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子供編 15

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 マイアとの話に花が咲いて、すっかり日も暮れて疲れちゃった。

 寝る準備も終わると、用意された部屋の窓際に立って月明かりをボケーっと眺めてた。

 そういえば、旧世界じゃ月(ルナ)は2つあったんだっけ…。
 
 マイアに会うと必ずこうやって干渉に浸っちゃうんだよなぁ。
 エルナト先生見ててもこういう感情にならないんだけど、マイアを見るとやっぱり自然とゲームのこと考えてしまう。
 






 ◆
 








 ミティストで私の最推しだったアルファルドは、幼い頃から不幸の連続だった。


 全ては6歳くらいの頃、敬愛していた両親の突然の不幸から始まる──。

 急用のため嵐の日に悪路を馬車で猛スピードで走った結果、崖が崩れ馬車ごと転落した。
 幸が不幸か同乗していたアルファルドは、両親が全力で護ってくれたから奇跡的に無事だった。

 でも一人残された幼い子供に近づく卑劣な親類たち。
 私利私欲の為、成すすべもなく財産と爵位を奪われ次第に落ちぶれる公爵家。
 資金が枯渇し支払う賃金も尽きたため使用人も次々と辞めて、帝国で最強と謳われて優秀な人材を誇ってた公爵家の騎士団も解散せざるを得なかった。

 最終的に残ったのは、先代から使えてた執事と乳母だけなんだよね。
 成長と共に爵位を取り戻してどうにか親類を追放して処罰を与えたけど…、湯水の如く使い込まれた財産は戻る事はなかった。
 アルファルドは没落していく生家を何とか立て直そうと奮闘するけど、恐ろしいくらい膨らんだ莫大な借金を返済する事は叶わなかった。
(この一連のエピソード…ゲームではコマ送りで表現されてたな…)

 でも落ちぶれても由緒正しい上級貴族の彼は、伯父である皇帝の計らいで特待生扱いでアカデミアに入学することに。(この伯父の現皇帝もアルファルドを放置して傍観してただけだったし)

 ただ魔法アカデミアでヒロインに出会って、初めて恋に落ちるんだ。
 でも…ここでも悲しい事に、ヒロインの想い人はこの国の皇太子殿下。
 自分とは違って、苦労も無く何でも手に入れてる皇太子にアルファルドは激しい嫉妬と憎悪を向ける。(ちなみにアルファルドは皇位継承権第3位)

 追い詰められたアルファルドは、禁術を使って悪魔に手を貸してしまう。

 それが最恐最悪のラスボス、魔界王デネボラ。

 アルファルドは高貴な血を対価に魔力と生命力を奪われて…世の中全てを呪って狂ったように笑いながら死んでいった。
 哀れで悲惨な脇役の末路だった…。

 誰かに少しでも救われる事も、手を差し伸べられる事も全くなくて…不幸のどん底に落ち自滅していく彼に私は憤りを隠せなかった。

 通常皇子ルートしかないけど、クリアしたあとのウラ面だと選択肢も増えて結ばれる相手を選ぶこともできた。

 だからどうにかアルファルドルートがないのか、何度も何度もやり直してプレイしたけど、決まっているルートでの結果はいつも同じ。 
 


 ゲームの中でアルファルドが幸せになることはなかった。










 ◆
 










 窓の外見てたけど、いい加減寒くなって布団に潜り込んだ。
(あの時は特に情緒不安定だったなぁ…)
 興奮したせいなのかまだ眠くならなくて、口元まで布団をかけて天井を見つめた。


 記憶を取り戻した時の私はまだ冷静じゃなくて、年齢的にアルファルドの両親を助けれるかも!
 って思ったけどすでに遅かった…。

 その事実を知ってから暴れて泣き喚いて…何でもっと早く思い出さなかったのか悔しくて、すごく自分を恨んだ。

 後で思えば結果的に間に合ったとしても、子供の私が出来ることなんてなかったんだよね。
 あの時は混乱してて正常な判断が全くできてなかったから。
 だから感情の赴くまま泣きながらアルファルドに手紙を書いた。

 もちろん返事は返って来ない。
 宛名も送り先も書いてないから。
 なんて書いたかもあまり覚えてないけど、馬鹿みたいに慰めるようなことしか書かなかったと思う。
 きっと読まないで捨てられたんだろうな…。
 冷静になってから何でこんな事したんだろう…ってすごく後悔した。
 
 でもそれで自分の中のモヤモヤが少しは解消したのか、その後はいつも通り過ごせるようになった。
 普通の子供とはしては程遠かったけどね。
 




 もう眠くなってきた…。
 布団の中でウトウトして目がしぱしぱしてきて、睡魔に襲われるまま眠りについた。



 
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