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変化した関係性
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アリシアの頬のガーゼが完全に取れるまで、二週間という長い期間がかかった。
幸いにも傷は残らず、青痣になっていたものも綺麗に消えていた。
「ようやく、傷が癒えたのですね……」
書斎でお茶を淹れているアリシア向かい、ジェイデンは笑みを浮かべて話しかけた。
「はい。おかげさまで完治いたしました」
「そうですか。……良かった、です」
笑みを浮かべていたジェイデンだが、顔色は優れなかった。笑っているのに、どこか苦しそうに息を乱している。
そういえば、最近……お務めをしていないわ……。
そこでアリシアはハッとする。
自分のことで精一杯で、決まった日に呼ばれていたお務めがなかったことに今さら気づく。
慌てて書斎の机で事務仕事をしているジェイデンを見るが、やはりどう見ても顔色が悪い。
「もう、結構ですので……下がっていて大丈夫です」
「あ……は、い」
そう言うと、ジェイデンはまた書類に向かってペンを動かしている。
アリシアはそれ以上何も言えず、一礼してその場を去った。
隣接している部屋に戻り、部屋にあるソファーに座ってそういえば、と一人考えた。
最後、大公様と肌を合わせたのはいつだったかしら……? あの出来事よりも前だから、もう……かなり日数が経つわ。
それまで当たり前のように毎週呼んでいたジェイデンは、何もなかったようにアリシアに声をかけなくなった。
なぜ……? どうして? ……私が怪我をしていたから? でも、今まで関係なく私を呼んでいたのに……もう、必要なくなったの? でもそのわりと、とても具合が悪そうだったけど……。
ソファーに座ったまま、アリシアの思考がぐるぐると回る。
近頃のジェイデンはアリシアの意思を無視することなく、まるで別人になったように気遣ってくれていた。
ジムの暴力から救ってくれただけではなく、熱を出して苦しんでいたアリシアの側に寄り添い、ずっと看病してくれた。
座っていたアリシアは、そのまま体を倒して肌触りの良いソファーに横たわる。
なんで、こんな気持ちになるの……? お務めなんてしたくなかったから、呼ばれなくなって嬉しいはずなのに……。
どこか気持ちが晴れない。
仰向けになったまま部屋の天井を何気なく見て、視界を遮るように片腕で自分の目元を覆う。
先ほど見たジェイデンの様子が気になって仕方がない。
自分から抱かれることを望んでいる訳でもないのに、なぜか不安になっている自分もいる。
もやもやした気持ちを拭えないまま、アリシアは考えを断つように瞳を閉じた。
また次の日。
「はい?」
「ですから、しばらく……こちらには来なくて結構です」
お茶を淹れていたアリシアの手が止まる。
机に向かい、書類に筆を走らせていたジェイデンは顔も上げずに話している。
「え……ですが……」
「大公家に戻るまで、ローガン上皇陛下の元にいてもらっても構いません」
「――!」
やはりジェイデンは顔を上げず、アリシアを見ようとしない。
アリシアは立ったまま、呆然とする。
「あ、あの……では、お……お務め、は……」
ずっと疑問に思っていたことを、勇気をふりしぼって言葉に出して聞いてみた。
呟くほどの声だったが、近くにいたジェイデンには聞こえたはずだ。
案の定、ジェイデンの書いていた手がピタッと止まる。
「……そちらも、必要ありません。……適当に、済ませます」
「――ッ!!」
言われた言葉に、アリシアは目を大きく開いた。
おそらくジェイデンが言いたいのは、アリシアを抱くことはせず……適当にというのは、また娼婦を呼ぶということなのだろう。
アリシアは、こうしたやり取りだけは嫌というほど早く理解してしまう。
自分がもう必要ないという事実と、ジェイデンがアリシアではなく他の女を抱くということに二重のショックを受けていた。
