41 / 392
スタンピード編 11
しおりを挟む
(※途中、少し視点が変わります)
チリチリと炎の龍に囲まれて締め上げられてく。
魔力を循環させてるのに、何の変化も起こらない。
さっき起きた事はただの奇跡だったの?
迫りくる灼熱の熱さに焦りを感じる。
や…、イヤだ……こんな所で死にたくない!
*
「シリウスー!!逃げろぉ!」
「こんな凄まじい火力じゃ無理よ!逃れられないわ!」
「ちくしょう…近づけない…」
公爵邸の入口付近で仁王立ちしているゴブリンジェネラルが勝利を確信したように咆哮を上げる。
見ていた冒険者達はあまりの火力に近づくことすらできない。魔法使いも水魔法を繰り出すのに何の効果も得られなかった。成す術もなく、悔しそうに燃えさかる炎を見ているしかできなかった。
ゴオォォォウゥゥゥ!!
<シネ…ニンゲン……>
再び斧を構えたジェネラルに冒険者達は突然向けられた刃物のような鋭利な殺気に、この世の終わりを感じさせる凄まじい戦慄を味わう。
「アイツ…今なにか言ったぞ…」
「魔物の言葉なんてわかるわけないでしょ!」
「わからんが、今度はこっちの番てかぁ!?」
ジェネラルは斧を頭の上まで振り上げ、3人に向かい真っ直ぐ突進していく。
空を切るほどの素早い動きに、大股で地面を削りながらドスンドスン!と迫りくる。
「盾をっ!!」
「ダメっ、間に合わな─!!」
「クソがぁぁー!!」
盾を構えたが間に合わない。巨体がひときわ大きく地面を蹴ると、空高くジャンプしその勢いのまま斧を振り下ろす。
「うわあぁぁぁ!!」
「きゃあああ!!」
「ぐぅぅ!」
だだっ広い庭園一面に、3人の絶叫が重なり合って響き渡る。
目をキツくつむり、次の衝撃を待つがなかなか訪れない。
ただ何が重いものが落ちた時の とした音が聞こえた。
「あ…ああ…、あ」
恐る恐る目を開けると戦士の一人が震えた声を出している。他の2人も目を開くと信じられない光景が広がっていた。
地に膝を付き、首を切り落とされたゴブリンジェネラル。
そのすぐ側にシリウスが剣をたずさえ立っていた。
首から青い血が吹き出している様をジッと見ている。
「ヒッ!」
「シリ…ウス……」
花が乱雑に荒らされた庭園に座り込みながら茫然と3人は今見ている光景を理解しようと努めた。
*
危なかった…今回はさすがに命の危険を感じたよ。
剣を地面に突き立ててそれを支えにして呼吸を整えた。
魔物の血に染まった自分の黒い手袋を見つめて、確かめるように何度か力を入れて握るを繰り返した。
まだ、震えが止まらないよ…。
自分の魔法が発動しなければ焼け死んでた。
そしてこの危機的状況じゃなかったら、きっと発現しなかったんだろうな。
今ならハッキリわかる。
私の持つ魔法は、魔法を打ち消す魔法。
魔法の無力化だ。
チリチリと炎の龍に囲まれて締め上げられてく。
魔力を循環させてるのに、何の変化も起こらない。
さっき起きた事はただの奇跡だったの?
迫りくる灼熱の熱さに焦りを感じる。
や…、イヤだ……こんな所で死にたくない!
*
「シリウスー!!逃げろぉ!」
「こんな凄まじい火力じゃ無理よ!逃れられないわ!」
「ちくしょう…近づけない…」
公爵邸の入口付近で仁王立ちしているゴブリンジェネラルが勝利を確信したように咆哮を上げる。
見ていた冒険者達はあまりの火力に近づくことすらできない。魔法使いも水魔法を繰り出すのに何の効果も得られなかった。成す術もなく、悔しそうに燃えさかる炎を見ているしかできなかった。
ゴオォォォウゥゥゥ!!
