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イベント鑑賞 1
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ドラコニス公爵家から寮に戻って、また日常が始まっていく。季節は秋になって、過ごしやすい日が続いてた。
この日はメインキャラ達の動きを確認するために、サークル活動をお休みして、アルファルドとかオクタンとは別行動。
気配を完璧に消して木の上で隠れながら観察してる。
「あら、ポラリス様?何故レグルス様とご一緒してるんですの?」
「ご機嫌よう、スピカ様。…レグルス殿下とは実技を共にする予定でして…」
「まぁ!どういうことですの!?レグルス殿下はわたくしと実技を共にするはずですわ!」
「やめたまえ。私はスピカ嬢と約束した覚えはない」
「っ!酷いですわ!許しませんわ、ポラリス様!!」
おぉ~、木の上から見るイベントはすっごく楽しい!
傍観者って最高だね。
ここはアカデミアの中庭にある庭園。
アルファルドに夢中になってて全然気にしてなかったけど、結構イベントは進んでるみたい。
レグルス様とポラリスは寄り添ってて、離れた場所にいるスピカは嫉妬で怒りのオーラが湧き上がってる感じ。
やっぱりさ、マイアよりスピカの方が悪役令嬢に合ってるよ。正統派って感じ。
マイアはルリオン様の恋心残してたし、レグルス様にもルリオン様にも庇われてるポラリスが許せなかったのがあったから。
ふむふむ、こっちはこんな感じなのね、よしっ、次っ!
そのまま足を強化して、風魔法使いながら別の場所へと飛んだ。
えーっと、マイアはルリオン様と良い感じになってるのかな?同じ水属性だし、選択科目になってからはかなり距離が縮まったと思うんだけど。
学内の木の1番上に登って、辺りを見渡した。
マイアが入ったサークルはルリオン様と同じで“旧世界魔法探求会”。これには沢山のご令嬢達が殺到してて人数制限が出来たくらい。
レグルス様を筆頭にルリオン様、ポラリス、マイアとメインキャラが勢揃い!
私も何もなければ入りたかったくらい。
略して旧魔会はアカデミアのかなり豪華な一室を使ってる。
私達みたいな3人しかいないサークルとは訳が違うよね。
木の上から窓の中を眺めてる。
ルリオン様とマイアが2人並んで旧世界に関する魔道書を見てた。
お互い本を見ながら指差したり、たまに顔を合わせながら何かを話したりして、なかなかに良い感じだった。
他の女生徒がルリオン様の周りで質問をしてるのか、ルリオン様が他の女生徒と話してると、マイアはその場を離れて机に座ってひたすら魔道書を読んでた。
ああ…本当は構ってほしいのに、我慢してるんだよねマイア。
マイアの悪いとこは潔すぎて、すぐに引き下がってしまうところ。
他人の事なら押しが強いのに、自分の事になると考えすぎちゃって身を引いちゃうんだよね。
私の影響もあって旧世界の魔法にもすごく興味を持ってくれたから、このサークル自体は興味があって入ったんだろうけど。
歯がゆいね…、マイア。
でも、マイアならきっとルリオン様を振り向かせられるよ。頑張れっ!私も陰ながら応援してるから。
木の上から飛び降りて、今度は違う場所へとまた移動する。
「えーっと…確か、リゲルとアケルナーは…」
この二人は剣術マニアで魔法騎士志望だから、2学年になってからの選択実技でも魔法剣士を希望してる。
最近は選択科目も違うし、リゲルとも全然会わなくなったからせいせいしてた。
あっ、いた。
リゲルとアケルナーは“魔法剣術追求会”に所属してる。
アケルナーが訓練場で打ち合いをしてる。ただ、そこに珍しくリゲルの姿はなかった。だいたいいつもペアでいるのに。
他にも、魔法訓練場で数名の魔法剣士を目指す生徒が走り込みをしてた。
訓練場から離れた場所に降りた私は、ひとまずこれまでの進み具合を確認できて概ね満足した。
気配を戻してレンガ道を歩いて、寮へと戻ろうかと踵を返した時。
「あなたは、アトリクス君じゃないですか?」
急に背後から声をかけられた。
うげぇ、この声はアケルナー……。
