35 / 35
35
しおりを挟む
'
一度目の最悪な出会いからすぐに逃げ出して以来、これで二度目の対面だが、更に醜悪さが進んだように見受けられた。
ティアーナは二度と会いたくないと思っていた人物を前に、身体が竦んでしまっている。
「可愛い人よ。わしから逃げて関心を引きたいのはわかるが、些か我儘が過ぎたようだな」
公爵は騎士たちに囲まれ、アイシャの影に隠れているティアーナを見ると、嬉しそうに舌舐めずりをし気味の悪い笑顔をティアーナに向けている。
その仕草にティアーナはゾワリと鳥肌が立つ。悪寒が走り心と身体全てがその存在を拒絶していた。
「ヒヒ…これは丁重にお持て成しせんといかんですな、ティアーナ王女。我々は婚姻を結んだも同然なんだから」
舐めるようにティアーナを見ると周りの騎士に連れて行け、と命令している。
「近寄るなっ!戯者めっ!一国の王女様に何たる無礼をっ!」
アイシャが剣を振り囲んでいる騎士たちに牽制するが、数の力には勝てない。
取り押さえられ成すすべもなく騎士たちに取り押さえられる。
「嫌っ!離してっ!!」
「クソっ!ティアーナ様ぁ!!離せっ!!」
周りは物見遊山の輩で溢れていたが二人を助ける者は誰も居なかった。
無理やり立たせると縄を手に掛け、公爵家の所有する馬車まで連れて行かれる。
馬車に乗せられたら最後だと確信したアイシャは、最後の抵抗で捨て身で連行している騎士に体当たりをする。
「グッ!コイツ、生意気なっ!」
周りの騎士も加わり、アイシャに殴る蹴るの暴行していく。
「止めてっ!!アイシャが死んでしまうわっ!着いて行くから…もう止めてぇ!!」
ティアーナの言葉に公爵が仕方なさそうに止めに入る。
「フンッ、お前達止めろ。未来の公爵夫人が言っておるのだ。その小汚い小娘に縄をかけろ」
ボロボロになったアイシャ。縄をかけられそうになるのを必死で抵抗している。
「……くっ、ティ…ァーナ…様!」
「アイシャ!アイシャ!!しっかりして!!」
「これ!大人しく着いて来るんだっ。またその小娘を痛めつけるぞ!」
無慈悲とも言わんばかりの公爵の発言にティアーナは従うしかなかった。
「ふ……このっ」
縄をかけられそうになったアイシャは最後の力を振り絞り、手を振り切り人混みへと走り出した。
「逃げたぞっ!探せっ!!」
「どこに行きやがった!」
騎士達が辺りを探しているが、公爵は興味もなさそうに言い放つ。
「もう良い。どうせ小者だ、ティアーナ姫さえ手に入ればどうでも良いわ」
アイシャっ!どうか無事で逃げて…。
ティアーナはアイシャの消えた、野次馬の人集りを見て心配そうに祈る。
「さ、ティアーナ姫。わしの屋敷へ招待しますぞ。時間はたっぷりありますからな…」
ティアーナの見ながら気味の悪い笑顔を浮かべる公爵に、ティアーナは酷い悪寒が止まらない。
それでも今は大人しく馬車に乗るしかなかった。
一度目の最悪な出会いからすぐに逃げ出して以来、これで二度目の対面だが、更に醜悪さが進んだように見受けられた。
ティアーナは二度と会いたくないと思っていた人物を前に、身体が竦んでしまっている。
「可愛い人よ。わしから逃げて関心を引きたいのはわかるが、些か我儘が過ぎたようだな」
公爵は騎士たちに囲まれ、アイシャの影に隠れているティアーナを見ると、嬉しそうに舌舐めずりをし気味の悪い笑顔をティアーナに向けている。
その仕草にティアーナはゾワリと鳥肌が立つ。悪寒が走り心と身体全てがその存在を拒絶していた。
「ヒヒ…これは丁重にお持て成しせんといかんですな、ティアーナ王女。我々は婚姻を結んだも同然なんだから」
舐めるようにティアーナを見ると周りの騎士に連れて行け、と命令している。
「近寄るなっ!戯者めっ!一国の王女様に何たる無礼をっ!」
アイシャが剣を振り囲んでいる騎士たちに牽制するが、数の力には勝てない。
取り押さえられ成すすべもなく騎士たちに取り押さえられる。
「嫌っ!離してっ!!」
「クソっ!ティアーナ様ぁ!!離せっ!!」
周りは物見遊山の輩で溢れていたが二人を助ける者は誰も居なかった。
無理やり立たせると縄を手に掛け、公爵家の所有する馬車まで連れて行かれる。
馬車に乗せられたら最後だと確信したアイシャは、最後の抵抗で捨て身で連行している騎士に体当たりをする。
「グッ!コイツ、生意気なっ!」
周りの騎士も加わり、アイシャに殴る蹴るの暴行していく。
「止めてっ!!アイシャが死んでしまうわっ!着いて行くから…もう止めてぇ!!」
ティアーナの言葉に公爵が仕方なさそうに止めに入る。
