上 下
18 / 392

子供編 ❲町作り❳

しおりを挟む

 秋が来て、肌寒くなってきる季節。

 私が11歳になった誕生日プレゼントに、密かに父にお願いしていた土地をもらった。
 もちろん領地の中の一画でドルアーガ子爵家からは離れてるけど、広さにしたら小さな山くらいある広大な敷地だ。
 この場所は緑が溢れ自然が豊富な……いや、ただの枯れた草木が生い茂る荒廃した土地だった。
 人も住まないような使いみちのないただの土地を、ある目的の為に開拓する予定。

 土地は父にもらったけど、正直今では私の方がお金持ちだったりするんだよね~。
 数ヶ所に分けた財産を合わせればかなりのものになるけど、まだ成人前の子供だから使わないように貯蓄してる。
 でも、とりあえず目的の為には切り崩して使うしかないからね。必要経費として、バンバン使っちゃうよ~!

「さぁ!やるぞ~~!!」

 草だらけの荒れ果てた広大な敷地の前で腰に両手を当て、大声を上げて仁王立ちしている私。
 マナーの先生に見られたら一発で怒られそうだね。
 
 まずはこの草を刈ってデコボコの土地を整備して平らに均さないと。
 こんなの一人で草取りしてたら、それだけでおばあさんになっちゃう。
 ここで便利なのが魔法なのだ!
 
「あなたはいつも予想外のお願いをしてきますね。誕生日プレゼントが魔法での除草作業とは…」
 
 この日エルナト先生にも同行してもらって、風魔法で一気に草刈りを終わらせる。

『ウインドカッター』

 風魔法を連発してもらい、ものの数分で一帯の草取りが終わる。ついでに風魔法で刈った草まで集めてもらって一石二鳥。
 本当にさ、魔法って最高だね!

「わ~い、エルナト先生ありがとうございます!!」
「…こんな事で喜ぶご令嬢はあなたくらいですよ…」
 
 半ば呆れたように笑って言われるが、私が何をしようとしているのかエルナト先生も興味があるみたい。
 ただの更地になった土地にあれやこれやを建てる予定なんだ!




 ◇





 数日後、私が施工主ということは伏せて、名義を架空の人物にして建物の建設を行ってもらう。
 金は腐るほどある。
 それから約一年ほどかけて、この広い敷地に建物が立ち並んだ。
 ここまでくるのは長かったな~。ま、お金も時間もかかったけど、納得いくものができたね!

 
「じゃんじゃじゃ~ん!!」
 
 あの何もなかった荒れ地に、立派な建物が幾つも並んでる。

「あのー、お嬢…これは一体…」
「ミラ、この建物は何だ…」
「うわぁ~、姉さまスゴい!!」
「カッケェ~!」
「あらあら、うふふ~」

 タウリをはじめ、お父様、ミザル、ミュー、お母様の順にそれぞれ違った反応を見せてる。
 私の土地には入り口に小さく〈道標〉と、この国の言葉で書いてあるんだ。

 敷地の周りは全て高い塀で囲み、ゼンマイ式に開閉できる門もつけた。
 もちろんその中に入ってもらった子爵家一行様に、出来上がった私の町をお披露目するため来てもらった。ちなみにエルナト先生には一足先にこの町を紹介してる。

 入ると真ん中に道が伸びてて、周りに放射線上に何軒もの家が建ち並んでる。
 そして道の一番奥先には教会をイメージした建物を造って、更に周りにも間隔を十分空けて小さな家を点々と造った。
 もちろんまだ人っ子一人いない。
 緑と建物だけの町。
 町に入ってあ然とする大人の男たちと、興奮する子供達、そしていつもと変わらない妖精のような女性。
 三者三様の反応に私は満足してる!

「皆様、本日はお越し頂き大変恐縮に思います。今日という良き日に私の新しい町をお披露目できて感無量ですわ」

 スカートの裾を持って、ご丁寧に挨拶をする私にまず食いついたのは父だった。

「ま、町ぃ~!?ミラっ、お前…何をするのかと思ったら、町を作ったのか!?」
「あら、お父様?私、言ってませんでしたっけ??」

 まだ町も案内していない内から驚かれても困るな~。
 変わらず入り口から移動できないまま、あれこれと説明する。

「何も聞いてないぞ!俺はまた、新しい作業場でも作るのかと……」
「うーん、あながち間違っていませんが…それは一部ですね。とりあえず歩きましょう!」

 弟達はわぁーと蜘蛛の子を散らすように走って思うように扉をかまったり、町の中を散策したりしてる。
 個別の家には番号がついていて鍵もかかってて、全ての鍵は私が管理して持ってるんだ。
 