<シネ…ニンゲン……>
再び斧を構えたジェネラルに冒険者達は突然向けられた刃物のような鋭利な殺気に、この世の終わりを感じさせる凄まじい戦慄を味わう。
「アイツ…今なにか言ったぞ…」
「魔物の言葉なんてわかるわけないでしょ!」
「わからんが、今度はこっちの番てかぁ!?」
ジェネラルは斧を頭の上まで振り上げ、3人に向かい真っ直ぐ突進していく。
空を切るほどの素早い動きに、大股で地面を削りながらドスンドスン!と迫りくる。
「盾をっ!!」
「ダメっ、間に合わな─!!」
「クソがぁぁー!!」
盾を構えたが間に合わない。巨体がひときわ大きく地面を蹴ると、空高くジャンプしその勢いのまま斧を振り下ろす。
「うわあぁぁぁ!!」
「きゃあああ!!」
「ぐぅぅ!」
だだっ広い庭園一面に、3人の絶叫が重なり合って響き渡る。
目をキツくつむり、次の衝撃を待つがなかなか訪れない。
ただ何が重いものが落ちた時の とした音が聞こえた。
「あ…ああ…、あ」
恐る恐る目を開けると戦士の一人が震えた声を出している。他の2人も目を開くと信じられない光景が広がっていた。
地に膝を付き、首を切り落とされたゴブリンジェネラル。
そのすぐ側にシリウスが剣をたずさえ立っていた。
首から青い血が吹き出している様をジッと見ている。
「ヒッ!」
「シリ…ウス……」
花が乱雑に荒らされた庭園に座り込みながら茫然と3人は今見ている光景を理解しようと努めた。
*
危なかった…今回はさすがに命の危険を感じたよ。
剣を地面に突き立ててそれを支えにして呼吸を整えた。
魔物の血に染まった自分の黒い手袋を見つめて、確かめるように何度か力を入れて握るを繰り返した。
まだ、震えが止まらないよ…。
自分の魔法が発動しなければ焼け死んでた。
そしてこの危機的状況じゃなかったら、きっと発現しなかったんだろうな。
今ならハッキリわかる。
私の持つ魔法は、魔法を打ち消す魔法。
魔法の無力化だ。
13
お気に入りに追加
322
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
【完結】あなたに恋愛指南します
夏目若葉
恋愛
大手商社の受付で働く舞花(まいか)は、訪問客として週に一度必ず現れる和久井(わくい)という男性に恋心を寄せるようになった。
お近づきになりたいが、どうすればいいかわからない。
少しずつ距離が縮まっていくふたり。しかし和久井には忘れられない女性がいるような気配があって、それも気になり……
純真女子の片想いストーリー
一途で素直な女 × 本気の恋を知らない男
ムズキュンです♪
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
世界最強魔法師の娘〜この度、騎士団で下働きをすることになりました〜
鍋
恋愛
世界最強と謳われた魔法師アダム。
アダムは先の戦争で多大な功績を上げたが、叙爵は辞退し王宮魔法師として働いていた。
魔法以外には興味が無かった彼は、ある日エリアーナと出逢い、大恋愛の末結婚。
しかし、出産と同時に妻であるエリアーナは亡くなってしまう。
愛する妻の忘れ形見であるらララを大切に守り育ててきたアダム。
だが、アダムもララの成人を目前に急逝。
遺されたのは世界最強魔法師の娘。
だがララは下級魔法すら使えない。
しかも、田舎町から一歩も出ない生活をしていたせいで、アダムがそんなに凄い魔法師だと言うことさえ知らなかった。
ララはこれから一人で生きていくため、アダムの唯一の弟子クライヴに頼み込んで騎士団の下働きとして働くことになった。
クライヴはアダムにララの世話を頼まれていた騎士で、ララには実の兄のように慕われている存在。
けれどクライヴは、世間知らずな上に、美しく人の好いララが心配で……?
このお話はそんな二人のお話です。
※ゆるゆる設定のご都合主義のお話です。
※R指定は念の為。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでご注意ください。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
鬼畜なエロゲ世界にモブ転生!?このままだと鬱ENDらしいので、ヒロイン全員寝取ってハピエン目指します!
ぽんぽこ@書籍発売中!!
ファンタジー
「助けて、このままじゃヒロインに殺される……!!」
気が付いたら俺はエロゲーム世界のモブキャラになっていた。
しかしこのエロゲー、ただヒロインを攻略してエッチなことを楽しむヌルいゲームではない。
主人公の死=世界の崩壊を迎える『ハイスクール・クライシス』というクソゲーだったのだ。
ついでに俺がなっちまったのは、どのルートを選んでも暗殺者であるヒロインたちに殺されるモブキャラクター。このままではゲームオーバーを迎えるのは確定事項。
「俺は諦めねぇぞ……トワりんとのハッピーエンドを見付けるまでは……!!」
モブヒロインの家庭科教師に恋した俺は、彼女との幸せな結末を迎えるルートを探すため、エロゲー特有のアイテムを片手に理不尽な『ハイクラ』世界の攻略をすることにした。
だが、最初のイベントで本来のエロゲー主人公がとんでもないことに……!?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる