外いないんだよ!…いい加減わかれって!」

 床に座ってアルファルドの背中に腕を回してきつく抱きしめる。
 前世は今まで恋愛も何度もしてきたし、キス以上の行為も沢山したけど…それ以上にアルファルドとこうしていることは私の欲望を満たしてくれる。

「…わかってる」

「…んだよ。だったら…」

「…わかってるが、確認しないと…不安でたまらないんだ…」

 アルファルドはずっとずっと孤独で、周りからは居ないも同然の扱いをされてて…こんなふうに満たされることは一度もなくて、それを思うだけで私もたまらない気持ちになる。

「バカ野郎!わかってないだろ…こんなにわけわかんないくらい、アルファルドの事でいっぱいなのに…」

「…アトリクス。俺も同じだ…」

 お互いに抱き合ってて、私が顔を上げるとアルファルドとちょうど向かい合う形になって、目を伏せるとアルファルドの唇が自然とまた重なる。
 
 きっと…初めから逃げることなんて出来なかったんだ。自分の理性と感情には勝てなくて……。

「…っ、ふ……」

 お互いの弱さや脆さや寂しさを埋めるみたいに、ただひたすら温もりを求めあった。








 またやっちゃったよ…。

 アルファルドとキスすると、もう他のことなんかどうでも良くなるくらい気持ちが満たされて。
 また…もっとしてほしいって、私の全てが叫ぶんだよね。

 図書室から出るともう帰宅時間になってて、アカデミア内は黄昏時を迎えていた。

 私と隣に並ぶアルファルドは誰もいないのをいい事にそっと手を伸ばして肩を抱いてきて、引き寄せた私の瞼に唇を落として眩しいくらい愛しそうな笑顔を私に向けてる。


 ハァ…、やっぱりアルファルドには適わないや…。


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