「まさか町を作り上げるとは…目的はなんですかな?」
 
 キョロキョロと歩きながら、何軒もの建物だけの家を見てタウリは質問してる。
 
「それは秘密よ」
「ひ、秘密ですかな!?」
「えぇ」
 
 しばらく歩く一番奥にある大きな建物に着いた。

 十字架こそつけてないけど、造りは教会そのもの。
 尖った屋根が何個か出っ張り、ステンドグラスも至る所にはめてある。
 周りには庭や私の考案した遊具も設置してもらって、殺風景な町並みとは違って華やかさを演出してる。

「ここが本拠地のタワーハウスです」
「本拠地……?何の話だ??」
「こちらが町の中心部になり、全てが始まる場所になります。ココを卒業すると、各地に建てられている家を持つことができます!」

 両手を広げてドヤ顔をしている私とは違って、お父様とタウリは何が何だかさっぱり分からない顔をしてた。
 
「全く理解できないが…人の道に逸れることだけはするんじゃないぞ」
「………」
「おいっ、そこで無言になるな!」 

 逸れることをするつもりはないけど…、捉えようによってはそう解釈する人もいるかもしないね。
 ちょっと考え込んだけど、まあ大丈夫だろうね。あとは野となれ山となれ。

「大まかな説明は終わりました。さぁ、戻りましょう!」

 パンッと手を叩いて、とりあえずお披露目会は終わったからドルアーガ子爵家に移動するように促した。

 場所と建物は揃ったけど、人がまだまだ足りないな…。
 これから管理する人間をドンドン増やしていかないとね。

「旦那様…お嬢は大丈夫ですかな……?」
「わからん…俺には、全く…わからん……」

 タワーハウスの玄関前で不安げな表情でひそひそ話してる2人。

「ミラ、教師や世話係が必要なら早めに言いなさいね。より良い人材を集めた方が安心でしょ?」

 ザッと見た感じで理解してくれたのか、お母様が先を見越した提案をしてくれる。

「─!さすがお母様!!是非お願いしたいです!」
「ふふふ~、任せなさい。心当たりは沢山ありますからね~」

 ふんわりと微笑むお母様に私は嬉しくて抱きついた!私と母の身長もほぼ同じくらいになった。

 男達は頭にハテナマークを沢山浮かべて、私とお母様を交互に見比べてた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

鬼畜なエロゲ世界にモブ転生!?このままだと鬱ENDらしいので、ヒロイン全員寝取ってハピエン目指します!

ぽんぽこ@書籍発売中!!
ファンタジー
「助けて、このままじゃヒロインに殺される……!!」 気が付いたら俺はエロゲーム世界のモブキャラになっていた。 しかしこのエロゲー、ただヒロインを攻略してエッチなことを楽しむヌルいゲームではない。 主人公の死=世界の崩壊を迎える『ハイスクール・クライシス』というクソゲーだったのだ。 ついでに俺がなっちまったのは、どのルートを選んでも暗殺者であるヒロインたちに殺されるモブキャラクター。このままではゲームオーバーを迎えるのは確定事項。 「俺は諦めねぇぞ……トワりんとのハッピーエンドを見付けるまでは……!!」 モブヒロインの家庭科教師に恋した俺は、彼女との幸せな結末を迎えるルートを探すため、エロゲー特有のアイテムを片手に理不尽な『ハイクラ』世界の攻略をすることにした。 だが、最初のイベントで本来のエロゲー主人公がとんでもないことに……!? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

W-score

フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。 優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…

【完結】聖女として召喚されましたが、無力なようなのでそろそろお暇したいと思います

藍生蕗
恋愛
聖女として異世界へ召喚された柚子。 けれどその役割を果たせないままに、三年の月日が経った。そして痺れを切らした神殿は、もう一人、新たな聖女を召喚したのだった。 柚子とは違う異世界から来たセレナは聖女としての価値を示し、また美しく皆から慕われる存在となっていく。 ここから出たい。 召喚された神殿で過ごすうちに柚子はそう思うようになった。 全てを諦めたままこのまま過ごすのは辛い。 一時、希望を見出した暮らしから離れるのは寂しかったが、それ以上に存在を忘れられる度、疎まれる度、身を削られるような気になって辛かった。 そこにあった密かに抱えていた恋心。 手放せるうちに去るべきだ。 そう考える柚子に差し伸べてくれた者たちの手を掴み、柚子は神殿から一歩踏み出すのだけど…… 中編くらいの長さです。 ※ 暴力的な表現がありますので、苦手な方はご注意下さい。 他のサイトでも公開しています

処理中です...