23 / 392
冒険者編 1
しおりを挟む実家から離れて、帝都にある魔法アカデミアに近い都市ムーリフで一人暮らしを始めた。
都市外れの山あいにある小さな家を買って、念願の一人暮し!
そして私は、めでたく13歳で冒険者デビューした!
冒険者名はシリウス。
とりあえず剣士で登録してるけど、戦士でも魔法使いでもある。
正確な性別、年齢、素性一切不詳。
呪われた身体で話す事が出来ない。体中に呪詛が巡り異形の姿になっていて、素顔を見るとその呪いが移るって噂も意図的に流した。
こんな正体不明のふざけた人物でも登録出来るのが冒険者なんだ。
シリウスは言葉を話せないから、いっさいを筆談でやり取りしてる。
呪われた身体っていうのを利用して、自分に関しての一切の情報を伏せている。
シリウスの設定はこんな感じ。
顔は全体的に呪われそうな禍々しい仮面で隠していて、さらに黒い布で頭全体を覆っている。
見た感じ前世の某アニメ映画で出てきた、神様がいっぱい出てくる黒い仮面だけのヤツに似てるかも。
視界は悪いけど、気配を感じられる私にとってはそれほど問題はないんだ。
あとは体型がわからないように、全身をダボついた真っ黒なフードと黒衣で揃えて、周りからは一種異様な近寄りがたい雰囲気を醸し出すようにした。
この仮面や衣装も実はダンジョンで発掘したアイテムで、魔法耐性や衝撃吸収効果があるものを黒く染めたんだ。
一応成人男性の設定なので身長を補うためシークレットブーツを密かに開発し、シリウスになる時には必ず履くようにしている。(このシークレットブーツも限定商品として販売したら飛ぶように売れた。)
ちなみに喋らないのも素顔を見せないのも自分の身を守るため。
これから起こるであろう様々な事柄を踏まえ、少しでも私にたどり着く可能性を消したかったから。
冒険者ギルドは依頼をこなしていくと評価も上がっていく仕組み。
強さのレベルを測る基準、この辺は普通のRPGと同じでE、D、C、B、A、S、SS、SSS級まであって、上がる毎にギルド職員との試合がある。これはレベル判定の為。
ちなみにここでのSとはスター(星)のことらしいよ。ここでのスター獲得は冒険者の憧れになってるみたい。
SSS級(トリプルスター)って呼ばれる冒険者は現在だと存在していない。
嘘か本当かわからないけど、大昔スタンピードが起きた時に彗星のごとく現れた冒険者が一人でモンスターを倒したっていう物凄い伝説がある。
その時にSSS級の称号を与えられた彼は、後に帝国史上唯一の剣帝(ソードエンペラー)として語り継がれる事になる。
◇
この日も冒険者ギルドに来てた。
ここはムーリフとその隣にあるポルックス公爵領の中間地点にある。
田舎のこじんまりした冒険者ギルドと違って、かなりの広さと大きさのあるギルド。
だから依頼量も多く、壁にも沢山の依頼書が貼ってある。
中は対面式になっていて受付にはちゃんと受付嬢もいるよ。
「今日の依頼も早いですね~。まだお時間がありますが、どうされますか?」
冒険者ギルドの受付嬢サーラ。
この日の依頼料500Gを渡しながら話してくる。
ちなみに1Gは日本円だと大体100円くらいかな?
まだEランクの私だけど依頼をこなす手際が良いのと、素材の丁寧な下処理を見て良い印象を持ってるみたい。
初めて見た時には怯えた様子で強張っていた表情も、しばらくして慣れた頃にはだいぶ警戒心は薄くなったみたい。
私は紙を取り出し利き手とは逆の手でワザと汚く文字を書いていく。ギリギリ読めるくらいの汚さで。
『またやる』
一言書くと、サーラは私に見合ったランクの依頼書を出してくれる。
「これなんていかがでしょう?」
紙を受け取って一通り目を通した。
近くの農場でのメガマウス退治だった。
報酬は大体300G。3万円くらいだよね。
メガマウスはそこまで強くない大きなネズミだけど、数が多いのとすばしっこいのがかなり厄介で、ほっとくとどんどん増え続ける害獣。
Eランクでも報酬の高い依頼を回してくれるサーラには密かに感謝してる。
『これにする』
って書いた。依頼書に印を押してくれてカウンター越しに渡された。
「了解しました!ではいってらっしゃいませー!」
コクリと頷いて、『ありがとう』って紙に書くとサーラも悪い気はしないのか、どういたしましてと手を振って送り出してくれた。
周りの冒険者からは異形のせいか煙たがれているし、始めは陰で絡まれたりもしたけど、その度に実力の差を見せつけやり返してやった。
それから冗談交じりに【黒い死神】とか、【呪われた冒険者】なんていらない二つ名も付けられたりしてる。
でも冒険者は実力が全ての世界。立ちはだかる者には容赦なんてしないよ。
こうやって私は着々と自分の計画通りに物事を進めて行った。
11
お気に入りに追加
322
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
鬼畜なエロゲ世界にモブ転生!?このままだと鬱ENDらしいので、ヒロイン全員寝取ってハピエン目指します!
ぽんぽこ@書籍発売中!!
ファンタジー
「助けて、このままじゃヒロインに殺される……!!」
気が付いたら俺はエロゲーム世界のモブキャラになっていた。
しかしこのエロゲー、ただヒロインを攻略してエッチなことを楽しむヌルいゲームではない。
主人公の死=世界の崩壊を迎える『ハイスクール・クライシス』というクソゲーだったのだ。
ついでに俺がなっちまったのは、どのルートを選んでも暗殺者であるヒロインたちに殺されるモブキャラクター。このままではゲームオーバーを迎えるのは確定事項。
「俺は諦めねぇぞ……トワりんとのハッピーエンドを見付けるまでは……!!」
モブヒロインの家庭科教師に恋した俺は、彼女との幸せな結末を迎えるルートを探すため、エロゲー特有のアイテムを片手に理不尽な『ハイクラ』世界の攻略をすることにした。
だが、最初のイベントで本来のエロゲー主人公がとんでもないことに……!?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
W-score
フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。
優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…
天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする
カエデネコ
恋愛
※カクヨムの方にも載せてあります。サブストーリーなども書いていますので、よかったら、お越しくださいm(_ _)m
リアンは有名私塾に通い、天才と名高い少女であった。しかしある日突然、陛下の花嫁探しに白羽の矢が立ち、有無を言わさず後宮へ入れられてしまう。
王妃候補なんてなりたくない。やる気ゼロの彼女は後宮の部屋へ引きこもり、怠惰に暮らすためにその能力を使うことにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる