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ドラコニス公爵家 1
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それから何日も何日も経つけど、ポーション作りは困難を極めてた。
全然、本物に近づかないし。色も濁って、匂いも薬草独特の匂いしかしない。
あの綺麗な緑色の液体はどうやって作ってたんだろう?
せめて作り方さえ分かればなあ…。
この日もポーション作りは失敗に終わった。
ただ数だけは沢山作ってるから、オクタンの魔力操作がだいぶうまくなってきた。
たまに鍋から溢れることもあるけど、7割くらいの確率で成功するようになったよ。
「ハァ…また今日も駄目か……」
「あ、…んと、元気出して、…アート、君」
サークル部屋の机に突っ伏して顔の横にある失敗作を眺めてる。
オクタンも隣に座って一緒に失敗した小瓶を眺めてる。
始め作った試作品を長机の上に横一列に並べて見てるけど…ほぼ変わりはない。
色は少し薄くなったけど全くダメ。使い物にならない。
「また明日だな。……あ、アルファルド」
「…なんだ」
突っ伏してた机から顔を上げて、立って薬学の本を読んでたアルファルドに話しかける。
アルファルドも講義後はこっちのサークル活動に参加して、毎日のようにポーション作りの手伝いをしてくれてる。もう一月近くは経つかな?
「これからお前のお屋敷に行ってもいいか?」
「…何故だ?」
「お前に渡すものもあるし」
未だにアルファルドにバイト代渡してないんだよ。
意外にもアルファルドは請求みたいなことは全然してこないし、文句も言わずにサークルになると一緒に着いて来てくれてる。
給料未払いなんてしたくないし。
わざわざこうして残ってサークル活動手伝ってくれるアルファルドに、きちんと謝礼を渡さなきゃね!
「……いいだろう」
私の言葉の意味に気付いたのか、渋々な感じのアルファルドから許可が出て、嬉しさにその場で元気良く両手を挙げた。
「やった~!じゃあ外泊許可もらってくるなっ!」
「…待て。泊まるつもりか?」
「もちろん!」
その後の私の発言にアルファルドが珍しく焦ったみたいな様子をしてる。笑顔で返事をした私を問い詰めるみたいに話してくる。
「…俺は許可してない」
「今、いいって言っただろ?」
「…屋敷に来るのを許可しただけだ」
「ハハッ、ケチケチすんなよ!」
私達の様子をオロオロしながら見てるオクタン。私とアルファルドの言い合いに挟まれててちょっと可哀想。
結局私の押しに勝てなかったアルファルドは、仕方ない感じで了承してくれた。
やった!!めっちゃ嬉しいー!!明日はアカデミアも休みだし、ドラコニス公爵家初潜入だぁ~!!
◇
とりあえず一旦寮に戻って着替えとか寝間着とか一式取りにいく。お金も持って行かないといけないし。
「あ、アート君…んと、本当に、とまっ、泊まるの?」
「あぁ、そのつもり~♪」
寮の部屋の真ん中で鼻歌でも歌いそうなくらい上機嫌の私。荷物やら何やらを大きな袋にどんどん詰めてく。
「んと、すごく…嬉しそう…だね…」
「そりゃそうだ。一晩アルファルドと一緒にいれるしな!」
「え!?んと、…それ、それって!?い、い、い、一緒に、寝るの!?」
「…さぁ、どうだろうな?」
意味ありげにニッと笑うと、オクタンの顔がシュ~っと赤くなってく。
何を考えてるのか、そのウブな反応が面白可愛くてププッと笑った。
「ハハハッ、変な想像すんなよ。別に何もしないぞ?」
「あ、…や!僕は…その…」
「じゃあなっ。行ってくる!」
「あ、うん。…いって、らっしゃい」
固まりになった荷物を背負って部屋の扉まで移動すると、一言言ってからオクタンに手を振って部屋を出た。
寮から出てると外は夕暮れ時で、青からオレンジ色の切なくなる位のグラデーションが綺麗に映えてた。
外は誰もいなくて正門に歩いてると、アルファルドが噴水の前で立って待っててくれた!
わぁっ…めちゃくちゃ嬉しい!今日は一体どうしたの!?
ドキドキしながら噴水の前にいるアルファルドに駆け寄った。
「よっ、お待たせ!さぁ行こうぜっ!」
「……なんだ、その荷物は…」
夜逃げでもするみたいな荷物背負ってる私を見て、アルファルドが呆れたみたいに呟いた。
「えっ??お泊りセットだけど?」
「…本当に…泊まるのか」
「うん、そのつもり!」
嬉しくてたまらない私は、ニッコリ笑いながらアルファルドに話しかける。
歩きながらの会話もウキウキしてなんだかすごく楽しいな。
こんなふうにアルファルドと一緒に歩いて喋ってお泊り会して…向こうは迷惑だと思うけど、嬉しくて嬉しくて仕方ない。
「………先に言っておくが、屋敷には…何もないぞ」
「うん!」
「…持て成しとかも、期待するなよ。…公爵家は……」
「わかってるさ。俺は平民だぜ?何かする必要なんてない。俺はさ、お前と一緒にいられればそれで十分なんだっ」
アルファルドの方を向いて笑うと、アルファルドはやっぱりそっぽを向いちゃって。
でもさ、アルファルドだけを追いかけて長く一緒にいる分、最近はそれが照れ隠しなんだってわかるようになってきたんだ。
「…お前って、変なヤツ」
「あ、またお前ってさ!いい加減、名前で呼んでくれよ!」
「……」
「なぁ、アルファルド!」
そのまま無言で足早に歩くアルファルドを追いかけるように、ドラコニス公爵家へと向かった。
それから何日も何日も経つけど、ポーション作りは困難を極めてた。
全然、本物に近づかないし。色も濁って、匂いも薬草独特の匂いしかしない。
あの綺麗な緑色の液体はどうやって作ってたんだろう?
