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魔法アカデミア合格発表 4

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 ソファーから腰を上げて持ってた新聞をエルナト先生に返して、再び座り落ち着きを取り戻した私。
 先生は手に取った新聞を両手で広げてまた目を通してる。

「この度のシリウスの行いが民衆に感動を与え、前回の救済金に続きこの記事が出回ったことで、平民からの支持がより一層強くなったと書いてあります。一部ではシリウスの熱狂的な信者もいるほどだとか…」
「はぁ……」

 持ってた新聞を四つ折りに畳みテーブルの上に置くと、その隣にあるカップのお茶を優雅に口へと運びながら、また楽しそうに話すエルナト先生。
 私が嫌がるのをわかっているのに、伺うような笑顔がまた憎たらしい。

「冷めてしまいましたね。新しいものに変えましょう」
「あ、すみません。ありがとうございます…」

 一口飲んでからカチャリとカップを置いて、ゆっくりと立ち上がって私の目の前にあったお茶のカップを持ち上げて、新しいものへ取り替えてくれる。
 慣れた手付きでお茶を入れ直すエルナト先生。
 
「そういえば試験結果は見ましたか?」
「……はい。合格してました」
「その反応だと、きちんと順位や点数を見ていませんね」
「あー…それどころじゃなかったので……」
 
 お茶を注ぎながら会話してたけど、私の返答でチラッとこっちに視線を送ってる。
 注ぎ終えたカップを片手に戻って、私は再び目の前に置かれたお茶に目を移した。 

 正直合格さえできてれば点数とかどうでも良かったから。はじめはアルファルドと同室になりたいって邪な願望があったけど、もうそれさえも吹き飛んじゃうくらい今回の事件は自分にとってショックな出来事だったから。

 エルナト先生もまた私の正面の椅子に腰掛けて、こっちを見ながら口を開いた。

「あなたの順位は8位で、実技はE評価でした…」

 割と上の方に名前があったのはわかってたけど、なかなか良い順位だったんだ。
 実技Eって…一番下じゃん…。まぁ、あれじゃあ仕方ないか。でも、それなのに8位って…?
 先生は背筋を伸ばして座って、真剣な眼差しでこっちを見てた。
 私もそれにつられるように背筋を伸ばす。

「筆記試験では首位である750点です。ちなみに総合点は500点でした」
 
 ん…?500点が総合点なのに、なんで私は750点?
 
 向かい合ってる先生の顔をマジマジと眺める。

「…あれ?おかしいですよね?」
「はい、前代未聞です。各学科の平均点は41点で、全体では210点ほど…あなたを除いた最高点は483点です」
「どうしてそんな点数に?」
「それは簡単です。あなたの解答が、正解以上だったからです」
「……?」

 相変わらず表情が真剣そのもので、こっちもなんだか緊張する。普通に解答したと思ってたけど、何か特別な答えでもしたっけ?

 わからない顔をしてる私に、エルナト先生が細かく説明してくれる。

「あなたが解答した問いに、各属性の上級攻撃魔法を防ぐことのできる防御魔法を挙げよ、というものがありました」
「……あぁ、ありましたねぇ…」

 顎に手を当てて、ふと心当たりを思い出す。

「模範解答ならファイアウォール、アクアシールド、ウインドリペア、アースウォールなのです。しかしあなたの解答には、各属性を混ぜ合わせた新たな防御魔法が書かれていました」

 淡々と説明していく先生だけど、顔が真剣そのもので…やっぱりエルナト先生の探究心を刺激したことを確信する。

 あー……そうだった。これはもろゲーム知識で、しかもゲームの裏面で出てくる技なんだよね。
 土属性×風属性で『アースウインドバリア』とかって長い名前の防御魔法が存在する。火属性×風属性で『ファイウインドウォール』とか水属性×風属性で『ウインドアクアシールド』なんて合成魔法が…。まんまじゃんてフザけた名前だけどね。

 先生は拳を握りながら座ってた身体を前に出して、興奮した様子で私に語りだしてる。

「これは魔法学会を揺るがす驚異的な発見なのですよ?!属性同士を掛け合わせるなんて発想は今まで誰も考えませんでした!そしてこれを試しに修練してみたら実際に出来てしまったことがまた問題です!」

 普段物静かな先生が語尾を強く話すのは、新たな魔法の可能性に触れて興奮している証拠。
 長年見てるから先生の状態も良くわかるようになってきたよ。
 立ち上がりそうな勢いで、私を見てる目の輝きも全然違う。
 
「さすが先生!魔力操作が緻密で相互関係のバランスが複雑な合成魔法なのに、自分で修得するなんてすごいっ!」

 座りながらパチパチ拍手しながら称賛の言葉を言うと、エルナト先生にギロリと睨まれる。

「アート君…まるでこの魔法の存在を初めから知っていたような口振りですね?」
「え!?あ……いえ……それは……」

 ジトロモドロになりながら視線を反らした。 

 本当は意図的に解答用紙に書いたんだよね。
 自分がどう思われるかってより、この世界の魔法を向上させるためにやったことで、実際にできるかどうかまではわからなかったし。
 入試試験で書いちゃえば、変に取り上げられないかなって思ったんだけどなぁ。
 
 まだ湯気の立っている目の前に置かれたお茶を前屈みになりながら手に取ると、また座り直してちょびちょび啜りながらどう誤魔化そうか考える。
 

 
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