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スタンピード編 14

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「ぬぅぅっ!どうにかならんのかっ!彼奴らを倒すしかない方法はないのか!?」

 火を消そうとマントを脱いで必死に足掻いている殿下。意味はないとわかってても何かせずにはいられないんだろうね。
 マントを隅に投げると帯剣していた鞘から剣を抜いて、勢いのまま真っ直ぐゴブリンキングに向かって疾走してる。

『メテオ!』
 
 殿下が唱えたのは、皇族のみが使える火属性の上級特殊魔法メテオ。
 ゲームでも出てたけど、実際はもっと凄い迫力。

 すごい!隕石みたいな火の塊が空から何個も落ちてくる!

 キングとロードに無数の炎の隕石がぶつかってる。
 ベガはすぐ気づいたのか双剣を握ったままその場から離れてる。

 このまま高度な戦闘を見ていたいけど、あっちも見捨てることは出来ないよね。

 死闘が繰り広げられている場所を尻目に、木の上から飛び降りて離れた場所にいる騎士達の元へと向かった。
 一人はもう壁際で事切れてて…、黒い炎に包まれた二人はもう喋ることすらできない状態の騎士達。

 近づいて近くで見ると皮膚が焼け爛れて、もう今にも命が潰えてしまいそうだった。

 ……っ……急がなきゃ!

 私は二人に向かい手を翳してさっきの感覚を思い出した。
 魔力を身体の中で練りながら一気に放出する。

 私が魔法を唱えると、歪んだ空気の層が二人を覆う。
 黒く揺らめいていた炎が跡形もなく消えた。

 よしっ!

 そして最後に残ってるハイポーションを二人に振りかけた。
 ポーションはさっきの冒険者達に使っちゃったから、これが持ってる最後の回復薬。
 自分用に取って置きたかったけど、目の前で人が亡くなるのはもう見たくない…。

 ピンク色の液体を二人に降りかかけて、焼け爛れた皮膚の半分以上が再生して呼吸もスムーズに出来るようになっていた。
 二人が持っていた魔法を半減させるアイテムが近くで壊れてたから、この腕輪のおかげで何とか生き延びてたんだろうね。

「う……、うう……、誰だ……」
「はぁ…ハァ……ぃ…き…、…てる……」

 固いレンガの場所じゃなくて、なるべく柔らかい土の部分へと二人を寝かせた。
 意識が朦朧としてるのか目が虚ろで見えていない様子。命の危険は免れたけど、まだ予断を許さない状況に変わりないね。

「誰か…知らんが………うぅっ、た、すか……」
「で…んか……は…、ぐぁ……ご…ぶじ……か…」

 こんな時まで主君を心配する姿には心底尊敬に値するよ。
 冒険者の中にはスタンピードに恐れをなして、混乱に乗じて逃げ出す奴もいるくらいなのに。 

 今文字を書いても読めないよね。
 とりあえずコクリと頷いた。
 言うまでもなくあっちはまだまだ戦闘中。
 でもこの人たちにできる事は何もないから。
 
「ギャギャッ」
「ギギギーー!」
 
 まだ城の中にいたのか、ゴブリンとオークが飛びかかって襲ってきた。
 立ち上がりながら剣を取って、前足を踏み込んで蹴り出すと残党を一瞬で真っ二つに切り落とした。
 ボタボタボタッと円を描くように魔物の胴体が落ちていく。
 騎士達を見ると気を失ったように寝てた。
 顔色は悪いけど命の危機は免れたのかな?

 もう周辺には魔物の気配はなさそう。
 一旦そこから離れって。
 再び地面を蹴り、反対側の空に向かい跳躍した。
 

 双剣を両手で操ってゴブリンキングと互角に戦ってたベガに、背後からオークロードが両腕で力を込め大剣を振りかざしてる。
 片方の剣で咄嗟に受け止めるけど力が足らず邸宅の白い壁に激しく打ちつけられた。

「がはぁっ!!」

 メリメリと打ちつけられた壁は周りにヒビが入ってベガは衝撃で血を吐き出した。
 そのまま力なく地面に落ちて、うつ伏せたままガクリと意識を失ってる。

「くっ……ベガよ……」

 ポルックス公爵は苦渋の表情を見せてる。

 ついにポルックス公爵が最後の一人になってしまった。
 まだまだ余力を残してる魔物達と人類側の兵力差が歴然となった。

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