嫌なヤツに見つかっちゃったなぁと、聞こえない振りして無視して帰ろうかと思ったけど、そう簡単にはいかなかった。
先回るするように、私の前に立ち塞がってる。
「なんだよ、散歩中だから邪魔すんな」
「散歩ですか?…先ほど突然現れたように感じましたが?」
ギクッとするけど、態度には絶対表さない。
リゲルも面倒だけど、アケルナーは本当に苦手。
剣聖級になるヤツはやっぱり気配察知も鋭いから、気配を解いた瞬間に来るなんて行動を読まれてるみたいで関わりたくないんだよね。
「ハハッ、何言ってんだ?人を化け物みたいに」
「…そうかもしれませんね」
「はっ?」
目の前に立つ臙脂色の鋭い瞳が、私を疑うように見てる。なんとなく私に興味持ってるの知ってたから、アルファルドと一緒に行動して2人きりになるのを避けまくってたのに。油断しちゃったね。
アケルナーって常に強さを求めてるから、強者を見つけると必ず果し合いを申し込むんだよ。
「君だけは測れない。いつもヘラヘラしているのに…かと思えば、時に驚く程の意思の強さを見せる。その時の君の眼は、熟練の覇者のように恐ろしい…」
「……」
ザァー…と風が通り過ぎて、私とアケルナーの間を抜けていく。
お互いその場から動かずにしばらく見つめ合ってて、私からパッと目を逸らした。
「お前の買い被りすぎだ。悪いけど俺ヒマじゃないんだ…じゃあな」
歩きながら突っ立ってるアケルナーの脇を通って、そのまま去ろうとしたのに、途中で手首を掴まれる。
「……アトリクス君」
「なんだよ。絡むなら他のヤツにしてくれよ」
「僕と勝負しませんか?」
「はぁ?なんでお前と?!無理に決まってんだろ」
「一本だけで構いません」
「嫌だね、俺はヒマじゃないんだ!」
掴まれた手首を振りほどこうとしたのに、アケルナーは離そうとしない。
もう勘弁してよ…ホント面倒くさいヤツに捕まったなぁ。
「受けるまでは離しません」
「はっ、こっちの都合はお構いなしかよ。素人相手に容赦ないな」
「素人?…誰の話しですか?」
アケルナーは明らかに私を強者だと確信してて、本当に厄介でしょうがない。
ゲームでも戦闘面でいえばコイツが1番強かったから、パーティでは絶対入れた人物だし。
アケルナーってこうなると止められないんだよね。
「ハァ…いいぜ?勝負しても」
「本当ですか?」
「その代わり、どうなっても文句は言うなよ…」
「えぇ、構いません」
ドラコニス公爵家から寮に戻って、また日常が始まっていく。季節は秋になって、過ごしやすい日が続いてた。
この日はメインキャラ達の動きを確認するために、サークル活動をお休みして、アルファルドとかオクタンとは別行動。
気配を完璧に消して木の上で隠れながら観察してる。
「あら、ポラリス様?何故レグルス様とご一緒してるんですの?」
「ご機嫌よう、スピカ様。…レグルス殿下とは実技を共にする予定でして…」
「まぁ!どういうことですの!?レグルス殿下はわたくしと実技を共にするはずですわ!」
「やめたまえ。私はスピカ嬢と約束した覚えはない」
「っ!酷いですわ!許しませんわ、ポラリス様!!」
おぉ~、木の上から見るイベントはすっごく楽しい!
傍観者って最高だね。
ここはアカデミアの中庭にある庭園。
アルファルドに夢中になってて全然気にしてなかったけど、結構イベントは進んでるみたい。
レグルス様とポラリスは寄り添ってて、離れた場所にいるスピカは嫉妬で怒りのオーラが湧き上がってる感じ。
やっぱりさ、マイアよりスピカの方が悪役令嬢に合ってるよ。正統派って感じ。
マイアはルリオン様の恋心残してたし、レグルス様にもルリオン様にも庇われてるポラリスが許せなかったのがあったから。
ふむふむ、こっちはこんな感じなのね、よしっ、次っ!
そのまま足を強化して、風魔法使いながら別の場所へと飛んだ。
えーっと、マイアはルリオン様と良い感じになってるのかな?同じ水属性だし、選択科目になってからはかなり距離が縮まったと思うんだけど。
学内の木の1番上に登って、辺りを見渡した。
マイアが入ったサークルはルリオン様と同じで“旧世界魔法探求会”。これには沢山のご令嬢達が殺到してて人数制限が出来たくらい。
レグルス様を筆頭にルリオン様、ポラリス、マイアとメインキャラが勢揃い!