せめて作り方さえ分かればなあ…。
この日もポーション作りは失敗に終わった。
ただ数だけは沢山作ってるから、オクタンの魔力操作がだいぶうまくなってきた。
たまに鍋から溢れることもあるけど、7割くらいの確率で成功するようになったよ。
「ハァ…また今日も駄目か……」
「あ、…んと、元気出して、…アート、君」
サークル部屋の机に突っ伏して顔の横にある失敗作を眺めてる。
オクタンも隣に座って一緒に失敗した小瓶を眺めてる。
始め作った試作品を長机の上に横一列に並べて見てるけど…ほぼ変わりはない。
色は少し薄くなったけど全くダメ。使い物にならない。
「また明日だな。……あ、アルファルド」
「…なんだ」
突っ伏してた机から顔を上げて、立って薬学の本を読んでたアルファルドに話しかける。
アルファルドも講義後はこっちのサークル活動に参加して、毎日のようにポーション作りの手伝いをしてくれてる。もう一月近くは経つかな?
「これからお前のお屋敷に行ってもいいか?」
「…何故だ?」
「お前に渡すものもあるし」
未だにアルファルドにバイト代渡してないんだよ。
意外にもアルファルドは請求みたいなことは全然してこないし、文句も言わずにサークルになると一緒に着いて来てくれてる。
給料未払いなんてしたくないし。
わざわざこうして残ってサークル活動手伝ってくれるアルファルドに、きちんと謝礼を渡さなきゃね!
「……いいだろう」
私の言葉の意味に気付いたのか、渋々な感じのアルファルドから許可が出て、嬉しさにその場で元気良く両手を挙げた。
「やった~!じゃあ外泊許可もらってくるなっ!」
「…待て。泊まるつもりか?」
「もちろん!」
その後の私の発言にアルファルドが珍しく焦ったみたいな様子をしてる。笑顔で返事をした私を問い詰めるみたいに話してくる。
「…俺は許可してない」
「今、いいって言っただろ?」
「…屋敷に来るのを許可しただけだ」
「ハハッ、ケチケチすんなよ!」
私達の様子をオロオロしながら見てるオクタン。私とアルファルドの言い合いに挟まれててちょっと可哀想。
結局私の押しに勝てなかったアルファルドは、仕方ない感じで了承してくれた。
やった!!めっちゃ嬉しいー!!明日はアカデミアも休みだし、ドラコニス公爵家初潜入だぁ~!!
◇
とりあえず一旦寮に戻って着替えとか寝間着とか一式取りにいく。お金も持って行かないといけないし。
「あ、アート君…んと、本当に、とまっ、泊まるの?」
「あぁ、そのつもり~♪」
寮の部屋の真ん中で鼻歌でも歌いそうなくらい上機嫌の私。荷物やら何やらを大きな袋にどんどん詰めてく。
「んと、すごく…嬉しそう…だね…」
「そりゃそうだ。一晩アルファルドと一緒にいれるしな!」
「え!?んと、…それ、それって!?い、い、い、一緒に、寝るの!?」
「…さぁ、どうだろうな?」
意味ありげにニッと笑うと、オクタンの顔がシュ~っと赤くなってく。
何を考えてるのか、そのウブな反応が面白可愛くてププッと笑った。
「ハハハッ、変な想像すんなよ。別に何もしないぞ?」
「あ、…や!僕は…その…」
「じゃあなっ。行ってくる!」
「あ、うん。…いって、らっしゃい」
固まりになった荷物を背負って部屋の扉まで移動すると、一言言ってからオクタンに手を振って部屋を出た。
寮から出てると外は夕暮れ時で、青からオレンジ色の切なくなる位のグラデーションが綺麗に映えてた。
外は誰もいなくて正門に歩いてると、アルファルドが噴水の前で立って待っててくれた!
わぁっ…めちゃくちゃ嬉しい!今日は一体どうしたの!?
ドキドキしながら噴水の前にいるアルファルドに駆け寄った。
「よっ、お待たせ!さぁ行こうぜっ!」
「……なんだ、その荷物は…」
夜逃げでもするみたいな荷物背負ってる私を見て、アルファルドが呆れたみたいに呟いた。
「えっ??お泊りセットだけど?」
「…本当に…泊まるのか」
「うん、そのつもり!」
嬉しくてたまらない私は、ニッコリ笑いながらアルファルドに話しかける。
歩きながらの会話もウキウキしてなんだかすごく楽しいな。
こんなふうにアルファルドと一緒に歩いて喋ってお泊り会して…向こうは迷惑だと思うけど、嬉しくて嬉しくて仕方ない。
「………先に言っておくが、屋敷には…何もないぞ」
「うん!」
「…持て成しとかも、期待するなよ。…公爵家は……」
「わかってるさ。俺は平民だぜ?何かする必要なんてない。俺はさ、お前と一緒にいられればそれで十分なんだっ」
アルファルドの方を向いて笑うと、アルファルドはやっぱりそっぽを向いちゃって。
でもさ、アルファルドだけを追いかけて長く一緒にいる分、最近はそれが照れ隠しなんだってわかるようになってきたんだ。
「…お前って、変なヤツ」
「あ、またお前ってさ!いい加減、名前で呼んでくれよ!」
「……」
「なぁ、アルファルド!」
そのまま無言で足早に歩くアルファルドを追いかけるように、ドラコニス公爵家へと向かった。
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