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スタンピード編 8
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そう思って裏方に徹して静かに退散しようとしてたのに、思わぬ所で変な依頼を受けてしまったな。ま、私が聞く義理もないんだけどさ。
城下に足を踏み入れると、一言でいうならひどい有り様だった…。
タウリが地獄絵図って言ってた意味がよくわかる。
店や家があった場所はめちゃくちゃに壊されて、城へと続く道は特に様々な物が薙ぎ倒されてて木っ端微塵になってる。
道を歩く度に瓦礫を踏んで、生活に使われてた皿や食器が辺り一面に散乱してた。
各所民家や商店に火の手があがって黒煙が舞い上がってる。
「ギャギャッ!」
歩いてると途中襲いかかってくるゴブリンやオークを一刀両断にしていく。
きちんとマニュアルが機能していれば、住民達の避難が終えると最終的に冒険者達は城下へと加勢しに行く手順になってる。
瓦礫や散乱する物を避けながら一番目立つ公爵邸へと一歩ずつ足を向けた。
遠目だけどお城みたいな建物からも煙があがってた。
城下町の周囲を見たところモンスターの残党はまだいるけど、この辺で生きてる人はもう居なさそう。
外壁には人間のものともモンスターのものともつかない血痕が飛び散ってて…、鼻につくような屍臭や悪臭も漂い始めてる。
公爵邸に続く道の間も、悲惨な光景が次々舞い込んでくる。
モンスターに噛まれたのか引き千切られたのか…酷い有り様の亡骸が何体も地面に倒れてて…。
踏まれて顔すらもわからない亡骸も…手を伸ばしながら内臓を食べられた後のような無惨なものもある。
我慢してた吐き気が堪えられずに、周りに人がいないのを確認して倒壊した建物の物陰で仮面を外して何度も何度も嘔吐した。
それから涙も鼻水も止まらなくて…、ぐちゃぐちゃな顔で思いっ切り泣いた。
「うっぐぅ…、うぁ……」
心も体も訳がわからなくて、血の気が引いて体の力が抜けてしまった。
その場にへたり込んでただひたすら感情のまま泣いたり喚いたり…行き場のない怒りと悲しみを意味もなくぶつけた。
しばらく放心状態でよく襲われなかったと思う。
お城の方から激しい戦闘音が聞こえ始めて、ようやく我に返った。
あぁ…行かなきゃ……。
何もかもが追いつかないのに使命感だけが残ってて…私を無意識に突き動かす。
胸元から薄汚れたハンカチを出して汚れた顔を拭いて、またシリウスの仮面を被った。
感情が全くない…全てを遮断したような無の状態は、前世の交通事故で両親を亡くした時に似てる。
心と身体が乖離してて…自分じゃない人間が自分を動かしているような奇妙な錯覚に陥った。
「ブオォーン!ブッ!──」
剣を片手に走ることもしないで、向かってくるハイオークを無言で斬り裂きながら歩いた。
途中にも逃げ遅れた人の無惨な亡骸が倒れてて、瓦礫に挟まれた人の手が見えたから引き上げたけど、腕から先がなくて…すでに事切れてた。
「───」
ググッと、拳を握り締めた。
行かなきゃ……。
なにかに導かれるように足を進める。
この先にあるものは光か、闇か。
何が待っていても、私には逃げることなんてできない。
そう思って裏方に徹して静かに退散しようとしてたのに、思わぬ所で変な依頼を受けてしまったな。ま、私が聞く義理もないんだけどさ。
城下に足を踏み入れると、一言でいうならひどい有り様だった…。
タウリが地獄絵図って言ってた意味がよくわかる。
店や家があった場所はめちゃくちゃに壊されて、城へと続く道は特に様々な物が薙ぎ倒されてて木っ端微塵になってる。
道を歩く度に瓦礫を踏んで、生活に使われてた皿や食器が辺り一面に散乱してた。
各所民家や商店に火の手があがって黒煙が舞い上がってる。
「ギャギャッ!」
歩いてると途中襲いかかってくるゴブリンやオークを一刀両断にしていく。
きちんとマニュアルが機能していれば、住民達の避難が終えると最終的に冒険者達は城下へと加勢しに行く手順になってる。
瓦礫や散乱する物を避けながら一番目立つ公爵邸へと一歩ずつ足を向けた。
遠目だけどお城みたいな建物からも煙があがってた。
城下町の周囲を見たところモンスターの残党はまだいるけど、この辺で生きてる人はもう居なさそう。
外壁には人間のものともモンスターのものともつかない血痕が飛び散ってて…、鼻につくような屍臭や悪臭も漂い始めてる。
公爵邸に続く道の間も、悲惨な光景が次々舞い込んでくる。
モンスターに噛まれたのか引き千切られたのか…酷い有り様の亡骸が何体も地面に倒れてて…。
踏まれて顔すらもわからない亡骸も…手を伸ばしながら内臓を食べられた後のような無惨なものもある。
我慢してた吐き気が堪えられずに、周りに人がいないのを確認して倒壊した建物の物陰で仮面を外して何度も何度も嘔吐した。
それから涙も鼻水も止まらなくて…、ぐちゃぐちゃな顔で思いっ切り泣いた。
「うっぐぅ…、うぁ……」
心も体も訳がわからなくて、血の気が引いて体の力が抜けてしまった。
その場にへたり込んでただひたすら感情のまま泣いたり喚いたり…行き場のない怒りと悲しみを意味もなくぶつけた。
しばらく放心状態でよく襲われなかったと思う。
お城の方から激しい戦闘音が聞こえ始めて、ようやく我に返った。
あぁ…行かなきゃ……。
何もかもが追いつかないのに使命感だけが残ってて…私を無意識に突き動かす。
胸元から薄汚れたハンカチを出して汚れた顔を拭いて、またシリウスの仮面を被った。
感情が全くない…全てを遮断したような無の状態は、前世の交通事故で両親を亡くした時に似てる。
心と身体が乖離してて…自分じゃない人間が自分を動かしているような奇妙な錯覚に陥った。
「ブオォーン!ブッ!──」
剣を片手に走ることもしないで、向かってくるハイオークを無言で斬り裂きながら歩いた。
途中にも逃げ遅れた人の無惨な亡骸が倒れてて、瓦礫に挟まれた人の手が見えたから引き上げたけど、腕から先がなくて…すでに事切れてた。
「───」
ググッと、拳を握り締めた。
行かなきゃ……。
なにかに導かれるように足を進める。
この先にあるものは光か、闇か。
何が待っていても、私には逃げることなんてできない。
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