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魔法アカデミア入試編 2

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 一人で全然大丈夫って思ってたけど、こうして誰かに話しかけられるのってなんか嬉しいね。

 生徒が全員揃ったのか、いよいよ試験が開始される。
 歴史学、魔法学、数式学…と五教科あって、1日で試験が終わる。それが終わると明日は属性判定と実技試験になる。

 順に試験用紙が配られて、だいたい1教科50分くらいの持ち時間で終了。

「では、試験を開始する。カンニング、不正行為は見つけ次第落第とする。心して掛かるように!では始めっ!!」

 やっぱり意外と厳しくしてる。もっとユルいのかと思ってたのに。
 皆一斉に用紙をめくってカリカリとペンを滑らせる音があちこちに響いてる。

 うわぁ、帝国暦684年この時代の皇帝が初めて行なった法改正により反逆した家門、及び加担した派閥全て答えよ。
 やっぱりエルナト先生ってえげつないわ。普通の問題なら法改正の年は何年かくらいが妥当な問題なのに…。

 これ、わかる人いるのかな?
 用紙に答えをどんどん書いて行くけど、周りの生徒は頭を抱えてる。
 ペンを持つ手が完全に止まってる人も結構いて、ちょっと可哀想になってきた。

 よし、終わり!見直しもしたし…。
 残り時間あと10分位か。
 時計を確認して、手を挙げた。

「33番、どうした?」
「はい、終わったので提出してもいいですか?」
「…お、終わったのか?!……よし、提出して退出しなさい」
 
 用紙と荷持を持つと席を立った。階段を降りて下に向かう途中声も聞こえてくる。

「白紙で出したのか?」
「格好付けやがって、後で恥かけばいいさ」

 私が講堂を出ていくのを見てる視線も多く感じられたけど、振り向かずに扉を閉めた。

「静かにっ!!話してる者はカンニングと見なす!他の者も解けた者から退出して構わない」

 試験官の言葉に場がシーンと静まって、またみんな手を動かし始めた。終了時間が来るまで誰も講堂から出てくる人はいなかったけど。

 それから魔法学、数式学…と同じように進んで、ようやく入試試験が終わる。

「うー…ん!」 

 大きく伸びをして体を伸ばした。一日中机に向かってるのってやっぱり疲れる。

 でも実力は出し切れたし、問題は全部解けた。
 いやでもさー…、めちゃくちゃ難しいものばっかで、ここまで解るならアカデミアに通う必要ないくらい意地悪な問題だよね。
 学長はよくこんな出題で許したね。

「明日、行われる実技試験も同刻に正門で案内を開始します!遅れることのないよう集まるように!」

 試験官の説明が終わって、受験生達がぞろぞろ講堂を出て帰っていく。

 さて私もそろそろ帰ろっ。明日の実技も少し対策しとかないと。
 荷物を持って帰り支度してると、隣から声をかけられた。
 
「あ…んと、アート君…スゴイね。途中で、退出するなんて…」

 声をかけたのは隣の席のオクタンだった。立ち上がったオクタンはやっぱり小さくて、男の私の肩くらいの高さだった
 
「そうか?」

 もじもじしてるオクタンはやっぱり可愛い。
 オクタンも自分の荷物を纏めて脇に抱えてた。出口に向かい歩きながら話した。

「んと、ぼ、僕…半分くらいしか解けなくて…もし、平均点以下ならど、どうしよ……」
「半分書けたなら大丈夫じゃないか?50点以上は取れてるだろ?」
「で、でも…答えが、合ってるか…」

 不安でしょうがない様子のオクタン。こればっかは結果が出ないと慰めようもない。

「ま、大丈夫だろ?実技もあるし。基本、魔法が使えるだけでオクタンは凄いんだからさっ」

 廊下を抜け、さっきの正門の方へ出てきた。
 
「アート君…優しいんだね…」

 しみじみ言われちょっと私も照れくさくなる。オクタンは嬉しかったみたいで、控えめにへへっ…と笑ってる。

 いや~、この子って可愛いな。オクタン…オクタンス……。
 でも、どっかで聞き覚えがあるんだよなぁ……どこだったっけ??

「なぁ、オクタンは貴族なのか?」
「え?…んと、僕は、元々…帝都民じゃなくて…地方から出てきたんだ。本名は…オクタンス・ベア・チィズルで…んと、北部にある…男爵家なんだ」

 チィズル男爵家…。
 確かエルナト先生の授業で出てきた…帝国北部の海沿いにある領地で、造船業で生計を立ててる家門だったような?
 チィズル家じゃなくて、オクタンスて名前に何か引っかかるんだよね…うーん、思い出せそうで思い出せない。

「ふ~ん。俺も地方から出てきてるけど、貴族じゃないんだ。商店を営んでる平民の出さ」
「あ、アート君は…んと…、平民なの?」
「あぁ、そうだ」

 こうやって言えばもう話しかけてこないかな?
 試すつもりはないけど、隠すつもりもないから正直に素性を話した。

 正門を抜けると、オクタンには馬車が待ってた。

「じゃあな、オクタン」
「あっ……」

 馬車の前に立つオクタンに片手を挙げてその場を後にした。
 貴族って平民を人間じゃないみたいに思ってる人もいるし。
 だから、オクタンが私の話を聞いてもう話しかけて来ないかもしれないって思った。

「あ、アート君!んと…ま、また明日、頑張ろうねっ!」

 オクタンが馬車の場所からこっちに向かい声を絞り出してた。
 いきなり背後から掛けられた言葉にびっくりした。

「ハハッ、また明日な」

 笑顔で振り返って手を振ってから、私はその場を後にした。
 

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