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魔法アカデミア入試編 4

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 ようやく私の番。
 周りの受験生達もたぶん馬鹿にしたくて、またこっちに注目してる。
 
「次、始め!」

 よしっ、ここはいいトコ見せないとね!

 私は右手を前へ出し、掌に魔力を集中させた。
 そしてそのまま風魔法を発生させる。
 巻き起こった風が的を揺らした。
 終わると周りもシーン…とする。

「……ん?終わりか?」
「はい。これしか出来ません」
「そ、そうか…」

 何か悩んでる試験官だったけど、考えたあと次…とオクタンを呼んでた。
 ん?なんだろう?拍子抜けしたのかな?

「ワハハッ!!嘘だろ!?あれが魔法かよ!」
「ヒャハハッ、呼称すら唱えてないぞ」
「あれでは魔法学校で充分ではなくって?」

 嘲笑う声やひそひそとした笑い声まで聞こえてくる。

 まぁそうだよねー。当然の反応だと思うよ。
 馬鹿にされた感じで気にかかったけど何とか無事に終わって、ようやく試験から開放された。


『アクアシールド』

 列から抜けた私の背後で、また歓声が巻き起こった。
 オクタンの展開した水属性の防御魔法。これも中級レベルで、しかも防御魔法は攻撃魔法よりも魔力操作が難しい。

「こちらも素晴らしい!…今年は豊作だな。よし、次」

 オクタンは照れ臭そうに礼をして、いそいそとこっちに向かってきた。

「オクタンすげーじゃん!俺、水属性の防御魔法とか初めて見たっ!」
「え…あ、んと…あり、ありがとう…」

 うわっ、真っ赤になって照れてるオクタン可愛い!!

 やっぱりゲームに出てくるキャラって最高だね。女の子の格好良いのも、男の子の可愛いのも萌え萌えだよ~!

 表面上ではおくびにも出さないけど、心の中ではミティストサイコー!!って叫びまくってた。

 終わった受験生から順に帰っていい事になっているけど、やっぱり他の人の実力が気になるのか、ほとんどの受験生は壁の隅で観察してた。

 おっ、あそこにいるのは伯爵子息のアケルナーと、更に離れたとこにライバル役の侯爵令嬢のスピカだ。

 アケルナーは灰色の髪に鋭い臙脂えんじ色の瞳。短髪で筋肉質な身体、まだ成人したばっかなのに背はかなり高い。体格に恵まれて、キツめの顔つきだから騎士向きだね。でもなぁ…格好良いんだけど、私の好みじゃないんだよねー。
 魔法騎士団を目指している魔法剣士。確か火属性で最終的にはソードマスターの領域までいくんだったような?

 それで侯爵令嬢スピカは他の女生徒から、スピカ様って呼ばれて、もてはやされ取り巻きも沢山いた。
 意外とそこまで登場しなかったように思うけど、彼女は皇太子であるレグルス様に一番くっついてたのは覚えてる。
 くるりとした愛らしい薄桃色の髪はお尻あたりまで伸びてて、澄み切った空色の瞳はタレ目がちで甘えるように色っぽい。悪役令嬢として対峙するマイアとは真逆の容姿と性格。
 
 侯爵子息のリゲルは帰っちゃったのか、もうその場にはいなかった。番号が離れててちゃんと確認出来なかったなぁ。残念!

「あの…アート君、これ…」

 じーっとサブキャラ達を眺めて観察してると、側にいたオクタンが何か書いた紙を渡してくれた。

「ん?これってどこかの住所か?」
「うん。んと…帝都にある…うちのお屋敷の住所なんだ…んと、良かったら……その……」

 またまた顔を赤くしてもじもじしてるオクタン。 

 いや~ホント可愛いわ、この子。お持ち帰りして家で愛でたいなぁ。

 不謹慎なこと考えてる間にもオクタンはこっちをキラキラした目で見てて胸が痛む。

「優しいんだな、オクタン。でも平民の俺がオクタンの家には行けないだろ?」
「あ、その…僕は、気にしないよ…」
「周りの目があるしな。気持ちだけもらっとく。ありがとな!」
「う、…うん。気が変わったら、いつでも来てね…」

 残念そうにしてたけど、意外と諦めないオクタンが健気で可愛かった。
 この先のことを思うと、心の中はすごく複雑で…関わらなければと思うのに気になっちゃうんだよなぁ。
 そういえばオクタンて引っ込み思案で臆病だったから下っ端の位置にいて友達もいなくて、怪我した時も“アイツで良かった”なんて周りからは言われてた……。

 渡された紙をぎゅっと握る。
 ハァ……、健気で一生懸命で可愛い子にはとことん弱いんだよなぁー…私。
 
「さっ、帰ろーぜ。これでようやく試験も終わりだ」
「そ、そうだね…」

 オクタンと一緒に歩きながら正門へと向かってた。
 オクタンは持ってきた教材を胸のとこで抱きしてるように抱えてる。

「なぁ……試験に合格できたら、遊びに行ってもいいか?」
「え…?」
「オクタンちに」
「あっ…うん!待ってるよ!」

 隣で歩いてたオクタンは、今までで一番可愛い笑顔を見せてくれた。
 


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