私も何もなければ入りたかったくらい。
略して旧魔会はアカデミアのかなり豪華な一室を使ってる。
私達みたいな3人しかいないサークルとは訳が違うよね。
木の上から窓の中を眺めてる。
ルリオン様とマイアが2人並んで旧世界に関する魔道書を見てた。
お互い本を見ながら指差したり、たまに顔を合わせながら何かを話したりして、なかなかに良い感じだった。
他の女生徒がルリオン様の周りで質問をしてるのか、ルリオン様が他の女生徒と話してると、マイアはその場を離れて机に座ってひたすら魔道書を読んでた。
ああ…本当は構ってほしいのに、我慢してるんだよねマイア。
マイアの悪いとこは潔すぎて、すぐに引き下がってしまうところ。
他人の事なら押しが強いのに、自分の事になると考えすぎちゃって身を引いちゃうんだよね。
私の影響もあって旧世界の魔法にもすごく興味を持ってくれたから、このサークル自体は興味があって入ったんだろうけど。
歯がゆいね…、マイア。
でも、マイアならきっとルリオン様を振り向かせられるよ。頑張れっ!私も陰ながら応援してるから。
木の上から飛び降りて、今度は違う場所へとまた移動する。
「えーっと…確か、リゲルとアケルナーは…」
この二人は剣術マニアで魔法騎士志望だから、2学年になってからの選択実技でも魔法剣士を希望してる。
最近は選択科目も違うし、リゲルとも全然会わなくなったからせいせいしてた。
あっ、いた。
リゲルとアケルナーは“魔法剣術追求会”に所属してる。
アケルナーが訓練場で打ち合いをしてる。ただ、そこに珍しくリゲルの姿はなかった。だいたいいつもペアでいるのに。
他にも、魔法訓練場で数名の魔法剣士を目指す生徒が走り込みをしてた。
訓練場から離れた場所に降りた私は、ひとまずこれまでの進み具合を確認できて概ね満足した。
気配を戻してレンガ道を歩いて、寮へと戻ろうかと踵を返した時。
「あなたは、アトリクス君じゃないですか?」
急に背後から声をかけられた。
うげぇ、この声はアケルナー……。
嫌なヤツに見つかっちゃったなぁと、聞こえない振りして無視して帰ろうかと思ったけど、そう簡単にはいかなかった。
先回るするように、私の前に立ち塞がってる。
「なんだよ、散歩中だから邪魔すんな」
「散歩ですか?…先ほど突然現れたように感じましたが?」
ギクッとするけど、態度には絶対表さない。
リゲルも面倒だけど、アケルナーは本当に苦手。
剣聖級になるヤツはやっぱり気配察知も鋭いから、気配を解いた瞬間に来るなんて行動を読まれてるみたいで関わりたくないんだよね。
「ハハッ、何言ってんだ?人を化け物みたいに」
「…そうかもしれませんね」
「はっ?」
目の前に立つ臙脂色の鋭い瞳が、私を疑うように見てる。なんとなく私に興味持ってるの知ってたから、アルファルドと一緒に行動して2人きりになるのを避けまくってたのに。油断しちゃったね。
アケルナーって常に強さを求めてるから、強者を見つけると必ず果し合いを申し込むんだよ。
「君だけは測れない。いつもヘラヘラしているのに…かと思えば、時に驚く程の意思の強さを見せる。その時の君の眼は、熟練の覇者のように恐ろしい…」
「……」
ザァー…と風が通り過ぎて、私とアケルナーの間を抜けていく。
お互いその場から動かずにしばらく見つめ合ってて、私からパッと目を逸らした。
「お前の買い被りすぎだ。悪いけど俺ヒマじゃないんだ…じゃあな」
歩きながら突っ立ってるアケルナーの脇を通って、そのまま去ろうとしたのに、途中で手首を掴まれる。
「……アトリクス君」
「なんだよ。絡むなら他のヤツにしてくれよ」
「僕と勝負しませんか?」
「はぁ?なんでお前と?!無理に決まってんだろ」
「一本だけで構いません」
「嫌だね、俺はヒマじゃないんだ!」
掴まれた手首を振りほどこうとしたのに、アケルナーは離そうとしない。
もう勘弁してよ…ホント面倒くさいヤツに捕まったなぁ。
「受けるまでは離しません」
「はっ、こっちの都合はお構いなしかよ。素人相手に容赦ないな」
「素人?…誰の話しですか?」
アケルナーは明らかに私を強者だと確信してて、本当に厄介でしょうがない。
ゲームでも戦闘面でいえばコイツが1番強かったから、パーティでは絶対入れた人物だし。
アケルナーってこうなると止められないんだよね。
「ハァ…いいぜ?勝負しても」
「本当ですか?」
「その代わり、どうなっても文句は言うなよ…」
「えぇ、構いません」
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