「フンッ、お前達止めろ。未来の公爵夫人が言っておるのだ。その小汚い小娘に縄をかけろ」
ボロボロになったアイシャ。縄をかけられそうになるのを必死で抵抗している。
「……くっ、ティ…ァーナ…様!」
「アイシャ!アイシャ!!しっかりして!!」
「これ!大人しく着いて来るんだっ。またその小娘を痛めつけるぞ!」
無慈悲とも言わんばかりの公爵の発言にティアーナは従うしかなかった。
「ふ……このっ」
縄をかけられそうになったアイシャは最後の力を振り絞り、手を振り切り人混みへと走り出した。
「逃げたぞっ!探せっ!!」
「どこに行きやがった!」
騎士達が辺りを探しているが、公爵は興味もなさそうに言い放つ。
「もう良い。どうせ小者だ、ティアーナ姫さえ手に入ればどうでも良いわ」
アイシャっ!どうか無事で逃げて…。
ティアーナはアイシャの消えた、野次馬の人集りを見て心配そうに祈る。
「さ、ティアーナ姫。わしの屋敷へ招待しますぞ。時間はたっぷりありますからな…」
ティアーナの見ながら気味の悪い笑顔を浮かべる公爵に、ティアーナは酷い悪寒が止まらない。
それでも今は大人しく馬車に乗るしかなかった。
2
お気に入りに追加
335
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福
ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話。加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は、是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン🩷
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
◇稚拙な私の作品📝にお付き合い頂き、本当にありがとうございます🧡
乙女逃亡戦記ー復讐はみんなで!ー
江田真芽
恋愛
番詐欺ーツガイサギー
私たちは皆、獣人の国ラスカに嫁いで泣きを見た者たち。
ラスカの獣人から『貴女は私の番』だと手紙が届けば、人間は嫁ぐしかない。獣人が言う番とは、運命の赤い糸以上の効力があるのだと聞く。
世界地図に載った国々の中でも、ラスカはとても神聖な国として有名だった。普通の人間が足を踏み入れることを許さない程に‥
その為、番を告げる手紙が届いたら家族と一生離れる覚悟で自分の国を出る。もう故郷には帰れないのだと涙を流しながらーーーー。
この物語は、そんな強い覚悟を決めてラスカに嫁いできた人間が‥結婚詐欺ならぬ番詐欺を受け、命からがら逃亡した末に馬鹿な男(獣人)たちへの復讐を誓う物語である‥。
「え、つーかこの草やばくね?歯あるし。食われそう」
「セルマ、その草にツンツンしちゃだめだよ!」
「あ、見て見てネル。草に指食われた」
「だから言ったでしょ!!」
「‥‥じゃあ焼こう、この草‥」
「ジェナ!だめだめ!燃やしたら見つかるって!あああ、ダメだってば!」
「‥‥あ、やば‥‥獣人こっちきた」
「あああ!もう!!この人たちやだ!!」
番詐欺の被害者集団による復讐劇が幕を開ける!!
(と見せかけたほのぼの珍道中!)
注意:獣人や番に関しての設定はオリジナルなところが多いと思います。獣人や番に関して拘りを持たれている方は要注意です!
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
悪役令嬢なのに王子の慰み者になってしまい、断罪が行われません
青の雀
恋愛
公爵令嬢エリーゼは、王立学園の3年生、あるとき不注意からか階段から転落してしまい、前世やりこんでいた乙女ゲームの中に転生してしまったことに気づく
でも、実際はヒロインから突き落とされてしまったのだ。その現場をたまたま見ていた婚約者の王子から溺愛されるようになり、ついにはカラダの関係にまで発展してしまう
この乙女ゲームは、悪役令嬢はバッドエンドの道しかなく、最後は必ずギロチンで絶命するのだが、王子様の慰み者になってから、どんどんストーリーが変わっていくのは、いいことなはずなのに、エリーゼは、いつか処刑される運命だと諦めて……、その表情が王子の心を煽り、王子はますますエリーゼに執着して、溺愛していく
そしてなぜかヒロインも姿を消していく
ほとんどエッチシーンばかりになるかも?
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる