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ドラコニス公爵家 9

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 アルファルドと一緒にダイニングルームに移動してきた。
 良い匂いが漂ってて、朝から目の前に沢山の料理が並んでて思わず笑顔になっちゃう!
 挨拶してから早速席に座って、リタさんの朝食をモグモグ食べた。

 美味しさが口中に広がってすっごく幸せ~!!


「ん~、やっぱり美味い!!俺、リタさんのファンになっちゃいそう!」
「うふふっ、アートって女心が良くわかってるね!」
「お世辞じゃなくて本当にさっ、真面目に美味いの!!」
「ふふっ、ありがとね!アートがいるだけで、お屋敷が明るくなるねぇ」
「そうなの?まぁ…たしかにみんな静かだよね」

 アルファルドを見るとやっぱり黙々と食べてる。

 作法とか食事マナーとか、アルファルドはちゃんと習ってないのに、すごく綺麗な所作で食べてる。
 ジッとアルファルドを見てると、アルファルドも気付いたのか私を見てきた。

「…なんだ?」
「んー、アルファルドのテーブルマナーってちゃんとしてるなって。やっぱさ、ベッテルさんやリタさんの教育の賜物だよな」
「まっ」
「おやっ」
「……」

 3人の視線が私に集中する。

「たった二人で大変だったろうにさ。平民の俺には想像もつかないくらい壮絶な毎日だったと思うよ?でもさ、アルファルドをここまで立派に育ててくれてんだから…ホント、お二人は尊敬に値します」

 しみじみそんな事を呟いてたら、急にすすり泣くような声が聞こえてきた。

「はぁ…年取ると駄目だねぇ。こんな風に他の人に褒められたことないからさ」
「はい。改めて言われますと、なんとも嬉しいものですなぁ…」
「苦労とは思ってないけどさ。報われた気持ちになるね!」
 
 またそれぞれ目元を拭ってて、笑顔でアルファルドを見てた。

「……」
「俺、来れて良かったよ!ありがとな、アルファルド」
「…いつでも、来ればいいだろ」
「うん!…アルファルドにそう言われると、めちゃくちゃ嬉しい!!」

 みんなニコニコしてアルファルドを見てる。ここにはアルファルドのことが大好きな人しかいないから。
 そっぽ向いて話してるのが、またたまらないね!

「リタさん、ベッテルさん、またお世話なると思うからよろしくお願いします!」
「アートならいつでも歓迎だよ!毎日来てほしいくらいさっ!」
「えぇ、左様でございますねぇ。旦那様は人を見る目がございますな」
「……いいから食べるぞ」

 なんだかぎこちなく食べ始めるアルファルド。
 可愛いなんて思っちゃうのは良くないのかな?でもたった1日ですごく仲が深まったように感じる。

 アルファルドはそのまま仕事に出かけた。てか、仕事って冒険者なんだよね。
 ナイショだけど身分を偽って登録して魔物退治してるみたい。
 知ったときはビックリだったけど、あれだけ魔法使えるならそりゃ冒険者で稼いだ方がいいと思うよ。
 
 シリウスに憧れてスタンピード後に勢いのまま飛び込んだらしいね。しかも今はAランク。
 確かにあの身体つきは普通じゃないからなぁ。
 アルファルドも皇族の血筋だから魔法センスもずば抜けてるし、あれだけ高度な魔法使えるならもったいないよ。
 
「あ、そうだ!これ公爵家で使って下さい」

 帰り際手土産で持ってきた商品を袋から出した。
 アルファ商会の売れ筋商品なんだけど、手に入りにくい物もあって結構な貴重品なんだ。

「おやまあ、凄いね!コレは」
「この様な貴重な品を頂くのは…」
「持って帰るのも大変だから置いて行きますね!使わないものは遠慮なく売って下さい。コレなんか今は相場の何十倍も値上がりしてますから、結構な値が付きますよ?」

 私が手に取ってるのは例の毛生え薬。
 限定品で販売してるから、出るとみんな殺到するみたい…元々の値段も高いんだけど、闇市のオークションなんかにも出店されてて凄いことになってるみたい。

「アート…あんた、本当に良い子だね…」
「あっ、アルファルドには内緒ですよ?後でうるさく言われたくないし…」
「ホホッ、アートさんも旦那様を良くわかっていらっしゃいますな」

 リタさんとベッテルさんにお礼を言った後、少なくなった荷物を背負ってアカデミアへと向かう。

 さて、次はいつ来れるかな?
  
 こうして波乱万丈なドラコニス公爵家での一日が終わった。


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