それを自ら望んでいたはずなのに、なぜだかわからないが動揺を隠せない。
自分が立っていた足元が崩れていきそうな感覚だった。
幸いにも傷は残らず、青痣になっていたものも綺麗に消えていた。
「ようやく、傷が癒えたのですね……」
書斎でお茶を淹れているアリシア向かい、ジェイデンは笑みを浮かべて話しかけた。
「はい。おかげさまで完治いたしました」
「そうですか。……良かった、です」
笑みを浮かべていたジェイデンだが、顔色は優れなかった。笑っているのに、どこか苦しそうに息を乱している。
そういえば、最近……お務めをしていないわ……。
そこでアリシアはハッとする。
自分のことで精一杯で、決まった日に呼ばれていたお務めがなかったことに今さら気づく。
慌てて書斎の机で事務仕事をしているジェイデンを見るが、やはりどう見ても顔色が悪い。
「もう、結構ですので……下がっていて大丈夫です」
「あ……は、い」
そう言うと、ジェイデンはまた書類に向かってペンを動かしている。
アリシアはそれ以上何も言えず、一礼してその場を去った。
隣接している部屋に戻り、部屋にあるソファーに座ってそういえば、と一人考えた。
最後、大公様と肌を合わせたのはいつだったかしら……? あの出来事よりも前だから、もう……かなり日数が経つわ。
それまで当たり前のように毎週呼んでいたジェイデンは、何もなかったようにアリシアに声をかけなくなった。
なぜ……? どうして? ……私が怪我をしていたから? でも、今まで関係なく私を呼んでいたのに……もう、必要なくなったの? でもそのわりと、とても具合が悪そうだったけど……。
ソファーに座ったまま、アリシアの思考がぐるぐると回る。
近頃のジェイデンはアリシアの意思を無視することなく、まるで別人になったように気遣ってくれていた。
ジムの暴力から救ってくれただけではなく、熱を出して苦しんでいたアリシアの側に寄り添い、ずっと看病してくれた。
座っていたアリシアは、そのまま体を倒して肌触りの良いソファーに横たわる。
なんで、こんな気持ちになるの……? お務めなんてしたくなかったから、呼ばれなくなって嬉しいはずなのに……。
どこか気持ちが晴れない。
仰向けになったまま部屋の天井を何気なく見て、視界を遮るように片腕で自分の目元を覆う。
先ほど見たジェイデンの様子が気になって仕方がない。
自分から抱かれることを望んでいる訳でもないのに、なぜか不安になっている自分もいる。
もやもやした気持ちを拭えないまま、アリシアは考えを断つように瞳を閉じた。
また次の日。
「はい?」
「ですから、しばらく……こちらには来なくて結構です」
お茶を淹れていたアリシアの手が止まる。
机に向かい、書類に筆を走らせていたジェイデンは顔も上げずに話している。
「え……ですが……」
「大公家に戻るまで、ローガン上皇陛下の元にいてもらっても構いません」
「――!」
やはりジェイデンは顔を上げず、アリシアを見ようとしない。
アリシアは立ったまま、呆然とする。
「あ、あの……では、お……お務め、は……」
ずっと疑問に思っていたことを、勇気をふりしぼって言葉に出して聞いてみた。
呟くほどの声だったが、近くにいたジェイデンには聞こえたはずだ。
案の定、ジェイデンの書いていた手がピタッと止まる。
「……そちらも、必要ありません。……適当に、済ませます」
「――ッ!!」
言われた言葉に、アリシアは目を大きく開いた。
おそらくジェイデンが言いたいのは、アリシアを抱くことはせず……適当にというのは、また娼婦を呼ぶということなのだろう。
アリシアは、こうしたやり取りだけは嫌というほど早く理解してしまう。
自分がもう必要ないという事実と、ジェイデンがアリシアではなく他の女を抱くということに二重のショックを受けていた。
それを自ら望んでいたはずなのに、なぜだかわからないが動揺を隠せない。
自分が立っていた足元が崩れていきそうな感覚だった。
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