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新たな日々

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 アリシアが襲われてから七日経った。
 まだ顔のガーゼは取れなかったが、アリシアは気にせずローの待つ庭園まで足を運んでいた。

「ローさん、お加減はどうですか?」
「アリーのおかげですこぶる調子がいいよ。君こそ、体はもう大丈夫なのかい?」
「はい。お陰様ですっかり良くなりました!」
「……そうかい。良かったよ」

 庭園のテーブルセットにお茶を用意し、アリシアとローは腰掛けてまったりと談笑している。
 アリシアの周りには鳥たちが集まっていた。

「そういえば……気のせいかもしれませんが……最近、周りの様子がおかしいんですよね……」
「おかしい?」
「はい。なんというか……私に対して、とても……気を使っている感じがするんです……」

 今までアリシアが王宮を歩き回っていても、誰も気に留めなかった。
 だが、近頃はローの庭園に行く途中でも、すれ違う使用人達がよそよそしくなり、なんなら一礼して通り過ぎていく。
 まるで高位貴族にでもあった様子で、アリシアはその様子を見るたびに疑問に思っていた。

「はははっ、アリーが気にすることはないよ。君はわたしの命の恩人であり、大公家の侍女でもある。……それがただ周囲に認知されてきただけさ」

 なんでもないことのようにローは話し、テーブルに置かれていたお茶をゴクリと一口飲み込む。

「そう……なのですかね? 私は特別、何かしたわけではないのですが……ローさんや大公様がスゴい方なので、みんな萎縮しているだけなんですかね……」

 最後は独り言のように、アリシアは自分を納得させるように言い聞かせた。
 ローは一瞬間を置き、気を取り直したようにアリシアに笑いかける。

「それよりアリーは、どんな動物まで従わせることができるのかな?」
「従わせる?」
「ん? 違うのかな? わたしには君が動物たちを従わせているように見えるんだがね」

 対面に座っていたアリシアに、ローは疑問を投げかける。
 アリシアは俯いてから少し考えて、また顔を上げてローを見た。

「え……っと、従わせるというか、私がお願いして動いてもらってるほうが正しいです。おそらく、動物でしたらどんな種類でも大丈夫だと思いますよ?」

 この不思議な体質が戻ったのはつい最近だった。ただ、昔は種類を問わずアリシアの元に動物が集まってくれていた。

「どんな動物でも、か……」

 アリシアの返答に、ローは難しい顔をしてお茶のカップをテーブルに置いた。

「何か問題がありますか?」
「いや……あるというか……、うん、そうだね。問題大ありだね」
「え? やっぱり私、おかしいんですか!?」
「はは、おかしい訳じゃないんだ。ただ、アリーは普通じゃないだけさ」
「……それって結局、おかしいってことじゃないんですか??」
「うーん、意味合いがまた全然違うのさ」

 パチッと茶目っ気たっぷりにウインクしてるローを見ている感じでは、これといって深刻な感じはしない。

「あの……??」
「君が困るようなことにはならないから、安心していい」 
「はあ……?」

 ローは薄く笑いながら、口元に寄せたお茶を優雅に飲んでいた。
 
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